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 外は陽気で気持ちの良い青空なのに室内はどんよりとピリピリしています。
 少し前まで優雅にお茶を楽しんでいたのになんということでしょう?

 我がフランシス侯爵家の父母と婚約者アルネス侯爵家のご両親と長兄を当家に集合させたのは、マーク=アルネス令息。その腕の中にてピルピルと震えて上目遣いに目を潤ませているのはアンバー=エルガー男爵令嬢でしたかしら?

 プルプルではなく小刻みにピルピルといった感じが可愛くあざとさを感じますがここに集った者にはあまり効果を発揮してなさそうです。
「おじさま!僕はアンバーを妻に迎えたいのでクリスタニアとは結婚できません!!どうか彼女をこの家に迎え入れることをお許しください」 

 はて?結婚云々はこの際どうでもいいのですがなぜ我が家にエルガー男爵令嬢を?
 私の疑問を投げかける前にアルネス侯爵が頭を抱えて聞く。
「お前はクリスタニア嬢とは結婚しないならこの家に入る必要はないだろう。何を言っているんだ?」
 マークはよく理解できてないようで
「父上こそ何を言ってるのさ。僕は養子に入るんだから彼女もこの家の人間になるんでしょ」
 養子と婿養子はだいぶ違いますわねー。

 巷の流行りの学園や夜会で婚約破棄騒動起こされなくて良かったけれど、ちょっとおバカで助かりましたか。
「クリスタニアと結婚しないのに何故お前を養子にすることになるんだ!しかも浮気相手を連れてきて」
「なっ浮気じゃなくて本気です!おじさまは僕を可愛がってくれたじゃないですか?」
 普段なら落ち着いた美声でお話しする父の怒声に引き気味のマーク。

「お父様、婚約破棄は承知して慰謝料や持ち出しの金額はマーク令息の責任として払って頂き、領地への援助金はお約束通りでよろしいのでなくて」
 このお馬鹿さんのせいでアルネス領の民が困るのは見たくないですから。

「僕はここの後継になるんでしょう?勉強もしていたし」
 雲行きがあやしいと理解したらしいマークと思ってたのと違う??と気がついたらしいアンバー嬢。
「この結婚はフランシス家とアルネス家が友人同士助け合ってきたから成立した契約だった」
「せめて男爵家に婿入りか騎士爵目指すだというならマシだったのに」
 男性陣がはぁーっと落ち込んでいるところピルピル女子が起動したみたい。
「マークは侯爵にならないの?お金もちじゃないの?」
 おや、財産狙い発言ですか?

「まずエルガー男爵令嬢、侯爵家同士の婚約破棄を破断させたことについてご実家に慰謝料請求の裁判を起こします」
「え!?」
「詳しくは弁護士を入れるのでそちらでやってくださいね」
 呆然としていた御令嬢を侍従に送り出してもらって一息。

 未だアルネス一家が困惑中。
「・・・申し訳ない。うちの息子はあんなに頭が悪かったとは」
 項垂れてしまわれたサリオン=アルネス侯爵は今日挨拶してから数時間でかなり老けたようです。

 正直に言ってしまえば、やっと生まれた我が家の嫡男で10歳下の弟が成長するまで中継ぎとして頑張って、父が現役の間に弟が望んで能力も有れば、爵位は弟にお任せして領地で何か開発出来ればなと結婚相手は私の邪魔をせず適度に社交をこなしてくれるなら愛人くらいは気にしなかったのに。
 別宅ならともかくうちで暮らすとか私は追い出しそうな話は無いでしょう。

 こんなことなら自力で手頃な相手を見つけるべきでしたわ。
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