消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません

紫楼

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姉・・・想像以上

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 しばらく、平穏だった。
 たまに俺が凍りかけたり、稲荷の森で迷子になったけど、それが普通になって来たの怖い。

 ドSさまとはミズメさんが定期連絡を受けて、「問題なし」と言われていた。

 もはや家主と秘書がいないこの家には問題しかないんだが。

 ある日、大学から帰ったら屋敷の裏が騒がしかった。
「何してるんだ?」
 玄関に入った俺を出迎えた双子の猫耳メイドに聞くと、
「新しい家族のお家増築にゃん」
「すごく大きい水槽にゃ」
と楽しそうに言われたよ。

 おそらく普通の人間ではない。水槽って何だ??

「おかえり。今日は早かったな」
「ミズメさん、水槽って何?」
「ああ、主人が人魚を連れて帰るらしい」
 は?
「ジュゴンってオチではない?」
「ないなぁ」
 雪女や座敷童がいるんだから、いるんだろうけど。
「飼っていいのか?」
「妾たちをペット扱いするでないわ」
「あ、ごめん」
 だって下半身魚で水槽住まいなんでしょ。つい、なぁ。

「あ!ってことは姉さん見つかった?」
「一応」
 何だ?一応って??
「まだ帰りたくないそうだ」
 はい?
「何か気になる国があるようでな」
 不思議アンテナがビンビンしたのだろうか?

「姉さん、結局何で行方不明に?」
「海に落ちて人魚の里にいたようだ」
 人魚の里・・・。
 玉手箱もらえたかな??竜宮城ではない?

「響子が人魚を連れ帰る手配をして先に戻る」
 人魚って入管とか止められないの!?
「巨大な魚と一緒に輸送するような方法らしいぞ」
 いや、それも無理~。
 感染症とか条約とかなんか色々あるじゃん!
「そこをどうにかするのが金と響子の役目よ」
 犯罪ですか?
 政治家とか権力者に頼んで揉み消しかな??

 あれ?漫画みたいに妖怪とか怪異の対策室みたいなの実際あるのか?
 だって、ここに本物の妖怪たちがいるしな。
 よし!深く考えたらダメだ。考えないぞ。


 水槽のある増築部分はそれはもう立派な水族館みたいな仕上がりだった。
 半年くらいかかって、ドSさまが大きなトラックを従えて帰って来たよ。
 何とイルカとか移動させるみたいにクレーンでビニールシートみたいなの持ち上げて水槽にザボンッと。

 作業した人たちには人魚ってバレるよね?
 現場監督みたいなことをしているドSさまが、
「人魚コスプレが大好きな娘として紹介している」
 それで通るの!?

 そして人魚は本当に人魚だった。何言ってるか自分でもわからないぞ。
 全身真っ白で儚げな美人の上半身に腹下の際どいところから下がウロコで覆われている。

 ミズメさんの上半身が人間で下半身が蛇との時と同じ感じかなぁ。

「日本語は通じませんので」
「!?」
 どうやら人魚の里で馴染めない子を保護した感じらしい。
 あの子はアルビノタイプで人魚界では目立ってしまって、人に見つかると襲われかねないので保護できるならして欲しいと頼まれたのだとか。
 姉さんが最初に出会った人魚は別の人?で写真を見せてもらったら、ヨーロッパにいそうな金髪美人だった。

「金髪でも目立たない??」
「あの子は特別目立つようですよ」

 確かに綺麗だけど、ミズメさんと雪音さんと九曜さまを見慣れてるとそこまでなの?って。

「日本語話せないなら、ここで暮らすの困らない?」
「ミズメと私が話せるから良いでしょう」
 なるほど。ミズメさんすごいな。

 人魚はセレーナさんと言うらしい。
 詳しく聞いたら、船で移動して来て、入管チェックは人間に変身してパスポートで通ってきたらしい。パスポート持ってるんだ。

「雪音と一緒で人間として暮らすなら一緒だな」
 ええ、人魚として引っ越してきましたが?
「雪音が冷凍庫部屋で暮らすように、セレーナは水槽で暮らすだけだろう」

 水槽にはリュウグウノツカイまで入っていた。生きたまま移動してきたの!?
 セレーナのお友達のイルカと魚もって水族館開けるよ。
 魚類研究者がいっぱいきちゃう。

 セレーナさんが陸に上がれる時間は一時間らしい。ウルトラマンよりは余裕があるね。

「で、姉さんはいつ帰るんだ?」
「ああ、それなんですが現在はインディアンを探しに」
 急に難易度が下がった。インディアンまだ存在する部族だったよね?

「インカ帝国の香りが気になるそうです」
「???」
「蘭さまに普通の感覚はないので深く考えないほうがいいですよ」

 インディアン連れ帰るのは無理じゃない?

 姉さんがこっちに戻ってきればお役御免でさっさと逃亡しよう。

 俺は平凡で慎ましくも愛に満ちた家庭を持つんだ。奇想天外な暮らしは向いていない。

「舜さま、蘭さまから伝言です。私は今後もこんな感じだから留守中みんなをよろしくね。だそうです」

 え、行方不明じゃなくなってもここにいろって?
「オオクズをスパンと切ったことも喜んでおられましたよ。舜は茜さんに似たんだって」

 姉さん、母さんと仲良かったんだ。

「蘭さまが戻られてもここで暮らして欲しいとのことですよ」

 えー・・・。









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