男前辺境令嬢が侯爵家子息に素で接したら何故か好かれました

紫楼

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始まり?

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 レイチェル・アーガードは図書室で目当ての本を借りてご機嫌で教室に戻る所だった。

 少し小走りで中庭を通り過ぎようとしていたら、唖然とした表情で中庭のガセボを見ているジークハルト・レンドグランを見つけた。

 (あら、今日も盛ってらっしゃるのね)

 ガゼボで女性のスカートをたくし上げ、腰を盛んに打ち付けている。
 見かけるたびに相手が違うので男性の方が公開プレイが好きなのでしょうねとレイチェルは冷めた目で見た。

 このジークハルトのようにうっかり見てしまう人や怖いもの見たさで見に来てしまう人、若干わざわざ覗きに来ている人のいるようだけれど。
 いい加減に学園も対応したほうが良いのにと思う。

 昼間からあんなモノを見せられて最低な気分になる側の身になって欲しいと。

「・・・もうすぐ午後の授業が始まりましてよ」
 ビクっと肩を揺らしたジークハルトは、
「ぁあ・・・ありがとう」
と少し眉を顰めて困惑した様子でレイチェルを見た。

 もしかして今日のお相手はジークハルトの恋人か婚約者だろうかと思い至って訊ねる。

「お相手様と今後もお付き合いをお望みですの?」

 そう聞くとジークハルトは目を見開き、
「いえ。あちらから強引に勧められて外堀を埋められてしまったので・・・これで破棄に持っていけそうです」
 心底嬉しそうに答えたので少し手を貸す事にした。

「そうですの。では《伝心鳥》行け」
 諜報や伝令の魔法で本来は使用が制限されている魔法だが、レイチェルは現在とある依頼のため制限が解除されている。

 隠蔽を施してある鳥がガゼボに近付き、鳥の視界と聴覚で拾ったものを魔石に記録させる。
 隣でまた目を見開いてるジークハルトを(高位貴族ですのに表情が豊かなのね)と感心して見た。
 
 伝心鳥の映像を二人で確認したら、男性が女性から引き抜いたモノが写ってしまっていた。

「あら・・・弟のより小さいわ。あんな粗末なモノを見せびらかして手当たり次第盛るだなんて変な方ね」

 思わず呟いてしまったレイチェルの横で、こっそり自分と映像のモノの差を確認してしまったジークハルトは(弟君は何歳なのだろう)と思った。

「はい。これで確実にお話が無くなりますわね」
 そう言って魔石を渡されて去ろうとされて驚いてしまう。記録用魔石はそれなりに高価なのだから。

「いや、アーガード嬢。ただで貰うわけにはいかない。後日お礼に伺いたい」
「あら、レンドグラン様。その石は一回用で辺境ではたくさん採れますのでお礼など頂けませんわ」

 レイチェル・アーガードは騎士コース、ジークハルト・レンドグランは領主コースなので顔を知っていても話した事はなかった。

 ジークハルトは銀の髪と紫の瞳で母親に良く似た顔立ちだったので女性に迫られたり、少し話すだけで顔を真っ赤にされてと接するのに困る事が多く、レイチェルのようにあっさりとした対応をされる事がなかったため新鮮に思った。
 
「あんな身持ちの悪い女性と婚姻せずに済むのですから石の価値だけの問題ではなく家門を救って頂いたお礼がしたい」

 そこまで言われてしまえば、拒絶することも出来ず、後日席を設ける事に決まった。

 レイチェルは戻って来た伝心鳥からもう一つ記録を取って、伝心鳥を解除した。

「もう証拠は足りるのでは無いかしら」

 遅くなったので午後の授業はサボる事にして、帰宅した。

「レイチェル!」
 馬車でタウンハウスに帰理着けば、兄や姉が迎えてくれた。
「レイモンド兄様、アンジェリカ姉様、いらっしゃったのね」
 両側からぎゅうぎゅう抱きしめられ、頬にキスをされまくる。

「レベッカ達も来てるぞ」
 辺境の騎士達も来ていると聞き、レイチェルは嬉しく思った。
 王都に出て来てから領地の家族とはほとんど会えてないので寂しさを募らせていたからだ。

 数日後に控えた陛下の即位20年の祝いに国中から貴族が集まっている。
 辺境や遠くの地からは全員は出て来れないので代表だけだが、アーガード辺境伯家からは警備対策に一部隊呼ばれている。

 辺境騎士の精鋭たちと久しぶりに訓練が出来るとレイチェルは喜んだ。

 







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