女神に可哀想と憐れまれてチート貰ったので好きに生きてみる

紫楼

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一章

そして出発の日

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 アントスには、旅に飽きたら、ポルドスにも遊びに来いって言ってくれた。
 あと、タバコと酒は定期的に売って欲しいとか。だからさ、商売人でもないし、仕入れに地元?に帰ってないのよ。
 あんまり持ってない設定を無視しないでくれって。

「仕入れ出来たらな」
「ああ、そうだな。頑張って仕入れてくれ」
 渡り人云々、何らかのことはカナンのニコルソン、ボルクさん、ドットやランガたちににバレてるし、アントスも何かしらあると判断してるのだろうけどさ。

「ま、無茶すんなよ」
「わかった」

 今回の依頼伝票を確認してギルマスの部屋を出た。
 
 ギルド内の雑貨屋を覗いて、指抜きの皮手袋を買ってみた。
 ウィッシュ?やってみる?
 俺が作っちゃうとゴス風味になるから、無骨な感じの漢らしいのを、赤、茶の二セット買った。白と黒はお高い店に行けって。

 一応、麻袋と干し肉とか普通は持ってないとおかしい系の物は一通り買った。

 ダンジョンでよく落ちた甲殻類の外殻な防具も結構売ってて、加工するとわからんなって感じで、可もなく不可もなく。
 初心者から中級者まではこう言った量産品な消耗品を買って、儲かり出したらいい素材持ち込んで、職人にオーダーする感じなんだなぁ。
 カニの甲羅、ちゃんとヒゲやコケ削られて、ピッカピカだよ。
 
 そう言えば、大剣士の剣、良い値段付いたな。誰が買うんだろうね。

 ギルドを出て、食料品店を少し覗いた。
 塩と大麦、小麦を買っておいた。人前でピザ生地とか作る時用に。

 一応、水代わり用ワインも買った。
 カナンのとは味が違うので産地の違いみたいなのはあるようだ。
 フルボディとミディアムくらいの違いがあって、ブドウの品種も違うんだろう。
 煙草みたいに、街々で違うなら、お試ししていくのはアリかな。

 魚と貝の干物も見つけた。しっかりめの乾燥具合なので、戻すのは時間がかかりそうか?
 それならポチッとちょうど良いのを買う方が楽かな?
 でも地球の物よりめっちゃ美味しい可能性を秘めている。
 興味を捨てきれず、エグい顔になってる魚や、ぺちゃんこにして干したっぽい貝とか買っちゃった。
 戻して煮込んで、酒のつまみにしてやるぞ。

 ダンジョンでドロップした魚介も肉もそれなりにあるので、最後に野菜を見に行った。
 野菜類は海の街だからか、朝一番が売りじゃないので、夕方前でもまだそれなりに売ってた。
 芋、カブ、玉ねぎとかドットたちが嫌がらない野菜を中心にした自分はちょっと甘いかも。
 トマトっぽいのもピーマンっぽいのも食べたがらないんだよね。

 果物はダンジョンでそれなりに収穫してあるので良いかなって思えば、ドライフルーツがあったので適当に選んでもらって買った。
 フルーツたっぷりブランデーケーキ、美味いよな。
 ミックスのジャムも良い。

 あー、しばらくじっくり料理できないんだ。今夜も作るか。

 そんなわけで、宿に戻れば、ドットたちに捕まって。
 一緒に夕食食べて、飲んで、解放されたのは夜中の三時!

 お前ら寝ろよぉおおお!!

「次の街までじっくり飲み食いできないからなぁ」
 
 途中で俺に酒を売らせてバカバカ飲んでたよ。
 三十前後はまだ元気だったなぁ。
 オッさん、遠い目になっちゃう。

 さすがに料理は諦めて風呂に入って寝たよ。

 
 目覚めはスッキリしてた。若い。

 コーヒー飲んで、ドライフルーツをブランデー漬けにするのだけやった。

 偽造荷物だけ用意して、衣装はカナン風に寄せた。刀は暁月を剣帯に、フードマントは濃茶系にした。

 髪型が崩してないので昨日のまま。
 ヒゲは剃った。
 貴族が多いので身綺麗にしておけって言われたから。
 セクシー顎髭よ。また会う日まで。

 子供がいるのでしばらく好きに吸えないと三本吸ってから、〈ルーム〉を出た。

「おっはよ」
「うっす」
 ドットたちは食堂に揃ってて、普通に元気だ。
 若いってより基礎体力が違うんだろうな。
 
 スープは魚介のレモン風味だった。爽やか。

 宿のマスターが俺たちに三食分のお弁当を持たせてくれた。サービスが凄いよな。

 集合場所は、門前なので、みんなで歩いていくと、ギルド職員や騎士隊が馬車や馬に荷物を運んでた。

「王都までの物資と囚人の飲み物と食事です」
 囚人たちは貴族もいるので多少マシな扱いをするそう。刑が確定してないので、今の段階では人権は保護されてるらしい。と言っても、証拠は揃っていて実刑は確実らしいけど。
 誘拐に関わっていた連中の中で下っ端はポルドスで処理するけれど、上層部は王都に運ぶ。
 シルスファンやミシェルに接触はさせれないので先行で進むらしい。

 犯罪者たちを乗せた荷馬車は、リューラス侯爵の騎士隊と冒険者パーティが付いて出発した。

 少しして、豪華な馬車二台がやってきて、リューラス侯爵と、シルスファンがそれぞれ降りてきた。

「この度は王都までよろしく頼む」
「「「「お任せください」」」」

 シルスファンのラシャドル家の護衛たちも揃っていて、かなり厳重に感じるけれど、侯爵本人と侯爵令息、令嬢がいるからこんなものかな。
 シルスファンの捜索に残っていたラシャドル家の騎士隊、護衛、待機していた侍女、執事とかなり大所帯で。

 俺たちはシルスファンとミシェルの乗る馬車の御者台、後ろを走る荷馬車に別れて乗ることになっていた。

「シルスファンさまとミシェルさまの執事カザルにございます。どうぞよろしくお願いいたします」
 シルスファンの横で丁寧なご挨拶をしてくれたカザル、オールバック執事は渋いおじいちゃんだった。

 挨拶を済ませて、馬車に乗り込むと、アントスがブランを連れて見送りに来てくれた。

「また会いましょうでやんすよー!!ジェイルさんと〈新月の雷光〉の皆さんにオーズのご加護をーー!!」

 ピョンピョン跳ねながら手を振ってくれたブランにちょっとウルッと来ちゃったじゃないか。


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