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一章

夜通し

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 エール飲みながら肉!
 俺はカウンターから大テーブルに引っ張られ、ひたすら乾杯させられる。
「ウッヒョ~!贅沢過ぎるぅ」
「それは俺のぉ」
 ほぼ大きい男しかいないからか、野菜に目を向けず、酒と肉ってやつだ。

 ボルクさん特製トロトロ肉に豪快ステーキ。
 薄切り肉をタレ(未体験味)で焼いたやつに、芋とピタパンもどき。鳥串、豚串、蛇串と魔物肉尽くしだ。
 蒸かした芋があるが塩とハーブだけなのでマヨネーズを付けたい気持ちと戦う。
 俺用に野菜串があって、野菜スープもあったり。

 肉汁たっぷりのクマ肉にグレイピーソースのを芋と一緒に食べたら美味しい。
 ごじゃれたレストランでステーキにマッシュポテトとフォアグラ乗ってたりするアレやってみた。

「何してるのー?美味しそう」
 ヤンたちが俺に乗っかって肉を奪う。
「あー、これ良いかもー」
「ジェイル!俺もやってくれ」
「俺のも」
 いや、芋のっけるか肉と交互に食えば一緒なんだけど!
 ちょっと嫌がらせで野菜も一緒にのせてやれば、逆に「一緒だと葉っぱも草もうま~」って喜ぶ始末。
 葉っぱと草ってもうなんかあかんヤツ!!

 酒のカップ片手にあちこちテーブルの肉を食べ回る。

「ジェイル、これ飲め。秘蔵だぞ」
「やった」
 瓶って言うかほぼ甕?のをジョズが俺のカップに入れる。
「ちょっとまだエールが!」
「んー?」
 もう気持ち良くなってやがる!!

 俺がブランデー入れた肉がまだ出てないぞ。ってボルクさんを見たら「みんなが酔って訳がわからなくなったら出す」って。
 ザルと大ザルと底抜けがいるようだけど、いつ出せるんだ?

 それでも樽がいくつか空くと歌い出し踊りだし、泣き出す。酔っ払い行動は世界共通か。
 ヴァロとクレイバーがパンツ?下履きって言うのか一丁で服を頭の上に乗せて「競争だぁ」って外に走り出ちゃった。

「あーあ、後で〈悪戯猫〉の連中に叱られるぞぉ」
 えー、だったら止めてあげなよ。ドット。
 〈悪戯猫〉はお触りOKのオネエチャンのお店で、夜に外で酒飲んで暴れると「町の風紀が乱れて営業許可が取り消しになる」って外で馬鹿騒ぎするとボコられるらしい。
 この世界にも風営法があるのか?

「〈悪戯猫〉はオネエチャンに気に入られたらぁ二回戦目があるぜぇ?行くか!?」
「行かないって」
 ランガとヤンが俺のゲフンを知ってるからウザ絡みしてくる。

 オネエチャン次第のお店はお酒はそれなりに高いけどオネエチャン代というのがないらしい。あくまで店の売り上げが高い子がお給金を高くもらえるから、手っ取り早く売り上げをあげたい子が嫌な言い方だと〈枕〉したり、貢いでもらうために〈特別〉に仲良くなっちゃうって、日本の夜とそう変わんないね。
 逆にそこそこ稼げていれば良いなら、娼館より客が選べるし、嫌だったら拒否できる分飲み屋の方が女の子のハードルが低いらしい。
 なんか誘う気満々でお店に通って、オネエチャンに振られ続けることもあると思うと切な過ぎる。
 ランガやドットたちはBランクだし、気が良いし、金払いもいいだろうから、モテるだろう。それなりに遊べてるんだろうな。

 んー、やっぱり俺は良いや。
 シビアな現実を垣間見るの泣ける。俺が振られるとかの心配じゃないぞ!
 
「おいぃー!この肉何使ったんだぁ!」
 あ、ギルマスがなんか喚き出したよ。
 例のブランデー肉食べちゃったか。
「マスター、腕上がりすぎじゃん」
 シャートとヤンがおかわり要求。
「一人一皿だ」
 あー、これだけの人数だと鍋一個じゃキツいね。
「「「えええぇぇーーーー」」」
「もっかい作って~」
 相当うまかったらしい。
「まぐれで出来た。次はない!」
「「「嘘だぁ~」」」
 酔っ払いの駄々捏ねはだいぶウザい。
 大きい男たちがさめざめと泣く。そんなにだったか。

 ふ、俺の作ったワイン煮込みとチャーシューを食ったら飛ぶぞ?
 出したらデコピンかアイアンクローだから出さないけど。良い出来だった。おすすめは牛スジとタン。

「ヴァロとクレイバーの分を!!」
「人の分まで食うんじゃねぇ」

 ボルクさんはちゃんと外出て行った酔っ払い分は避けてた。

 あー、タバコ吸いたい。
 でもここでは誰も吸ってないんだ。こんなヤニ臭そうな(暴言)連中なのに。

「俺、ちょっと廁・・・」
「あ、俺も俺も!!」
 何ぃ!空気読めよ!ランガ!!!
「あー、ションベンションベン」
「「連れションのランガ~!!」」
 
 なんでだよ!俺をガシッと捕まえてトイレの方に引きずって行く。

「ほれさっさと済ますぞ」
「・・・」
 そりゃ飲んでるから出るけどさ!!

「草だろ??草、我慢できねぇよなぁ?」
 トイレの裏でなんか悪い兄さんに絡まれてまーす!
「一緒に吸おうや」
 なぜトイレの近くで至福の一服をせねばならんのか!!

 ランガはこの前売った紙タバコを取り出す。
 一箱が長持ちだな。大事に吸ってんのか。シケるぞ。
 ぬー。俺はシガリロを出す。
「「ふぅー」」
「・・・お前はまた違うヤツを」
 ランガが俺のシガリロをつまみ取って、自分の紙タバコを俺の口に突っ込んでくる。

 男との間接キスは望んでねぇぞ!!!|

「・・・マジうめぇ!お前、ギルマスたちに売ったな?」
「売ったけど・・・」
「いったいどんだけ持ってんだよ」
 えー。お取り寄せョッピングしてるって言っても訳わかんないっしょ。

「あーーー!!売れる時は俺たちにも売ってくれよな!」
「良いけど」
「良いのかよ!!」
 ヤニ切れは辛い。俺はヤニ臭には優しくしてやるぞ。禁煙歴二十年!!当分は解禁記念だ。

 マジ、タバコ民肩身狭い。
 俺の勤めてた会社は禁煙実施が早かった方だ。 
 初期に用意された喫煙ルーム。あそこでタバコに燻されて外に出た時の女性社員の嫌悪剥き出しの顔とか、非喫煙者に「うぇ」って顔された時、会社での喫煙は無理だと悟ったよね。
 家だけで吸うとか中途半端だと会社や出先でイライラしそうでスパッとやめたけど。  
 そのうち会社の喫煙ルームは出入りの時や壁に染みた匂いが臭いって揉めて、会社の外にベンチと灰皿が置かれるだけになった。隔離から追放って、世の中で一番迫害されてる気分だよな。

 ああ、思い出すとあの頃のイライラが蘇って長々文句出た。
 吸わなくなれば、非喫煙者の言いたいこと多少わかるんだよ。

 でも好きなもんは好きなんだよって!!!
 
 まぁ世界が変わっても、遠慮がちに吸うハメになってる。
 美味しすぎて匂いが良いから!!!

 地球のタバコ生産者、産業のみなさん!!美味しいのありがとーーー!!
 税金は安くして生産者に還元しろー!!
 
「後払いでも良いよ?」
 そっとシガリロ三箱出したら、
「マジかよ!一箱金貨五枚か?」
って、高級取りには屁でもないんだろうけど、五万円のタバコってなんだよ。
 ギルマスが葉巻三本とかケースごとくれたの知ってる感じか。
 
「一箱金貨一枚でいいよ。煙草で稼ぐ気ねぇし」
 そもそもカートンで買っても釣りが出るんだぞ。

「それは安過ぎるだろ」
 紙タバコ銀貨五枚で売ってから高騰し過ぎじゃね。

「あんま高値つくと逆に売り難い」
「マジかよ」

 結果、金貨二枚で納得してくれた。
 

 のは良いんだけど、覗きがいたんだなぁ。




===============

 人数が多いので宴会の登場人物

 〈小鳥の止まり木〉
 宿マスター・ボルク
 おかみさん・エンマ
 〈新月の雷光〉
 ドット 
 ドレイク 
 クレイバー 
 シャート 
 〈鋼鉄の拳〉
 ランガ
 ヤン
 ヴァロ

 冒険者ギルド ギルマス・ニコルソン
 冒険者ギルド 解体主任・ジョズ
          



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