上 下
10 / 16

しおりを挟む
 庶民街と高級街がかなり違うこと、夢の世界と生きているこの世界が全く違うことは理解できた。

「貴族が見ている世界は高級街とも違うんだよ」

 ルーシェンさまは諭すとかでは無く自力で理解できるように、分かりやすく比較できる場所を連れ歩いてくれたらしい。

 フランメ家に居た時は自力で生きていかなくてはって思っていたから、平民の暮らしを知れば良いと考えた。

 お祖父様のところで勉強はしていたけど、生活水準が高いなぁってぼんやり思うだけで、フランメ家との格差もあまり考えた事がなかった。
 本の中の世界を旅している時間が私にとって一番楽しみで、庶民街でデニーと出会ってからは少しだけ世界が広がって。

 でもやって良いこと悪いことの境目が平民と貴族で違うとか考えたこともなかった。

 フランメ家では放置されて自分で何か考える必要も無く、グランデ家では守られていたんだなって理解した。

「君はこの先、自分を守るための生き方を身に付けなくちゃいけない。君の持つ知識は悪い奴らに利用されかねない」

 これは、平民になれないって言いたいのかなぁ。別に私は研究をしたいわけじゃ無いから、今後何か出さなきゃ良いんじゃ無いのかな。

「僕はね、君が面白くて可愛いから君の事を守らせてほしいと思っているよ」

 ・・・保護?告白?どっち?

「今すぐじゃ無くて良いけど、ちゃんと考えてね」
 
 えっと年の差があり過ぎるから保護者で良いのかな?って頭の中ぐるぐるさせてたら頭の上の方でクスッと聞こえた。揶揄った!?

 ルーシェンさまはグランデ家に送り届けてくれて帰られた。

 リビングに行くと甲高い声でキャンキャン騒ぐ声が聞こえてきた。

「姉様を返してよ!お祖父様!!」
「シャロンはもうフランメ家からは除籍になっておる。帰れんぞ」
「何でよ!!」
「お前の父に聞け」

 お祖父さまは吐き捨てるように言う。

「シャロンはステリーとアンジェリカとは二度とあわん。」
「なんでよ!姉様は私の姉様だわ!」

 あ、そこは認識されてたんだ。

「お前がここに来るのは構わんが、ウチがフランメ家と付き合う事は無い」

 エイミーがよく分かってなさそうな顔をしているが、徐々に目を潤ませる。

「なんで!!お祖父様も伯父様も姉様ばっかり!!??」

 駄々っ子モードに入ってしまったエイミーは足をダムダムさせて叫ぶ。

「エイミー、お前も大事な孫だ。お前が望むならウチで引き取る事も考えたいが、お前の親は納得しない」

「お前たちの親がシャロンを手放す事を承知したんだ」

 お祖父様と伯父様は優しく説明しているけど、10歳のエイミーにはよくわからないかもしれない。

「とにかくシャロンはフランメ家とは他人だ。エイミーがシャロンと会うのは良いが家に繋がりは無い事を理解しなさい」

 エイミーは納得出来ないのか下を向いてプルプルしている。

 基本的に私がキャンディー姉様に押し付けられた物を強引に奪ったりするくらいで嫌な思いでは無いけど、ここまで私に興味があったとは気がつかなかったな。

 伯父様がエイミーを馬車まで運ぶみたいなので、私はそっと柱に隠れた。

 あの家には戻れたとしてももう戻りたく無いし、ごめんね。エイミー。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

辺境伯令嬢は婚約破棄されたようです

くまのこ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、王子から婚約破棄された辺境伯令嬢は…… ※息抜きに書いてみたものです※ ※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています※

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

最強執事の恩返し~大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。恩返しのため復興させます~

榊与一
ファンタジー
異世界転生した日本人、大和猛(やまとたける)。 彼は異世界エデンで、コーガス侯爵家によって拾われタケル・コーガスとして育てられる。 それまでの孤独な人生で何も持つ事の出来なかった彼にとって、コーガス家は生まれて初めて手に入れた家であり家族だった。 その家を守るために転生時のチート能力で魔王を退け。 そしてその裏にいる大魔王を倒すため、タケルは魔界に乗り込んだ。 ――それから100年。 遂にタケルは大魔王を討伐する事に成功する。 そして彼はエデンへと帰還した。 「さあ、帰ろう」 だが余りに時間が立ちすぎていた為に、タケルの事を覚えている者はいない。 それでも彼は満足していた。 何故なら、コーガス家を守れたからだ。 そう思っていたのだが…… 「コーガス家が没落!?そんな馬鹿な!?」 これは世界を救った勇者が、かつて自分を拾い温かく育ててくれた没落した侯爵家をチートな能力で再興させる物語である。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

【完結】転移魔王の、人間国崩壊プラン! 魔王召喚されて現れた大正生まれ104歳のババアの、堕落した冒険者を作るダンジョンに抜かりがない!

udonlevel2
ファンタジー
勇者に魔王様を殺され劣勢の魔族軍!ついに魔王召喚をするが現れたのは100歳を超えるババア!? 若返りスキルを使いサイドカー乗り回し、キャンピングカーを乗り回し!  経験値欲しさに冒険者を襲う!! 「殺られる前に殺りな!」「勇者の金を奪うんだよ!」と作り出される町は正に理想郷!? 戦争を生き抜いてきた魔王ババア……今正に絶頂期を迎える! 他サイトにも掲載中です。

処理中です...