ミャーはネコマタなのにゃ!ケット・シーじゃにゃい!

紫楼

文字の大きさ
上 下
5 / 9

街は楽しいにゃ!

しおりを挟む
 冒険者ギルドに入るといろんな種族の獣人がいた。

「ケット・シーだ」
「え?ケット・シー?」
「ミャーはネコマタと言うものにゃよ!!」
 呟いてた獣人たちに反論した。

「ネコマタってなんだぁ?」
「ケット・シーより上の存在にゃよ」
 なんたって尻尾が二本あるにだからとナッツは胸を張る。
「上ぇ?」
 ナッツはこの世界にはネコマタと言う種族がいないと神に言われたことを、すっかり忘れている。
 
 シェルスはナッツの胸張りを「可愛いだけですが」と思いつつ、ナッツを誘導して受付カウンターに並ぶ。

 しばし待つと二人の順番になった。

「お久しぶりですね。シェルスさま。そちらのケット・シーさまはお連れさまですか?」
 受付のウサ耳の女性が挨拶をするとナッツは、また言われたととイライラした。

「ミャーはネコマタなのにゃー!!」
「ネコマタさま?」
 名前がネコマタだと勘違いをされた。

「ピンカさん、彼はナッツと言います。種族がネコマタですよ」
 ギルド内の者は、「ケット・シーだろう!?」と心の中で総ツッコミをした。

「ピンカさんにゃ?ミャーを登録してくださいにゃ!」
「ああ~、はい。こちらの石に手をかざしてください。身分証はお持ちですか?」

 身分証があるとEランクからで、身分証がないとFランクからとなる。信用を得る期間が必要ということのようだ。
「早くしてにゃよ!楽しみだにゃ!」
 早くギルドに登録したいナッツはピンカを急かした。

「はい。大丈夫ですね。・・・シェルスさま、お願いしますね?」
 身分証を見てしまったピンカは、ナッツがどういう存在だか知ってしまった。

「依頼はすぐ受けられますか?」
「そうだね。近くで採れる薬草からと考えています」
「ではこの三枚から、いかがでしょう」
 初級ポーションの素材二種と、庭の草刈りと言った内容だった。

「ナッツ、どれ受けます?」
「全部やるにゃ」
「おや、やる気は大事ですね」

 そうして二人は外に出かけた。

 まずは草刈りの依頼を出してくれた家に向かう。

「こんにちわ~!!なのにゃ!」
 玄関のノッカーをタンタンっと鳴らすのをシェルスに教わってやってみた。

「はぁーい・・・!?」
 中から出てきたのは犬耳のおばあさん。
 おばあさんは、ナッツとシェルスを見てびっくりして扉を開けたまま固まった。

「草刈りに来たにゃ!」
「まぁまぁ・・・」
 エルフとケット・シーの二人組と言う不思議な組み合わせでは誰もが驚くだろう。
「依頼を受けてくれたのねぇ」
 ちょっと目をパチパチさせたあと、おばあさんは中に招き入れてくれて、中庭へ案内してくれた。

「私もじいさまも腰が悪くてねぇ。よろしくね」
 以前はきちんと管理されていたであろう庭は、背の高い雑草で覆われていた。
 育てていたものは枯れてしまったので、全部必要がない草だと聞いて、根っこごと土を動かす許可を取った。

「土が柔らかくなる分にはありがたいねぇ」
とのことなので、遠慮はいらないとシェルスはナッツに手順を伝えた。

 シェルスがまず太鼓のような物を使ってバーン!と音を立てた。

「小動物が紛れ込んでいる時もありますからね」
「それは危険にゃ・・・」
 ナッツはまず風魔法を数回使って、草を根本からバッサリ刈った。

「ほぅ。かなりコントロールが上手くなっています」
「やったにゃ!」
 シェルスに頭を撫でられて、思わずゴロゴロが出てしまったナッツは、もっと撫でろと背伸びをした。

 刈った草は風魔法で隅っこに集めた。

「ふふ、さぁ次は土魔法で根っこを取り除きますよ」
「いくにゃー!」
 ナッツは草の根っこを大地から浮かせるように土魔法でボコボコと土を浮かせた。

「ふにゃぁ」
 中々のコツがいって、思わず土がひっくり返ったりしてしまったけれど、問題はないとシェルスがカバーしてくれた。

「こんなもにょかにゃ」
「上手く出来ました」

 一時間ほどで作業が終わって、おばあさんに報告するとびっくりされた。

「まぁ!ケット・シーさんとエルフさんは凄いのねぇ」
「ミャーはネコマタと言うんだにゃ!」
 おばあさんに胸を張って訂正する。
「ネコマタさん?」
 名前だと思われているのに気付かず、「そうだにゃん」と悦に入った。

「おばあさんは賢いんだにゃ!」
「あら、そう?うふふ」
 すぐわかってくれたとナッツは尻尾を揺らす。

「お庭をきれいにしてくれてありがとう。オヤツ持って行ってね」
 依頼書にサインをもらい、クッキーを頂いて見送ってもらった。

「優しくて良いおばあさんだったにゃ!」
「そうですね」

 次は初級ポーションの素材採取だと街の外の草原に向かう。

「この辺りは穴ウサギ屋のネズミが出ますので足元を気をつけてくださいね」

 ナッツはお勉強をした草を見つけようと地面をクンクンしながら進む。

「どんな匂いかにゃ」
 フンフン。
「お口がスッキリする葉っぱが好きにゃ」

 集中して草を見てたら、横から何かが急に出てきて、ナッツはビョーーーーン!!!と背中を曲げたまま飛んだ。

「ぎにゃーーーっ!!!」
「キューーーーーーーー」
 お互いでびっくりした感じである。

「ナッツ、倒してください」
「あぅーウィンドカッターにゃー」
 慌てて打ち出した魔法で飛び出してきた穴ウサギを倒した。

「これも常設依頼にありますよ」
「それは良かったにゃ」
 びっくりしたとナッツは毛が逆だったまま、ほぅと息を吐いた。

 アクシデントがあったものの無事に素材の薬草を二種類見つけたので、依頼達成。

「五本まとめて・・・にゃ」
 いらない葉っぱで小分けに結んで収納する。

「さて初依頼はすみましたから、戻りましょうか」
「はいにゃ!ミャーは疲れたので抱っこを所望するにゃ!」
 
 シェルスは今だけですよと、ナッツを首に巻いて、ギルドに向かった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

京都式神様のおでん屋さん

西門 檀
キャラ文芸
旧題:京都式神様のおでん屋さん ~巡るご縁の物語~ ここは京都—— 空が留紺色に染まりきった頃、路地奥の店に暖簾がかけられて、ポッと提灯が灯る。 『おでん料理 結(むすび)』 イケメン2体(?)と看板猫がお出迎えします。 今夜の『予約席』にはどんなお客様が来られるのか。乞うご期待。 平安時代の陰陽師・安倍晴明が生前、未来を案じ2体の思業式神(木陰と日向)をこの世に残した。転生した白猫姿の安倍晴明が式神たちと令和にお送りする、心温まるストーリー。 ※2022年12月24日より連載スタート 毎日仕事と両立しながら更新中!

猫の私が過ごした、十四回の四季に

百門一新
キャラ文芸
「私」は、捨てられた小さな黒猫だった。愛想もない野良猫だった私は、ある日、一人の人間の男と出会った。彼は雨が降る中で、小さく震えていた私を迎えに来て――共に暮らそうと家に連れて帰った。 それから私は、その家族の一員としてと、彼と、彼の妻と、そして「小さな娘」と過ごし始めた。何気ない日々を繰り返す中で愛おしさが生まれ、愛情を知り……けれど私は猫で、「最期の時」は、十四回の四季にやってくる。 ※「小説家になろう」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話

ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。 完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

天才手芸家としての功績を嘘吐きな公爵令嬢に奪われました

サイコちゃん
恋愛
ビルンナ小国には、幸運を運ぶ手芸品を作る<謎の天才手芸家>が存在する。公爵令嬢モニカは自分が天才手芸家だと嘘の申し出をして、ビルンナ国王に認められた。しかし天才手芸家の正体は伯爵ヴィオラだったのだ。 「嘘吐きモニカ様も、それを認める国王陛下も、大嫌いです。私は隣国へ渡り、今度は素性を隠さずに手芸家として活動します。さようなら」 やがてヴィオラは仕事で大成功する。美貌の王子エヴァンから愛され、自作の手芸品には小国が買えるほどの値段が付いた。それを知ったビルンナ国王とモニカは隣国を訪れ、ヴィオラに雑な謝罪と最低最悪なプレゼントをする。その行為が破滅を呼ぶとも知らずに――

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...