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何も解決策が思い浮かばなかったので、馬車内からロック邸へと場所を移した。
「俺のことはともかく、シンシアさんの事だけでも何とかならないだろうか」
「そうですね、私もまさかこんな事になるとは思わなかったので、ヒロインのことまでは気にかけていませんでした」
ふーっ、と深く息を吐く。もういっそのこと、
「シンシアさんをオフィーリアさんの家で保護出来ませんか?つまり、シンシアさんの学園内での行動は、王国に相応しくない貴族や俺みたいなバカを炙り出すためにわざとしていたことで、そしてそれを主導していたのはロック家だった、と」
「もしかしたらシンシアさんはどうにかなるかもしれませんが、あなたはそれで良いんですか?」
「んー、幽閉なら別に、前世とそんな変わらんし。本があればいいかなあ。処刑になったら嫌だけど苦しまない方法があるなら」
暗に引きこもりだったと告げるとオフィーリアさんは微妙な顔を向けてきた。
フっ、と自嘲する。親に寄生するクズ人間だとでも思ったんだろうか。ずっと精神的に追い詰め続けられ自己否定するしかない洗脳状態となり、家族のサンドバッグと化していた、ヘラヘラと無能であると自分を誤魔化していないと更に責められた俺は、確かに自立も出来ないクズ人間だったのだろう。まあ、今となってはどうでも……
「わたしは、どこまでしてたんでしょうか……?」
弱々しく声を上げたのは、今まで一言も声を発しなかったシンシアさんだった。
「小説だと攻略対象の男性と抱き合ってるくらいの描写しかなかったけど、私が見た限りでも同じだったと思うわ」
想像よりも酷くなかったのか、ほっとしたのが伝わってきた。
「そうそう、ハグなんて挨拶みたいなもんだし、例えほっぺにチューくらいしてたって海外ではそれこそ挨拶みたいなもんだし、気にすることないって」
みるみる顔を不愉快そうに歪めていくシンシアさんに、最後はゴニョゴニョとなってしまった。冗談めかしたつもりだったけど恥ずかしくてチューの時声が震えたのはキモかった。わかってる、ちゃんと自覚してるから。そういえば人と話すのも久しぶりだった。
思わず俯いて手で顔を覆っていると、突然ドアが勢いよく開かれた。入ってきたのは鬼のような形相をした大人の男性。「お父様」とオフィーリアさんの呟きが聞こえた。
「俺のことはともかく、シンシアさんの事だけでも何とかならないだろうか」
「そうですね、私もまさかこんな事になるとは思わなかったので、ヒロインのことまでは気にかけていませんでした」
ふーっ、と深く息を吐く。もういっそのこと、
「シンシアさんをオフィーリアさんの家で保護出来ませんか?つまり、シンシアさんの学園内での行動は、王国に相応しくない貴族や俺みたいなバカを炙り出すためにわざとしていたことで、そしてそれを主導していたのはロック家だった、と」
「もしかしたらシンシアさんはどうにかなるかもしれませんが、あなたはそれで良いんですか?」
「んー、幽閉なら別に、前世とそんな変わらんし。本があればいいかなあ。処刑になったら嫌だけど苦しまない方法があるなら」
暗に引きこもりだったと告げるとオフィーリアさんは微妙な顔を向けてきた。
フっ、と自嘲する。親に寄生するクズ人間だとでも思ったんだろうか。ずっと精神的に追い詰め続けられ自己否定するしかない洗脳状態となり、家族のサンドバッグと化していた、ヘラヘラと無能であると自分を誤魔化していないと更に責められた俺は、確かに自立も出来ないクズ人間だったのだろう。まあ、今となってはどうでも……
「わたしは、どこまでしてたんでしょうか……?」
弱々しく声を上げたのは、今まで一言も声を発しなかったシンシアさんだった。
「小説だと攻略対象の男性と抱き合ってるくらいの描写しかなかったけど、私が見た限りでも同じだったと思うわ」
想像よりも酷くなかったのか、ほっとしたのが伝わってきた。
「そうそう、ハグなんて挨拶みたいなもんだし、例えほっぺにチューくらいしてたって海外ではそれこそ挨拶みたいなもんだし、気にすることないって」
みるみる顔を不愉快そうに歪めていくシンシアさんに、最後はゴニョゴニョとなってしまった。冗談めかしたつもりだったけど恥ずかしくてチューの時声が震えたのはキモかった。わかってる、ちゃんと自覚してるから。そういえば人と話すのも久しぶりだった。
思わず俯いて手で顔を覆っていると、突然ドアが勢いよく開かれた。入ってきたのは鬼のような形相をした大人の男性。「お父様」とオフィーリアさんの呟きが聞こえた。
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