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気にするほどでもない異変
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ここは東京。
日本の中心部たるこの大都会では多くの者が忙しない日々を送っている。
そして、今日もまたそんな不変の一日が始まろうとしていた。
ーーただいま、列車が到着いたします。白線より下がってお待ちくださいーー
軋んだ音を鳴らし、到着した列車へ待っていた者達が我先にと強引になだれ込む。この光景もおなじみだ。
しかし、あまりに過密すぎて徐々にあぶれる者が増えてきたようだ。
そんな中、恰幅のいい男が一人フラフラと出発時刻が近い列車に近づいた。
「すいません。満員なんで次の便にお乗りください」向ノ上はペコぺコと頭を下げて列車へ近づく男に言った。
その様子を第一車両にいた先輩の桑野は、腕時計で時間を気にしつつ見守っている。
男は首を上下に振って頷いた。意識ははっきりとしているようだ。
ただ、そんな男の印象は鼻息が荒く、呼吸するのも辛そうで今にも倒れてしまいそうに見えた。
おまけにこちらの言葉には反応してくれたものの、一向にそこから動こうとしない。
向ノ上は男をやむなく誘導することにした。
男の腕を自らの肩にかけ、一歩ずつ着実にベンチへと向かう。
少しばかり時間はかかったが、なんとかベンチへと辿り着いた向ノ上はすぐさま男を座らせた。
男は容体が悪くなったのか、座ったとたんに蹲った。
その様子を見守っていた向ノ上はトランシーバーを手に取り、その場から離れて列車へと向かいつつ桑野にかけた。
「すいません。今の人、具合悪そうなんでドクター呼んでもいいですか?」と、
蹲ったままの男へ目を向けながら聞く。
「そうだな。熱中症かもしれん。一応呼んどけ」
「わかりました」
話し終えた向ノ上はPHSの内線を使い、常駐しているドクターを呼んだ。
ここ、新宿駅では過去に違う駅にて起きた熱中症での大衆の卒倒から学び、常駐の医師を手配しておくと同時に周囲の中小病院や医院と連携を組むシステムを整えてきた。それは、東京都の都知事による英断であった。
また、このシステムは新宿駅だけならず都内全域においてカバー出来るように計画が進められている。
都内全域の実験会場として見立てたこの計画は、成功収めた暁には日本全国へと普及させるプロセスが組まれている。
常駐の 中城健司は、一目散に駆けつけ容体の悪そうな男の様子を一瞥した後、瞬時にその男に起きている得たいの知れない脅威を、感じ取り救急車を呼び寄せた。この判断速度は現役時代から鈍っていない。
中城は昨年に定年退職をして、その医者の人生の幕引きをした。
ある日、桑野はどこか張っていた糸が切れたようなそんな状況の中城を惜しく思い、この計画を話した。いや、話してしまった。
日本の中心部たるこの大都会では多くの者が忙しない日々を送っている。
そして、今日もまたそんな不変の一日が始まろうとしていた。
ーーただいま、列車が到着いたします。白線より下がってお待ちくださいーー
軋んだ音を鳴らし、到着した列車へ待っていた者達が我先にと強引になだれ込む。この光景もおなじみだ。
しかし、あまりに過密すぎて徐々にあぶれる者が増えてきたようだ。
そんな中、恰幅のいい男が一人フラフラと出発時刻が近い列車に近づいた。
「すいません。満員なんで次の便にお乗りください」向ノ上はペコぺコと頭を下げて列車へ近づく男に言った。
その様子を第一車両にいた先輩の桑野は、腕時計で時間を気にしつつ見守っている。
男は首を上下に振って頷いた。意識ははっきりとしているようだ。
ただ、そんな男の印象は鼻息が荒く、呼吸するのも辛そうで今にも倒れてしまいそうに見えた。
おまけにこちらの言葉には反応してくれたものの、一向にそこから動こうとしない。
向ノ上は男をやむなく誘導することにした。
男の腕を自らの肩にかけ、一歩ずつ着実にベンチへと向かう。
少しばかり時間はかかったが、なんとかベンチへと辿り着いた向ノ上はすぐさま男を座らせた。
男は容体が悪くなったのか、座ったとたんに蹲った。
その様子を見守っていた向ノ上はトランシーバーを手に取り、その場から離れて列車へと向かいつつ桑野にかけた。
「すいません。今の人、具合悪そうなんでドクター呼んでもいいですか?」と、
蹲ったままの男へ目を向けながら聞く。
「そうだな。熱中症かもしれん。一応呼んどけ」
「わかりました」
話し終えた向ノ上はPHSの内線を使い、常駐しているドクターを呼んだ。
ここ、新宿駅では過去に違う駅にて起きた熱中症での大衆の卒倒から学び、常駐の医師を手配しておくと同時に周囲の中小病院や医院と連携を組むシステムを整えてきた。それは、東京都の都知事による英断であった。
また、このシステムは新宿駅だけならず都内全域においてカバー出来るように計画が進められている。
都内全域の実験会場として見立てたこの計画は、成功収めた暁には日本全国へと普及させるプロセスが組まれている。
常駐の 中城健司は、一目散に駆けつけ容体の悪そうな男の様子を一瞥した後、瞬時にその男に起きている得たいの知れない脅威を、感じ取り救急車を呼び寄せた。この判断速度は現役時代から鈍っていない。
中城は昨年に定年退職をして、その医者の人生の幕引きをした。
ある日、桑野はどこか張っていた糸が切れたようなそんな状況の中城を惜しく思い、この計画を話した。いや、話してしまった。
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