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2章
2章④
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茫然と立ち尽くす2人に夏月は続ける
「どうなんだ?さっきも言ったが犬だけじゃない。動物園から逃げ出した狼なんかもいるがはっきりと種類が、わかっているわけじゃない。調べる価値はあると思うがどうだ?」
田中は急いで反論する。
「私はまださっきの話にも納得していませんし、調査はこれから地元の猟友会の方を招いて計画していきます。個人で行うなんて無理で」
「猟友会の人間なら狩りのリスクは承知しているだろうがね。残念ながら猟友会レベルの装備で中に入れるなら見殺しだよ。」
「そんな言い方!」
「待ってくれ!」
呆れた様子で一条は続ける
「何故君たちは出会って間もないのにこうもぶつかるんだ。今回はどちらも正しい。桜、いくら君でも九重連山の広範囲を1人で調査はできないだろ?」
「まぁそうだね。リザードは何機あるんだ?」
「そうはないさ、君のフライングリザード、田中さん様の指揮官仕様モニターリザードと私が今装着している開発中の試作機だな名前はまだないがね。あとは警察に提供した警察の装備が付けられるリザードが5基ほどだな。」
「それは猟友会に貸せるのか?」
「無理ですね。」
「無理だろうな。」
「なら猟友会は入れないな。警察の選抜5人と私達で行動だな。」
「桜、さっきも言ったがこの規模は1人が8人になったからといって解決するもんではないよ。」
腕に仕込まれたスタンナイフを展開してみながら、夏月は静かに聞いている。
明らかに焦っている田中だが、古くからの付き合いの田中と一条の会話に思うように入っていけずにいる。
「だろうね。」
「君のプランは?」
「フライング以外のカタログスペックがわからないと性格には理解できないが、パワードスーツなしの人間を1チーム10人としたら3チームだろうな。」
「分け方は?」
「僕とリザード2で深部調査、君とリザード2で高所調査、田中さんとリザード1で周辺調査と拠点防衛だね。」
「なっ!私も深部調査に行きます!」
一条は落ち着いた様子で装備を全て格納し、ステルスを再起動すると仕立ての良いスーツ姿になると近付いて近くの椅子に座る。
「理由は?」
「私だけ安全なところに置かれる理由がありません!」
「指揮官は君だと聞いた。僕はオブザーバーだ。君に対しても意見は言える立場だと思っているが組織として君を失えないし、拠点であるここから君が遠く離れる理がない。当然の判断だろ?」
「それは、」
「桜の言い方が悪い。それにいきなりその3チームに別れるわけじゃないだろう。周辺調査は全員でやるべきなはずだ。その上で指示役と防衛要員は指揮官となる田中さんにお願いするわけだろ?」
「そう言ったが?」
「言葉がたりないんだよ。全く、桜は優秀だがチームワークというものがね。」
その時たーんという発砲音が2回響く。
途端にバタバタと外が慌ただしくなり、田中は外に駆け出そうとするが近くにいた一条がそっと止める。
手を触れているが透明のリザードの分が浮いたように見えている不思議な光景だ。
「こういう時は指揮官は慌てた姿は見せてはいけない。一条!」
一条は既に無線で話し始めていた。
「田中さんもここでミーティングしているから報告は私のテントでいい!まず何かわかっていることは?」
しかし報告を受ける前にテントの入り口が開き、タイトなデニムにワイシャツと黒のジレというおおよそ猟友会の人間が山に来る服と思えない格好のドレッドヘアーの20代後半の男が猟銃を片手に入って来た。
「おいおい。なんであんなわかりやすい偵察してる犬を追い払わないんだ!俺が確認したら5匹いたぞ。2匹は仕留めたが3匹は射程外に逃げたな。さては警察は銃の打ち方を知らねぇな。」
無遠慮につかつかと夏月に近づいて、至近距離の真正面に立ち
「誰だお前は?」
「東京で探偵をしている夏月桜だ。ここではオブザーバーとして参加することになった。」
「へー、俺は猟友会のメンバーで明田 火花(あきた ひばな)だ。火花でいい!」
癖の強い2人を知る一条は焦って仲を取り持とう口を挟む。
「火花、桜は今入ったばかりなんだがとても頼りになっ」
しかし2人は気にせず無視して話し続け、田中は完全に置いてけぼりでもう報告してくる部下を待っていた。
「なら、僕も桜でいいよ。猟友会はこの状況をどうするつもりだ?」
「知るかよ。俺のチームは今回のはやべぇから覚悟と腕のある奴以外は参加させねぇがな、ジジイ連中はいつもの狩りと同じだな。熊でも一頭狩ってやろうかくらいの軽い感じだ。ボケてんのかあいつらは!」
犬の狩りの危険度を熊より高く見積もっていた明田を夏月は内心驚きながら続ける。
「そうか。火花のチームは何人いる?」
「今回のに参加できるレベルは全部で20人だな。まだチームはいるけどな。」
「火花」
「桜」
「これは狩りなんてもんじゃない。種族間戦争だ。」
「これは狩りじゃねぇ。犬っころとの殺し合いだ!」
そこで無言の時間が続き、2人の言葉を聞いた田中と一条もじっと2人を見ている。
「君が猟友会の全体指揮をとるといい!」
「お前がここの指揮官やれよ!」
騒ぎの内容をまとめた田中の部下が報告に来たが、テントを開けたところで騒ぎの原因と知らない男を見比べて立ち尽くしていた。
「どうなんだ?さっきも言ったが犬だけじゃない。動物園から逃げ出した狼なんかもいるがはっきりと種類が、わかっているわけじゃない。調べる価値はあると思うがどうだ?」
田中は急いで反論する。
「私はまださっきの話にも納得していませんし、調査はこれから地元の猟友会の方を招いて計画していきます。個人で行うなんて無理で」
「猟友会の人間なら狩りのリスクは承知しているだろうがね。残念ながら猟友会レベルの装備で中に入れるなら見殺しだよ。」
「そんな言い方!」
「待ってくれ!」
呆れた様子で一条は続ける
「何故君たちは出会って間もないのにこうもぶつかるんだ。今回はどちらも正しい。桜、いくら君でも九重連山の広範囲を1人で調査はできないだろ?」
「まぁそうだね。リザードは何機あるんだ?」
「そうはないさ、君のフライングリザード、田中さん様の指揮官仕様モニターリザードと私が今装着している開発中の試作機だな名前はまだないがね。あとは警察に提供した警察の装備が付けられるリザードが5基ほどだな。」
「それは猟友会に貸せるのか?」
「無理ですね。」
「無理だろうな。」
「なら猟友会は入れないな。警察の選抜5人と私達で行動だな。」
「桜、さっきも言ったがこの規模は1人が8人になったからといって解決するもんではないよ。」
腕に仕込まれたスタンナイフを展開してみながら、夏月は静かに聞いている。
明らかに焦っている田中だが、古くからの付き合いの田中と一条の会話に思うように入っていけずにいる。
「だろうね。」
「君のプランは?」
「フライング以外のカタログスペックがわからないと性格には理解できないが、パワードスーツなしの人間を1チーム10人としたら3チームだろうな。」
「分け方は?」
「僕とリザード2で深部調査、君とリザード2で高所調査、田中さんとリザード1で周辺調査と拠点防衛だね。」
「なっ!私も深部調査に行きます!」
一条は落ち着いた様子で装備を全て格納し、ステルスを再起動すると仕立ての良いスーツ姿になると近付いて近くの椅子に座る。
「理由は?」
「私だけ安全なところに置かれる理由がありません!」
「指揮官は君だと聞いた。僕はオブザーバーだ。君に対しても意見は言える立場だと思っているが組織として君を失えないし、拠点であるここから君が遠く離れる理がない。当然の判断だろ?」
「それは、」
「桜の言い方が悪い。それにいきなりその3チームに別れるわけじゃないだろう。周辺調査は全員でやるべきなはずだ。その上で指示役と防衛要員は指揮官となる田中さんにお願いするわけだろ?」
「そう言ったが?」
「言葉がたりないんだよ。全く、桜は優秀だがチームワークというものがね。」
その時たーんという発砲音が2回響く。
途端にバタバタと外が慌ただしくなり、田中は外に駆け出そうとするが近くにいた一条がそっと止める。
手を触れているが透明のリザードの分が浮いたように見えている不思議な光景だ。
「こういう時は指揮官は慌てた姿は見せてはいけない。一条!」
一条は既に無線で話し始めていた。
「田中さんもここでミーティングしているから報告は私のテントでいい!まず何かわかっていることは?」
しかし報告を受ける前にテントの入り口が開き、タイトなデニムにワイシャツと黒のジレというおおよそ猟友会の人間が山に来る服と思えない格好のドレッドヘアーの20代後半の男が猟銃を片手に入って来た。
「おいおい。なんであんなわかりやすい偵察してる犬を追い払わないんだ!俺が確認したら5匹いたぞ。2匹は仕留めたが3匹は射程外に逃げたな。さては警察は銃の打ち方を知らねぇな。」
無遠慮につかつかと夏月に近づいて、至近距離の真正面に立ち
「誰だお前は?」
「東京で探偵をしている夏月桜だ。ここではオブザーバーとして参加することになった。」
「へー、俺は猟友会のメンバーで明田 火花(あきた ひばな)だ。火花でいい!」
癖の強い2人を知る一条は焦って仲を取り持とう口を挟む。
「火花、桜は今入ったばかりなんだがとても頼りになっ」
しかし2人は気にせず無視して話し続け、田中は完全に置いてけぼりでもう報告してくる部下を待っていた。
「なら、僕も桜でいいよ。猟友会はこの状況をどうするつもりだ?」
「知るかよ。俺のチームは今回のはやべぇから覚悟と腕のある奴以外は参加させねぇがな、ジジイ連中はいつもの狩りと同じだな。熊でも一頭狩ってやろうかくらいの軽い感じだ。ボケてんのかあいつらは!」
犬の狩りの危険度を熊より高く見積もっていた明田を夏月は内心驚きながら続ける。
「そうか。火花のチームは何人いる?」
「今回のに参加できるレベルは全部で20人だな。まだチームはいるけどな。」
「火花」
「桜」
「これは狩りなんてもんじゃない。種族間戦争だ。」
「これは狩りじゃねぇ。犬っころとの殺し合いだ!」
そこで無言の時間が続き、2人の言葉を聞いた田中と一条もじっと2人を見ている。
「君が猟友会の全体指揮をとるといい!」
「お前がここの指揮官やれよ!」
騒ぎの内容をまとめた田中の部下が報告に来たが、テントを開けたところで騒ぎの原因と知らない男を見比べて立ち尽くしていた。
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