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入社式、拝島の場合

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4月1日

緊張する。
集合時間の2時間も前に会社の前に着いてしまったので駅前のカフェで時間を潰しているけど、集合時間が近づくにつれてどんどん緊張してきた。
先輩や上司はどんな人だろうか。
それに何より同期とは仲良くなれるだろうか。横の繋がりってのは是非欲しい。大学時代の辛い時(就職活動)も横の繋がりには随分助けられた。

「よし、そろそろ行こう。」
レジでは支払いをしている人が1人ともう1人後ろに並んでいる人がいる。こんなに早く来てカフェに行ってて遅刻しただなんて笑えない。これ以上並ぶ前に自分も、並んでおこう。

外に出たら前に支払いを済ませた2人が、入社式の案内を持って挨拶をしていた。
それを見て、思わず声が出てしまった。

「あっ!一緒の会社だ!」
「「えっ!」」
2人とも驚いてこっちに顔を向けて3人で顔を見合わせて思わず皆で笑った。

「私は拝島です!今年から住永リフォームで働きます。」
「私は田中!一緒一緒!宜しくね!」
「和は山田!凄い緊張してたから同期の人が良い人そうで良かったー」
「「「会場まで一緒に行こう!」」」

それから会場までは、全員一度下見してカフェで時間を潰していたのでスムーズに辿り着いた。
物凄く行動パターンの似た2人と会えてこれからが楽しみになってきてとても嬉しく思えた。
中学の時も、高校の時も、「これからもずっと一緒だよ」と約束した人達とは割とすぐ疎遠になってしまった。
自分は集団意識が強い人間なのか、今所属している学校やバイト先の人が遊んだり、相談したりする中心になってしまう。
田舎から本社のある東京に出て来てしまったし、大学の友人達とも疎遠にならないようにしたいが自信はなかった。
なので、会社の同期とは絶対仲良くなりたかった!
「別々の現場になってもずっと仲良くしてね!」
「こちらこそ!横の繋がり欲しかったんだ!」
「新人が2人同じ現場はないと思うけど、いつか3人で同じところに行けたら楽しそう!絶対こらからも宜しくね!」

会場は本社の会議室で、辞令書と社章が渡されて、社長や数人の偉い人の話や給料の事を説明された。事務手続きなどは配られたプリントを見ながら現場で支給されるパソコンで作業できるようだ。

「以上で入社式を終了します。入ってきて下さい。」

10人のベテランっぽい人が入って来て前に立っている。

「この方達は現場で活躍している皆さんの先輩です。5年目以内の人ばかりなので年も近く相談もしやすいと思います。今日は期待の新人さん達を現場まで案内に来てくれました。」

新入社員より2人少ない!
ひょっとしたら3人は無理でも2人同じ現場ならあるかも!

「では呼ばれた方は前に来てください。」

司会の人に支持された先輩が大きな声で新入社員の名前を呼んでいく
「佐藤さんこちらへ」

「伊藤さんこちらへ」

そしてついに
「拝島さんこちらへ」

???

何故か司会の人に呼ばれた。
現場の人が忙しかったのかな?

司会のテーブルの前まで行くと、
「あなたには住永建吉建設への出向を命じます。こちらの住所の現場に明日より出勤して下さい。本日は名刺などを本社で作製し、当社での給与の手続きや出向の手続きを行います。よかったですね。うちはリフォーム会社ですが希望していた新築に携われますよ!」

えっ!
出航って、出向!?
ドラマで見たような大きい銀行以外でもあんの!
私、2日目から別の会社!?

「えっ何で、私ここの社員になるんじゃ、、、」
「もちろん!そうですよ!面接の時に新築にこだわりがあったみたいなんで、親会社の要請に1人出向させろと意向があるタイミングだったので、うちの所属のまま、そちらで働くことになります。大丈夫か確認はしていると聞いていますが?」

「えっと、、、はい。」

「あの?本当に大丈夫でしたか?」

「はい。わたし、面接でそう言いました。」


もうわからない事とか適当に答えるのやめよう。真面目に誠実に生きよう。わからない事はごめんなさい。わかりませんって言おう。

そんな反省をしていると次に呼ばれたのが、
「山田さん、田中さんこちらへ」

2人が同じ現場、1人が別の会社だから先輩社員が2人少なかったのか、、、

「拝島さん!別の会社になっても
「そうだよ!どこで働いていても凄く気が合うし一緒に頑張ろう!」


と言った人達とは、中学も高校も疎遠になってしまった私だから、気の合う人にそれを言われたくなかった、、、
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