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本編
第54話 ダブルデート?
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先程まで自身との会話に夢中となっていたマリンが足早にレジへと向かったことをゴリラは心配になっていた。
もしかしたら冷房が効き過ぎてお腹を冷やしてしまい、彼女はクレームを言う為、レジに向かったのかも知れないとまで考えていた。
とはいえ、それならあんなウキウキした表情でレジに向かうわけない。
じゃあ、なんだろう。
ゴリラの頭の中は、疑問でいっぱいになっている。
「ウホウホ?」
眉間にシワを寄せたゴリラが言う。
「あ、マリンさんですか? このバナナシフォンケーキを気に入ったようで、注文しに行かれました」
「ウホー! ウホ、ウホウホ!」
疑問と疑念が一気に解消され白い歯を見せる。
「……ふふっ、本当に美味しいですよね! この味を知ってしまったら、他のお店には行けそうにないです。あ、そういえば……」
「ウホ?」
「あ、いえ! 大したことではないのですが……このバナナシフォンケーキってわんこでも食べれたりできるのでしょうか? このメニュー表には、油、砂糖などは使っていませんと書かれているので、少しならわんこでも食べて大丈夫なのかなと思いまして」
「ウホ……ウホウホ」
「そうなんですか?! わんこ用のメニューがあるのですね! なんというか、最近のお店は凄いですね。驚きです」
「ウホウホ」
「なるほど、ここの店主さんが愛犬家なんですね。どうりでわんこの匂いがするわけです」
すももは鼻をヒクヒクさせる。
意図せず、ゴリラとすももが一対一のおしゃべりタイムを楽しんでいると幸せそうな顔をしたマリンが現れた。
その手には、通常とは違うカスタードクリームの盛られたバナナシフォンケーキがあった。
「うふふっ! 見て下さい! 店主さんが美味しそうに食べるからって、おまけしてくれました! これ自家製カスタードクリームらしいですよ」
もうすっかり、マリンもバナナシフォンケーキの虜となっている。
笑顔を弾けさせて楽しそうに会話するゴリラとすももへ自慢げにバナナシフォンケーキを見せている始末だ。
すもも、マリン。両名は完全に恋愛のことを忘れてしまっている。
その和やかな? 雰囲気にゴリラは笑みを浮かべた。
ほんの少しバナ友より、上の2人が自分の贔屓する店の名物を気に入ってくれたのだから、その喜びもひとしおだ。
「すももさん、シェアにません?」
「……い、いいのですか?」
「もちろんです! 私も先程あーんしてもらったので!」
「そうですか……そうでしたね。では、お言葉に甘えて」
「はい!」
「あ、あの……あーんは恥ずかしいです……」
「えー! 私はしたのに!」
「す、すみません。マリンさんを見ているとさんたろうを思い出してしまって……流れでやってしまいました。あ、でも! 犬と思ったわけではないですからね! わんこみたいに可愛いということです」
「くふっ、あははー! 大丈夫ですよー! そうですか! 私ってわんこみたいに可愛いんですね!」
「はい、なんか尻尾をブンブン振っている感じがします」
「わ、私が尻尾をブンブン……」
マリンは、バナナシフォンケーキがのった平皿をテーブルに置き、笑いを堪えている。
「だ、大丈夫ですか?」
すももはそれを不思議そうな顔で覗き込む。
再び近くで腰掛けるゴリラを置き去りにして、バナナシフォンケーキを頬張りなら楽しそうに会話をする2人。
本来の目的とは、全く違うが1頭と2人の間にはゆったりとした、でも、幸せな時間が流れていった。
☆☆☆
ゴリラが降りた電車内。
ここで、シフォンケーキばかりが撮られた写真フォルダを見て肩を落とす2人の成人女性の姿が見られましたとさ。
ウホウホ?
もしかしたら冷房が効き過ぎてお腹を冷やしてしまい、彼女はクレームを言う為、レジに向かったのかも知れないとまで考えていた。
とはいえ、それならあんなウキウキした表情でレジに向かうわけない。
じゃあ、なんだろう。
ゴリラの頭の中は、疑問でいっぱいになっている。
「ウホウホ?」
眉間にシワを寄せたゴリラが言う。
「あ、マリンさんですか? このバナナシフォンケーキを気に入ったようで、注文しに行かれました」
「ウホー! ウホ、ウホウホ!」
疑問と疑念が一気に解消され白い歯を見せる。
「……ふふっ、本当に美味しいですよね! この味を知ってしまったら、他のお店には行けそうにないです。あ、そういえば……」
「ウホ?」
「あ、いえ! 大したことではないのですが……このバナナシフォンケーキってわんこでも食べれたりできるのでしょうか? このメニュー表には、油、砂糖などは使っていませんと書かれているので、少しならわんこでも食べて大丈夫なのかなと思いまして」
「ウホ……ウホウホ」
「そうなんですか?! わんこ用のメニューがあるのですね! なんというか、最近のお店は凄いですね。驚きです」
「ウホウホ」
「なるほど、ここの店主さんが愛犬家なんですね。どうりでわんこの匂いがするわけです」
すももは鼻をヒクヒクさせる。
意図せず、ゴリラとすももが一対一のおしゃべりタイムを楽しんでいると幸せそうな顔をしたマリンが現れた。
その手には、通常とは違うカスタードクリームの盛られたバナナシフォンケーキがあった。
「うふふっ! 見て下さい! 店主さんが美味しそうに食べるからって、おまけしてくれました! これ自家製カスタードクリームらしいですよ」
もうすっかり、マリンもバナナシフォンケーキの虜となっている。
笑顔を弾けさせて楽しそうに会話するゴリラとすももへ自慢げにバナナシフォンケーキを見せている始末だ。
すもも、マリン。両名は完全に恋愛のことを忘れてしまっている。
その和やかな? 雰囲気にゴリラは笑みを浮かべた。
ほんの少しバナ友より、上の2人が自分の贔屓する店の名物を気に入ってくれたのだから、その喜びもひとしおだ。
「すももさん、シェアにません?」
「……い、いいのですか?」
「もちろんです! 私も先程あーんしてもらったので!」
「そうですか……そうでしたね。では、お言葉に甘えて」
「はい!」
「あ、あの……あーんは恥ずかしいです……」
「えー! 私はしたのに!」
「す、すみません。マリンさんを見ているとさんたろうを思い出してしまって……流れでやってしまいました。あ、でも! 犬と思ったわけではないですからね! わんこみたいに可愛いということです」
「くふっ、あははー! 大丈夫ですよー! そうですか! 私ってわんこみたいに可愛いんですね!」
「はい、なんか尻尾をブンブン振っている感じがします」
「わ、私が尻尾をブンブン……」
マリンは、バナナシフォンケーキがのった平皿をテーブルに置き、笑いを堪えている。
「だ、大丈夫ですか?」
すももはそれを不思議そうな顔で覗き込む。
再び近くで腰掛けるゴリラを置き去りにして、バナナシフォンケーキを頬張りなら楽しそうに会話をする2人。
本来の目的とは、全く違うが1頭と2人の間にはゆったりとした、でも、幸せな時間が流れていった。
☆☆☆
ゴリラが降りた電車内。
ここで、シフォンケーキばかりが撮られた写真フォルダを見て肩を落とす2人の成人女性の姿が見られましたとさ。
ウホウホ?
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