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本編
第51話 それぞれに進展
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時刻【18時30分】
ひまわりが咲き誇り、浴衣姿の人でごった返している通路付近。
山川すももと亀浦マリンが、バナナ色に光る誘導棒を片手に持ち案内をしながら会話をしていた。
2人の足元にいるさんたろうもバナナ色に光る首輪付けて見よう見まねで歩行者の案内をしている。
「あの……亀浦マリンさん」
「はい、なんでしょうか?」
「えーっと、その……亀浦マリンさんは」
「あ、マリンで大丈夫ですよ!」
「で、では、マリンさん」
「はい!」
「あの……マリンさんって、ゴリラ主任とお付き合いされているのでしょうか?」
「お、お付き合い!? ゴ、ゴリラさんと私がですか!?」
「は、はい。そんなに驚くことでしょうか? 浴衣も同じ柄ですし、傍から見たらそれくらいの距離感に見えていましたよ?」
「は、はぇぇぇー! そうなんですか! そうなんですね……やった」
「あ、そういう反応をするということは、まだそういう関係ではないんですね……ということは、私にもチャンスが……」
「えっ!?」
「あっ!」
まさかまさかの、マリンだけではなく、すもももゴリラのことを慕っていたのだ。
だが、恋愛というものを経験したことのないすももは、自分の気持ちが恋なのか、今の今までわからないでいた。
それが今、他の女性と仲良くするゴリラを見たことで、ようやく自分の気持ちに気付き始めたのである。
「そっかー……すももさんもゴリラさんが好きなんですねー……あはは」
「あ、いえ……好きとか、そのあんまりわからないのですが、マリンさんと一緒にいるゴリラ主任を見たら、なんか胸の辺りがもやもやしまして……」
「それが好きというものですよ!」
「そうなのですか?」
「そうです!」
「そうなんですね……やっぱり、私はゴリラ主任が好きだったんだ……えへへ。そっかぁ……これが好きって気持ちなんだ……」
すももは、頬をほんのり桃色に染め、柔らかい笑顔を浮かべている。
「可愛い……」
「えっ?」
「可愛いので、応援させて下さい!」
「私が可愛い? それに応援? ど、どういうことでしょうか? 私無愛想で可愛くはないですし、それに恋人というのは1人しかなれませんよね? というか、少し近いです……」
「あ、すみません! ついつい! ですが、可愛いものは可愛いのです!」
「そ、そうですか……」
「はい!」
「可愛いのは、その……わかりました。ですけど、恋人は1人しかなれませんよね?」
「そうですね。普通はそれでいいと思います。ですが、相手は博愛主義のゴリラさん。私も今までたくさんアピールしてきました。それでも一向に進展する気配がないのです。きっとゴリラさんの頭には恋愛の「れ」の字もありません! だから、私はすももさんも応援したいのです!」
「あの……それのどこに私を応援する理由があるのでしょうか?」
「あります! さすがのゴリラさんも私達2人で攻めれば、気付くはずです」
「……なるほど。意味は理解したのですが、少し希望的観測が過ぎるような……」
「細かいことは気にしないで下さい! 恋愛なんて自分の都合の良いように考えたもん勝ちですから!」
「は、はぁ……そういうものですか?」
「はい! そういうものです!」
同じ想いを抱く仲間? を見つけたマリンはやる気に満ち溢れていた。
勢いづくマリンに対して、終始押されっぱなしで口数の少ないすもも。
このタイプの違う2人が仲良くなるには、時間を要すると思えた。
だが、蓋を開けてみるとそんなことはなく、通行人や迷子対応をしながらも、互いに自然と笑みを浮かべ共通の想いゴリラであるゴリラの話に花を咲かせた。
☆☆☆
マリンとすももが意気投合していた最中。
公園の一番手前に設置されたバナナ色のテントが張られた運営のブース内。
イベントとのアナウンスや、進行を任された犬島犬太と猪狩誠が隣り合わせで席についていた。
「うん、やっぱり主任って何でもできるっすよね!」
犬太が出店で働いているゴリラを見ながら言う。
「犬太もできるだろう……何でも知ってるし……何でもできるし、素直だし……それにかっこいいしさ……」
犬太の一言に思わず本音をダダ漏れで応じる誠。
しかし、ゴリラに夢中となっている犬太には絶妙に聞こえない。
「えっ? 今、何かいいました?」
「な、何も無い!」
「よくわからないっすけど、怒っています……よね?」
「怒ってないから!」
こんなふうに真っすぐな2人らしいやり取りが繰り広げられる中。
後ろから声を掛ける人物がいた。
「うふふ、若いね~」
それは山川桃子108歳。
初々しい2人を目の当たりにして、口を挟たくなってしまい、声を掛けた……というのもあるが、本当は別の用があった。
「はい! これ」
桃子が差し出したのは、バナナにミツバチが留まっているアクセサリー真ん中で分かれる2つで1つの物だ。
「あ、えっ? 僕らにですか?」
「うん、そうよ~」
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ~! でも、お礼はあなた達の上司にね」
「えっ? どういうことでしょうか?」
誠が首を傾げる。
「ゴリラちゃんと熊主任さんからですって! あなた達、婚約したんでしょう? 本当は直接渡したかったみたいだけど、熊主任さん? はゴリラちゃん曰く、実家のお手伝いで忙しいらしくからってだって~」
「そうなんですか?」
「うん、そうよ~! あっ、あとゴリラちゃんも直接渡そうか悩んだみたいだけど、あの場で渡しちゃうと他の人にバレちゃうからって言ってたわね~」
桃子の言葉に、2人して肩を落としてため息をつく。
「バレてたんっすね……」
「うん、みたいだね……」
本人達は、色々と気づいていないが実はこの2人。
それぞれに尊敬するゴリラと熊主任に相談と報告をしていたのだ。
だから、バレて当然なのである。
そんな事を知る由もない彼らは、観念したように桃子からアクセサリーを受け取り、お互い身に付けた。
「に、似合ってるかな?」
「は、はい! と、とても似合っています!」
「いいね~! お幸せにね」
2人はとても幸せそうな表情で桃子の言葉に声を揃えて返事をした。
「「はい」」
ひまわりが咲き誇り、浴衣姿の人でごった返している通路付近。
山川すももと亀浦マリンが、バナナ色に光る誘導棒を片手に持ち案内をしながら会話をしていた。
2人の足元にいるさんたろうもバナナ色に光る首輪付けて見よう見まねで歩行者の案内をしている。
「あの……亀浦マリンさん」
「はい、なんでしょうか?」
「えーっと、その……亀浦マリンさんは」
「あ、マリンで大丈夫ですよ!」
「で、では、マリンさん」
「はい!」
「あの……マリンさんって、ゴリラ主任とお付き合いされているのでしょうか?」
「お、お付き合い!? ゴ、ゴリラさんと私がですか!?」
「は、はい。そんなに驚くことでしょうか? 浴衣も同じ柄ですし、傍から見たらそれくらいの距離感に見えていましたよ?」
「は、はぇぇぇー! そうなんですか! そうなんですね……やった」
「あ、そういう反応をするということは、まだそういう関係ではないんですね……ということは、私にもチャンスが……」
「えっ!?」
「あっ!」
まさかまさかの、マリンだけではなく、すもももゴリラのことを慕っていたのだ。
だが、恋愛というものを経験したことのないすももは、自分の気持ちが恋なのか、今の今までわからないでいた。
それが今、他の女性と仲良くするゴリラを見たことで、ようやく自分の気持ちに気付き始めたのである。
「そっかー……すももさんもゴリラさんが好きなんですねー……あはは」
「あ、いえ……好きとか、そのあんまりわからないのですが、マリンさんと一緒にいるゴリラ主任を見たら、なんか胸の辺りがもやもやしまして……」
「それが好きというものですよ!」
「そうなのですか?」
「そうです!」
「そうなんですね……やっぱり、私はゴリラ主任が好きだったんだ……えへへ。そっかぁ……これが好きって気持ちなんだ……」
すももは、頬をほんのり桃色に染め、柔らかい笑顔を浮かべている。
「可愛い……」
「えっ?」
「可愛いので、応援させて下さい!」
「私が可愛い? それに応援? ど、どういうことでしょうか? 私無愛想で可愛くはないですし、それに恋人というのは1人しかなれませんよね? というか、少し近いです……」
「あ、すみません! ついつい! ですが、可愛いものは可愛いのです!」
「そ、そうですか……」
「はい!」
「可愛いのは、その……わかりました。ですけど、恋人は1人しかなれませんよね?」
「そうですね。普通はそれでいいと思います。ですが、相手は博愛主義のゴリラさん。私も今までたくさんアピールしてきました。それでも一向に進展する気配がないのです。きっとゴリラさんの頭には恋愛の「れ」の字もありません! だから、私はすももさんも応援したいのです!」
「あの……それのどこに私を応援する理由があるのでしょうか?」
「あります! さすがのゴリラさんも私達2人で攻めれば、気付くはずです」
「……なるほど。意味は理解したのですが、少し希望的観測が過ぎるような……」
「細かいことは気にしないで下さい! 恋愛なんて自分の都合の良いように考えたもん勝ちですから!」
「は、はぁ……そういうものですか?」
「はい! そういうものです!」
同じ想いを抱く仲間? を見つけたマリンはやる気に満ち溢れていた。
勢いづくマリンに対して、終始押されっぱなしで口数の少ないすもも。
このタイプの違う2人が仲良くなるには、時間を要すると思えた。
だが、蓋を開けてみるとそんなことはなく、通行人や迷子対応をしながらも、互いに自然と笑みを浮かべ共通の想いゴリラであるゴリラの話に花を咲かせた。
☆☆☆
マリンとすももが意気投合していた最中。
公園の一番手前に設置されたバナナ色のテントが張られた運営のブース内。
イベントとのアナウンスや、進行を任された犬島犬太と猪狩誠が隣り合わせで席についていた。
「うん、やっぱり主任って何でもできるっすよね!」
犬太が出店で働いているゴリラを見ながら言う。
「犬太もできるだろう……何でも知ってるし……何でもできるし、素直だし……それにかっこいいしさ……」
犬太の一言に思わず本音をダダ漏れで応じる誠。
しかし、ゴリラに夢中となっている犬太には絶妙に聞こえない。
「えっ? 今、何かいいました?」
「な、何も無い!」
「よくわからないっすけど、怒っています……よね?」
「怒ってないから!」
こんなふうに真っすぐな2人らしいやり取りが繰り広げられる中。
後ろから声を掛ける人物がいた。
「うふふ、若いね~」
それは山川桃子108歳。
初々しい2人を目の当たりにして、口を挟たくなってしまい、声を掛けた……というのもあるが、本当は別の用があった。
「はい! これ」
桃子が差し出したのは、バナナにミツバチが留まっているアクセサリー真ん中で分かれる2つで1つの物だ。
「あ、えっ? 僕らにですか?」
「うん、そうよ~」
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ~! でも、お礼はあなた達の上司にね」
「えっ? どういうことでしょうか?」
誠が首を傾げる。
「ゴリラちゃんと熊主任さんからですって! あなた達、婚約したんでしょう? 本当は直接渡したかったみたいだけど、熊主任さん? はゴリラちゃん曰く、実家のお手伝いで忙しいらしくからってだって~」
「そうなんですか?」
「うん、そうよ~! あっ、あとゴリラちゃんも直接渡そうか悩んだみたいだけど、あの場で渡しちゃうと他の人にバレちゃうからって言ってたわね~」
桃子の言葉に、2人して肩を落としてため息をつく。
「バレてたんっすね……」
「うん、みたいだね……」
本人達は、色々と気づいていないが実はこの2人。
それぞれに尊敬するゴリラと熊主任に相談と報告をしていたのだ。
だから、バレて当然なのである。
そんな事を知る由もない彼らは、観念したように桃子からアクセサリーを受け取り、お互い身に付けた。
「に、似合ってるかな?」
「は、はい! と、とても似合っています!」
「いいね~! お幸せにね」
2人はとても幸せそうな表情で桃子の言葉に声を揃えて返事をした。
「「はい」」
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