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本編
第45話 ゴリラVSバッファロー
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日本有数の大手電機メーカー本社、正門前。
この場所で、まるで弁慶のように仁王立ちするゴリラの姿があった。
「ウホゥ!」
彼の白と紺色のカラーリングの作業服は、もう所々破れてかなり汚れた状態となっていた。
それは突然現れたバッファローの群れが、目の前に街を愛すべき大阪の街並みを、物凄い勢いで全てを破壊し、勤めている職場まで何頭も突撃してきていたからだ。
「ウホッ!」
ゴリラはグルングルンと腕を回す。
その横には、何百という気を失ったバッファローが積み上げられていた。
これは、霊長類最強のゴリラが本気になり、自身の会社の敷地内入ろうしてくる無数のバッファローの群れをその背筋推定400kg超えと握力500kgの強さを活かして、バッタバッタと薙ぎ倒していた結果だ。
だが、いくら彼が強くてもかなりの苦戦を強いられていた。
その証拠に綺麗にセットした毛並みも乱れている。
普段のゴリラなら身だしなみや清潔感を重んじるのでこんなことはありえない。
どんな時でも乱れないようスマートに対処するはずなのに……。
その余裕すらなくなっていた。
「ウホ……ウホ……」
ゴリラは何度も押し寄せてくる群れのせいで息が上がり、膝を着きそうになる。
もはや、通い慣れた街並みは変わり果てており、電柱は折れて電気の供給は止まっていた。
それに主要道路もその圧倒的物量により、亀裂や地割れが起きて使用することさえ出来なくなっていたのだ。
同じように、電波塔もやられてしまい、頼りのスマホも使い物にならない。
また、駅や近くのコンビニ、スーパーなども群れの攻撃により、大破し皆ゴリラらの勤めている会社へと避難していた。
「主任っ! 熊さんと連携して、裏門と他にバリケードが必要そうなところには、10tトラックを並べてきました! 備蓄関係は雉島課長が対応してくれています」
元気よく声を掛けるのは、ゴリラ部下の糸目とあるゆるふわパーマが特徴の犬嶋犬太。
犬太もまた、ゴリラと熊主任、雉島課長代理と連携しバッファローの群れから、皆を守ろうと奮起していた。
「ウホウホ!」
「い、いえ! 僕らの方こそ……すみませんっす! 主任に一番辛い役目を――」
――目に涙をためて自分の不甲斐なさ、人間の生物としての弱さを謝罪しようとした時。
ゴリラは、大きな黒い手でそっと、犬太の口を塞いだ。
そして、慈愛スマイル……ゴリラスマイルを向けた。
「ウホ!」
その無邪気かつ、自分の死地を決めた武士のような清々しい表情に犬太は心を打たれた。
「――しゅ、主任……僕は……僕らは……」
「ウホ」
「で、でも!」
「ウホウホ!」
「では、必ず……必ず戻って来てください!」
「ウホ!」
「約束っすよ!」
「ウホウホ」
「――っ! ぼ、僕らは10号棟に避難していますので!」
犬太は肩を震わせて唇を噛み締め、上司であるゴリラを信じて去っていく。
その背中を見て彼は安堵していた。
きっとこれで大丈夫だと。
あとは、自分が彼らを守る為に、責務を全うするのみ。
この時の為に自分がこの世界に来たのだと。
自身の存在意義を見出していた。
「……ウホッ!」
グッと拳を握り締めて、覚悟を決めた。
砂埃を巻き上げて、足音で地面を揺らすバッファローの群れが徐々に近付いてくる。
それに負けないように、自分を奮い立たせる為に、ドラミングで鼓舞して迎え撃った。
「ウホウホ!」
「ヌォォォォオ!」
――その瞬間。
ゴリラの意識は途絶えた。
6月22日(土)
天気【快晴 最低気温19℃ 最高気温25℃】
時刻【7時00分】
「ウホウホ」
彼が目を覚ますと、見慣れたいつもの寝室。
キングサイズでふかふかベッド。
真っ白な壁に、窓にはマスカット色の生地にバナナの刺繍を施されたカーテンが揺れ、横にはバナ友の皆がくれたバナナの抱き枕がある。
つぶらな瞳を細めて唇に手を当てながら、今一度、周囲の状況をキョロキョロと視線を動かして確認する。
「ウ、ウホ?! ウホウホ……」
やはり、知っている部屋、間違いなく自分の寝室。
「ウホウホ……」
その光景を目の当たりにして、ゴリラは理解していく。
そう、この一連の出来事が夢だったのだ。
「ウホゥ……」
彼は胸を撫で下ろして、さっきまで出来事が夢で良かったと、心をから安心した――。
☆☆☆
――その後。
何故かいつもよりも、多めにバナナを配るゴリラの姿と、ジムの中で不思議がる亀浦マリンを前にし、必死にトレーニングする姿が目撃されましたとさ。
ウホウホー!
この場所で、まるで弁慶のように仁王立ちするゴリラの姿があった。
「ウホゥ!」
彼の白と紺色のカラーリングの作業服は、もう所々破れてかなり汚れた状態となっていた。
それは突然現れたバッファローの群れが、目の前に街を愛すべき大阪の街並みを、物凄い勢いで全てを破壊し、勤めている職場まで何頭も突撃してきていたからだ。
「ウホッ!」
ゴリラはグルングルンと腕を回す。
その横には、何百という気を失ったバッファローが積み上げられていた。
これは、霊長類最強のゴリラが本気になり、自身の会社の敷地内入ろうしてくる無数のバッファローの群れをその背筋推定400kg超えと握力500kgの強さを活かして、バッタバッタと薙ぎ倒していた結果だ。
だが、いくら彼が強くてもかなりの苦戦を強いられていた。
その証拠に綺麗にセットした毛並みも乱れている。
普段のゴリラなら身だしなみや清潔感を重んじるのでこんなことはありえない。
どんな時でも乱れないようスマートに対処するはずなのに……。
その余裕すらなくなっていた。
「ウホ……ウホ……」
ゴリラは何度も押し寄せてくる群れのせいで息が上がり、膝を着きそうになる。
もはや、通い慣れた街並みは変わり果てており、電柱は折れて電気の供給は止まっていた。
それに主要道路もその圧倒的物量により、亀裂や地割れが起きて使用することさえ出来なくなっていたのだ。
同じように、電波塔もやられてしまい、頼りのスマホも使い物にならない。
また、駅や近くのコンビニ、スーパーなども群れの攻撃により、大破し皆ゴリラらの勤めている会社へと避難していた。
「主任っ! 熊さんと連携して、裏門と他にバリケードが必要そうなところには、10tトラックを並べてきました! 備蓄関係は雉島課長が対応してくれています」
元気よく声を掛けるのは、ゴリラ部下の糸目とあるゆるふわパーマが特徴の犬嶋犬太。
犬太もまた、ゴリラと熊主任、雉島課長代理と連携しバッファローの群れから、皆を守ろうと奮起していた。
「ウホウホ!」
「い、いえ! 僕らの方こそ……すみませんっす! 主任に一番辛い役目を――」
――目に涙をためて自分の不甲斐なさ、人間の生物としての弱さを謝罪しようとした時。
ゴリラは、大きな黒い手でそっと、犬太の口を塞いだ。
そして、慈愛スマイル……ゴリラスマイルを向けた。
「ウホ!」
その無邪気かつ、自分の死地を決めた武士のような清々しい表情に犬太は心を打たれた。
「――しゅ、主任……僕は……僕らは……」
「ウホ」
「で、でも!」
「ウホウホ!」
「では、必ず……必ず戻って来てください!」
「ウホ!」
「約束っすよ!」
「ウホウホ」
「――っ! ぼ、僕らは10号棟に避難していますので!」
犬太は肩を震わせて唇を噛み締め、上司であるゴリラを信じて去っていく。
その背中を見て彼は安堵していた。
きっとこれで大丈夫だと。
あとは、自分が彼らを守る為に、責務を全うするのみ。
この時の為に自分がこの世界に来たのだと。
自身の存在意義を見出していた。
「……ウホッ!」
グッと拳を握り締めて、覚悟を決めた。
砂埃を巻き上げて、足音で地面を揺らすバッファローの群れが徐々に近付いてくる。
それに負けないように、自分を奮い立たせる為に、ドラミングで鼓舞して迎え撃った。
「ウホウホ!」
「ヌォォォォオ!」
――その瞬間。
ゴリラの意識は途絶えた。
6月22日(土)
天気【快晴 最低気温19℃ 最高気温25℃】
時刻【7時00分】
「ウホウホ」
彼が目を覚ますと、見慣れたいつもの寝室。
キングサイズでふかふかベッド。
真っ白な壁に、窓にはマスカット色の生地にバナナの刺繍を施されたカーテンが揺れ、横にはバナ友の皆がくれたバナナの抱き枕がある。
つぶらな瞳を細めて唇に手を当てながら、今一度、周囲の状況をキョロキョロと視線を動かして確認する。
「ウ、ウホ?! ウホウホ……」
やはり、知っている部屋、間違いなく自分の寝室。
「ウホウホ……」
その光景を目の当たりにして、ゴリラは理解していく。
そう、この一連の出来事が夢だったのだ。
「ウホゥ……」
彼は胸を撫で下ろして、さっきまで出来事が夢で良かったと、心をから安心した――。
☆☆☆
――その後。
何故かいつもよりも、多めにバナナを配るゴリラの姿と、ジムの中で不思議がる亀浦マリンを前にし、必死にトレーニングする姿が目撃されましたとさ。
ウホウホー!
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