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第1話 キャベツから生まれたひよこたち
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大阪に住まいを構える山田家。
ここで、キャベツから生まれた摩訶不思議な生物たちが暮らしていた。
その見た目は、とうもろこし色をしており、ふわふわモフモフボディにオレンジ色の小さなくちばし、手足は何かを掴む時にだけ出てくるひよこのような生物たちだ。
彼らがいうには、ひよこらしい。
キャベツから生まれたというのに。
そんな不思議生物たちは、冷蔵庫の前で大好物であるプリンを取り合っていた。
ふわふわモフモフボディをぶつけ合っている。
「これは、ぴよちゃんのぺよ」
「違うぺよ! これはぴよちゃんのぺよ」
「ぴよ郎、ぴよ助、喧嘩はやめるぺよよ!」
3匹が頭上に掲げたお皿の上で、プリンがたぷんたぷん揺れる。
「返してぺよー!」
「無理ぺよ! ぴよちゃん、ちゃんと名前書いたぺよ」
ちなみに、ややこしいが3匹全員の一人称は”ぴよちゃん”だ。
「ぺよ、書いてるとか嘘ぺよー! プリンに名前とか書けないぺよー!」
「ち、違うぺよ! 容れ物に書いてたぺよ! ぴよ郎って書いたぺよ!」
2本の毛を揺らすひよ郎の言う通り、あのぷっちん出来る容器には、ちゃんと名前が書いたあった。
とはいえ、もうその容器は食器棚の横にあるゴミ箱の中。この状況では取りに行くことも、確認することもできない。
「そんなの知らないぺよー! だったら、証拠見せてぺよー!」
「そんなの無理ぺよー! 今、手を離したら絶対、ぴよ助食べちゃうぺよ!」
「あたり前ぺよ! だってこれはぴよちゃんのんぺよ!」
「もういい加減にするぺよよー!」
もみくちゃになっていく、とうもろこし色の塊たち。
こうなると、一見どのひよこも同じように見えるのだが、実はちゃんと見分け方がある。
それは、頭の上に生えているピンと立っている毛の数だ。
1本なら、長男で優しいしっかり者のぴよ太。
2本なら、次男で頭が良く要領のいいぴよ郎。
3本なら、三男で甘えん坊な泣き虫なぴよ助。
といった感じに。
そんな彼らと、ここに住まいを構える山田夫妻の出逢いは、旦那さんが買ってきたキャベツの中にひよこたちが、居たことがきっかけだ。
☆☆☆
――とある日の夕食前、キッチンにて。
人工大理石で出来たアイランドキッチンの上に置かれる色鮮やかな春キャベツ。
その中央に光り輝く、とうもろこし色の塊が3つあった。
塊は呼吸をするたびに、その綿毛のようにふわふわでモフモフ毛が揺らしている。
『ぷすぃー』
『ぷすぅー』
『ぷすすぅー』
目の前で寝息を立てる見たことのない? いや、見たことはある。
その姿はどう見てもひよこなのだから。
だが、理解が追いつかない光景に旦那さんの健二は、キャベツの切れ端を持ちながら慌てふためく。
『お、おい! ちょ、ちょっときてくれ!』
対して、リビングで新作アプリに夢中な奥さんの麻里は、ソファーで寝そべり、スマホ片手におやすみを満喫している。
『どうしたの? キャベツを割くくらい簡単でしょ?』
キッチンで起きている良くわからない状況に気付くわけもなく、料理に慣れない彼が大袈裟に反応していると思っていた。
それに今日の夕飯担当は健二だ。
麻里は、不器用でも出来るようにとキャベツを割いて作る豚平焼きを献立に取り入れていたのだ。
尚更、構う気になれないでいた。
彼はリビングから来ない彼女を必死の形相で説得する。
『ち、違うって! いいから』
『わかったわよー! ちょっと待って』
麻里はその必死さに加えて、いつもと違う表情にスマホ片手を片手に持ちリビングへと向かった。
☆☆☆
アイランドキッチンの前にて。
ここに来た彼女は、気だるそうな表情で健二を見つていた。
それもそのはず、キャベツを割くことも難しいのかと呆れていたからだ。
その上、新作アプリゲームのオープニングアニメを見ていたことも関係している。
『で、どうしたの? せっかく良いシーンだったのにー』
『いいから、見てくれって! ほら』
そんな麻里の態度に構うことなく、彼はキッチンの上で、目を覚まし小躍りしているひよこ? らしき摩訶不思議生物たちを指差した。
すると、彼らは小躍りをやめて、ふわふわモフモフの胴体から、ぴょこんと出てきた小さな手らしきもので応じる。
『ぴよちゃんぺよ!』
『同じくぴよちゃんぺよ!』
『ぺよ! 同じくぴよちゃんぺよ!』
『えっ――』
挨拶をしてくる3匹を前にして、固まる麻里。
そして、この後。
このあり得ない光景に絶句するか、もしくは叫び声を上げるかに思えたが、彼女は驚くことなく「か……可愛い。なにこれ? いや、なにこの子たちは……えっ、飼おう」と言い始め。
対して、始めこそ「何かわからないし、何処かに連絡した方が……」と渋っていた健二も、彼らの可愛さと、麻里の熱量に負けて「じゃあ、飼おう」という結論になった。
――こうして、いつの間にかひよこたちは、この山田家の家族となり、現在に至る。
☆☆☆
冷蔵庫の前で、いつまで経っても争いをやめない2匹に声を掛けた。
ふわふわモフモフの胴体から「ぴょこんと」出る小さな手。
「じゃあ、わかったぺよ!」
ぴよ太の一声にプリンを頭上に抱えたまま固まるぴよ郎。
「ぺよ?」
それと同じように固まるぴよ助。
「ぺよ?」
「ぴよちゃんのをあげるから、2人とも仲良くするぺよ」
その提案に2匹は顔見合わせる。
「ペ、ぺよ……いいぺよか? でも――」
「――ぺよぺよ……ぴよ太の分なくなっちゃうぺよよ?」
「いいぺよ! ぴよちゃんのはまた今度パパさんとママさんにお願いするぺよ」
長男ぴよ太の優しさ溢れる一言に心を打たれるぴよ郎とぴよ助。
その目からは涙が勢いよく出ている。
「ぺ、ペよぉぉー!」
「ペよぉぉぉー!」
だが、その瞬間――。
2匹の頭上から、ぷるぷるの物体が落る。
その物体を目で追う3匹。
「ぺ、ぺよ」
「ぺよ……」
「ぺよ……?」
ゆっくりと。
そして、確実にフローリングへと近付いていく。
「ぽちょん」
音が響く。
それは無情な現実。
ぷるぷるとした、可愛さ溢れる外見も、キャラメル色とカスタード色の心躍るコントラストも。
もう見る影もない。
フローリングで無惨な姿となった大好物プリン。
そして、コンプレッサーの音が聞こえる冷蔵庫前に、倒れ込むとうもろこし色の3匹。
だが、3匹は何とか立ち上がった。
しかし、プリンを取り合っていた次男ぴよ郎は、プリンだったものを見つめて打ちひしがれ。
「ぴよちゃんの……プリンが」
同じく取り合っていた三男のぴよ助は、プリンだったものを前に号泣。
「違うぺよ、ひよ郎のんじゃないぺよ……ぴよちゃんのんペよぉぉぉー!」
そんな兄弟を前にしたせいで、しょんぼりとする長男のぴよ太。
「ぺよ……」
――冷蔵庫の前で重苦しい雰囲気が漂う中。
ぴよ太にいい案が浮かんだ。
それは単純だが、みんな幸せになれる魔法の言葉。
「ぴよちゃんの分をみんなでわけわけするぺよ!」
この言葉を聞いたことで、打ちひしがれていたぴよ郎も、号泣していたぴよ助も泣き止み。
みんなで、1つのプリンをわけわけしましたとさ。
ぺよぺよ
―――――――――――――――――――――――
作者のほしのしずくです。
まずは、第一話を最後まで読んで頂きありがとうございます。
実はこのお話、小説を書く前に色々と妄想した結果生まれたキャラクターたちです。
読んだ方に幸せが訪れますように。
引き続き田野金フェ頂けると嬉しいです。
ここで、キャベツから生まれた摩訶不思議な生物たちが暮らしていた。
その見た目は、とうもろこし色をしており、ふわふわモフモフボディにオレンジ色の小さなくちばし、手足は何かを掴む時にだけ出てくるひよこのような生物たちだ。
彼らがいうには、ひよこらしい。
キャベツから生まれたというのに。
そんな不思議生物たちは、冷蔵庫の前で大好物であるプリンを取り合っていた。
ふわふわモフモフボディをぶつけ合っている。
「これは、ぴよちゃんのぺよ」
「違うぺよ! これはぴよちゃんのぺよ」
「ぴよ郎、ぴよ助、喧嘩はやめるぺよよ!」
3匹が頭上に掲げたお皿の上で、プリンがたぷんたぷん揺れる。
「返してぺよー!」
「無理ぺよ! ぴよちゃん、ちゃんと名前書いたぺよ」
ちなみに、ややこしいが3匹全員の一人称は”ぴよちゃん”だ。
「ぺよ、書いてるとか嘘ぺよー! プリンに名前とか書けないぺよー!」
「ち、違うぺよ! 容れ物に書いてたぺよ! ぴよ郎って書いたぺよ!」
2本の毛を揺らすひよ郎の言う通り、あのぷっちん出来る容器には、ちゃんと名前が書いたあった。
とはいえ、もうその容器は食器棚の横にあるゴミ箱の中。この状況では取りに行くことも、確認することもできない。
「そんなの知らないぺよー! だったら、証拠見せてぺよー!」
「そんなの無理ぺよー! 今、手を離したら絶対、ぴよ助食べちゃうぺよ!」
「あたり前ぺよ! だってこれはぴよちゃんのんぺよ!」
「もういい加減にするぺよよー!」
もみくちゃになっていく、とうもろこし色の塊たち。
こうなると、一見どのひよこも同じように見えるのだが、実はちゃんと見分け方がある。
それは、頭の上に生えているピンと立っている毛の数だ。
1本なら、長男で優しいしっかり者のぴよ太。
2本なら、次男で頭が良く要領のいいぴよ郎。
3本なら、三男で甘えん坊な泣き虫なぴよ助。
といった感じに。
そんな彼らと、ここに住まいを構える山田夫妻の出逢いは、旦那さんが買ってきたキャベツの中にひよこたちが、居たことがきっかけだ。
☆☆☆
――とある日の夕食前、キッチンにて。
人工大理石で出来たアイランドキッチンの上に置かれる色鮮やかな春キャベツ。
その中央に光り輝く、とうもろこし色の塊が3つあった。
塊は呼吸をするたびに、その綿毛のようにふわふわでモフモフ毛が揺らしている。
『ぷすぃー』
『ぷすぅー』
『ぷすすぅー』
目の前で寝息を立てる見たことのない? いや、見たことはある。
その姿はどう見てもひよこなのだから。
だが、理解が追いつかない光景に旦那さんの健二は、キャベツの切れ端を持ちながら慌てふためく。
『お、おい! ちょ、ちょっときてくれ!』
対して、リビングで新作アプリに夢中な奥さんの麻里は、ソファーで寝そべり、スマホ片手におやすみを満喫している。
『どうしたの? キャベツを割くくらい簡単でしょ?』
キッチンで起きている良くわからない状況に気付くわけもなく、料理に慣れない彼が大袈裟に反応していると思っていた。
それに今日の夕飯担当は健二だ。
麻里は、不器用でも出来るようにとキャベツを割いて作る豚平焼きを献立に取り入れていたのだ。
尚更、構う気になれないでいた。
彼はリビングから来ない彼女を必死の形相で説得する。
『ち、違うって! いいから』
『わかったわよー! ちょっと待って』
麻里はその必死さに加えて、いつもと違う表情にスマホ片手を片手に持ちリビングへと向かった。
☆☆☆
アイランドキッチンの前にて。
ここに来た彼女は、気だるそうな表情で健二を見つていた。
それもそのはず、キャベツを割くことも難しいのかと呆れていたからだ。
その上、新作アプリゲームのオープニングアニメを見ていたことも関係している。
『で、どうしたの? せっかく良いシーンだったのにー』
『いいから、見てくれって! ほら』
そんな麻里の態度に構うことなく、彼はキッチンの上で、目を覚まし小躍りしているひよこ? らしき摩訶不思議生物たちを指差した。
すると、彼らは小躍りをやめて、ふわふわモフモフの胴体から、ぴょこんと出てきた小さな手らしきもので応じる。
『ぴよちゃんぺよ!』
『同じくぴよちゃんぺよ!』
『ぺよ! 同じくぴよちゃんぺよ!』
『えっ――』
挨拶をしてくる3匹を前にして、固まる麻里。
そして、この後。
このあり得ない光景に絶句するか、もしくは叫び声を上げるかに思えたが、彼女は驚くことなく「か……可愛い。なにこれ? いや、なにこの子たちは……えっ、飼おう」と言い始め。
対して、始めこそ「何かわからないし、何処かに連絡した方が……」と渋っていた健二も、彼らの可愛さと、麻里の熱量に負けて「じゃあ、飼おう」という結論になった。
――こうして、いつの間にかひよこたちは、この山田家の家族となり、現在に至る。
☆☆☆
冷蔵庫の前で、いつまで経っても争いをやめない2匹に声を掛けた。
ふわふわモフモフの胴体から「ぴょこんと」出る小さな手。
「じゃあ、わかったぺよ!」
ぴよ太の一声にプリンを頭上に抱えたまま固まるぴよ郎。
「ぺよ?」
それと同じように固まるぴよ助。
「ぺよ?」
「ぴよちゃんのをあげるから、2人とも仲良くするぺよ」
その提案に2匹は顔見合わせる。
「ペ、ぺよ……いいぺよか? でも――」
「――ぺよぺよ……ぴよ太の分なくなっちゃうぺよよ?」
「いいぺよ! ぴよちゃんのはまた今度パパさんとママさんにお願いするぺよ」
長男ぴよ太の優しさ溢れる一言に心を打たれるぴよ郎とぴよ助。
その目からは涙が勢いよく出ている。
「ぺ、ペよぉぉー!」
「ペよぉぉぉー!」
だが、その瞬間――。
2匹の頭上から、ぷるぷるの物体が落る。
その物体を目で追う3匹。
「ぺ、ぺよ」
「ぺよ……」
「ぺよ……?」
ゆっくりと。
そして、確実にフローリングへと近付いていく。
「ぽちょん」
音が響く。
それは無情な現実。
ぷるぷるとした、可愛さ溢れる外見も、キャラメル色とカスタード色の心躍るコントラストも。
もう見る影もない。
フローリングで無惨な姿となった大好物プリン。
そして、コンプレッサーの音が聞こえる冷蔵庫前に、倒れ込むとうもろこし色の3匹。
だが、3匹は何とか立ち上がった。
しかし、プリンを取り合っていた次男ぴよ郎は、プリンだったものを見つめて打ちひしがれ。
「ぴよちゃんの……プリンが」
同じく取り合っていた三男のぴよ助は、プリンだったものを前に号泣。
「違うぺよ、ひよ郎のんじゃないぺよ……ぴよちゃんのんペよぉぉぉー!」
そんな兄弟を前にしたせいで、しょんぼりとする長男のぴよ太。
「ぺよ……」
――冷蔵庫の前で重苦しい雰囲気が漂う中。
ぴよ太にいい案が浮かんだ。
それは単純だが、みんな幸せになれる魔法の言葉。
「ぴよちゃんの分をみんなでわけわけするぺよ!」
この言葉を聞いたことで、打ちひしがれていたぴよ郎も、号泣していたぴよ助も泣き止み。
みんなで、1つのプリンをわけわけしましたとさ。
ぺよぺよ
―――――――――――――――――――――――
作者のほしのしずくです。
まずは、第一話を最後まで読んで頂きありがとうございます。
実はこのお話、小説を書く前に色々と妄想した結果生まれたキャラクターたちです。
読んだ方に幸せが訪れますように。
引き続き田野金フェ頂けると嬉しいです。
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