42 / 49
異世界へ
第42話 王命
しおりを挟む
あの後。
王国へと戻った私は不貞腐れる2人を諫めて仲直りさせて、国王への報告の為、王城へと赴いていた。
そして、謁見の間にて。
私は国王である父が鎮座する豪華絢爛な椅子の隣に立ち白銀の騎士団団長であるコンラッド様、副団長のガイアス様が深淵の森で体験した出来事を報告していた。
「――以上が、深淵の森で我々が目にしてきた内容となります」
「うむ、報告ご苦労。コンラッド卿よ、下がってよいぞ」
国王の威厳漂う声が響く。
「労いのお言葉ありがとうございます」
コンラッド様は、真剣な表情でそう告げる。
そして、クルリと振り返り、二、三歩先で控えているガイアス様の隣へと歩いていった。
国王は少し考える素振りを見せると口を開いた。
「コンラッド卿、ガイアス卿よ。そなたらに真理の山へ行くことを命ずる」
その命令を耳にした瞬間。
私は反射的に言葉を発していた。
王女としてではなく、娘として。
「お父様! それはあんまりにも――」
私が慌てるのは当然である。
深淵の森の序盤で騎士団の半数にあたる以上の脱落者を生み出してしまったのだ。
それが真理の山となってくると、国の為に死んでくれと言っているようなものと変わらない。
その上、それを2人でなどを口にするなど、常軌を逸している。
そもそも貴族のたちのやっかみや批判を無くす為に、コンラッド様率いる白銀の騎士団を危険と分かっている深淵の森へと向かわせたというのに。
「ふふっ、大丈夫だ。シャルルよ! そう慌てるでない。余にも考えがある」
私の心配していることを見透かしているようで、国王は柔らかい笑みを浮かべると、どういう条件下で探索するのか提示してきた。
その条件は3つ。
1つ、命を第一優先とすること。
2つ、森の中で何が起きているのか把握すること。
3つ、私、シャルル・ロア・ラングドシャを一緒に連れて行くこと。
「えっ!? 私がご一緒しても宜しいのですか?」
「シャル、そなたは稀有なスキル【転移】を持っておる。それに聖獣も引き連れておる。その上、この猛者2人と引けを取らぬ実力の持ち主だ。王女であること以外には、そなた以外に適任者はおらぬだろう」
「そうですか……」
「うむ、それにだ!」
「なんでしょう?」
「今回のようにだな、勝手に抜け出されては、余も肝が冷える……王宮内どころか、国民からも意見書が届いたくらいだ」
「す、すみません。お父様」
「よい! 余は誇らしいくらいだ。ここまで実の娘が好かれているのはな」
「は、はい、ありがとうございます」
「ただし、数名の騎士団は連れていくことだ。これは王女であるそなたの護衛だ」
「お父様……それは先程発言されていたこととは、矛盾されるのでは……」
「ふふっ、矛盾か……そうではあるな……これは娘を心配する父としてのお節介……国王である余ができる最大級の気遣いだ。まぁ、それにだ。そなたを慕う国民からすると、これくらいはせんと納得してくれんだろう。とはいえ、意見書はまた届くだろうがな……」
「そこまで、考えてのことでしたのでしたか……。声を荒げてしまい申し訳ありません。その色々とお気遣いありがとうございます」
「気にするでない! ま、コンラッド卿に任せておけば、特に問題はなかろうしな!」
「はい、この命に代えても、お守り致します」
「はははっ! あの優しさに溢れた子がそのような目つきになるとはな……だが、しっかり生きて守るのが貴殿の務めだ。必ず生きて戻るようにな。でなければ、余の娘が悲しむことになる」
「ははっ!」
「うむ、ガイアス卿も頼んだぞ! コンラッド卿が無茶なことをせんように、見てやってくれ」
「はい! この私にお任せ下さい」
「うむ! 良き返事だ。では、また報告を待っておる」
王国へと戻った私は不貞腐れる2人を諫めて仲直りさせて、国王への報告の為、王城へと赴いていた。
そして、謁見の間にて。
私は国王である父が鎮座する豪華絢爛な椅子の隣に立ち白銀の騎士団団長であるコンラッド様、副団長のガイアス様が深淵の森で体験した出来事を報告していた。
「――以上が、深淵の森で我々が目にしてきた内容となります」
「うむ、報告ご苦労。コンラッド卿よ、下がってよいぞ」
国王の威厳漂う声が響く。
「労いのお言葉ありがとうございます」
コンラッド様は、真剣な表情でそう告げる。
そして、クルリと振り返り、二、三歩先で控えているガイアス様の隣へと歩いていった。
国王は少し考える素振りを見せると口を開いた。
「コンラッド卿、ガイアス卿よ。そなたらに真理の山へ行くことを命ずる」
その命令を耳にした瞬間。
私は反射的に言葉を発していた。
王女としてではなく、娘として。
「お父様! それはあんまりにも――」
私が慌てるのは当然である。
深淵の森の序盤で騎士団の半数にあたる以上の脱落者を生み出してしまったのだ。
それが真理の山となってくると、国の為に死んでくれと言っているようなものと変わらない。
その上、それを2人でなどを口にするなど、常軌を逸している。
そもそも貴族のたちのやっかみや批判を無くす為に、コンラッド様率いる白銀の騎士団を危険と分かっている深淵の森へと向かわせたというのに。
「ふふっ、大丈夫だ。シャルルよ! そう慌てるでない。余にも考えがある」
私の心配していることを見透かしているようで、国王は柔らかい笑みを浮かべると、どういう条件下で探索するのか提示してきた。
その条件は3つ。
1つ、命を第一優先とすること。
2つ、森の中で何が起きているのか把握すること。
3つ、私、シャルル・ロア・ラングドシャを一緒に連れて行くこと。
「えっ!? 私がご一緒しても宜しいのですか?」
「シャル、そなたは稀有なスキル【転移】を持っておる。それに聖獣も引き連れておる。その上、この猛者2人と引けを取らぬ実力の持ち主だ。王女であること以外には、そなた以外に適任者はおらぬだろう」
「そうですか……」
「うむ、それにだ!」
「なんでしょう?」
「今回のようにだな、勝手に抜け出されては、余も肝が冷える……王宮内どころか、国民からも意見書が届いたくらいだ」
「す、すみません。お父様」
「よい! 余は誇らしいくらいだ。ここまで実の娘が好かれているのはな」
「は、はい、ありがとうございます」
「ただし、数名の騎士団は連れていくことだ。これは王女であるそなたの護衛だ」
「お父様……それは先程発言されていたこととは、矛盾されるのでは……」
「ふふっ、矛盾か……そうではあるな……これは娘を心配する父としてのお節介……国王である余ができる最大級の気遣いだ。まぁ、それにだ。そなたを慕う国民からすると、これくらいはせんと納得してくれんだろう。とはいえ、意見書はまた届くだろうがな……」
「そこまで、考えてのことでしたのでしたか……。声を荒げてしまい申し訳ありません。その色々とお気遣いありがとうございます」
「気にするでない! ま、コンラッド卿に任せておけば、特に問題はなかろうしな!」
「はい、この命に代えても、お守り致します」
「はははっ! あの優しさに溢れた子がそのような目つきになるとはな……だが、しっかり生きて守るのが貴殿の務めだ。必ず生きて戻るようにな。でなければ、余の娘が悲しむことになる」
「ははっ!」
「うむ、ガイアス卿も頼んだぞ! コンラッド卿が無茶なことをせんように、見てやってくれ」
「はい! この私にお任せ下さい」
「うむ! 良き返事だ。では、また報告を待っておる」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ
トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!?
自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。
果たして雅は独りで生きていけるのか!?
実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
JK LOOPER
ネコのうた
ファンタジー
【最初にドーン!】
現代の地球にて、突如、[神のデスゲーム]が執行されてしまいます。
日本の、とある女子高生が、ひょんなことから、タイムループしたり、ジョブチェンジしつつ、終末に挑んでいく事になりました。
世界中を巻き込んでの、異形の者たちや人類との戦いの果てに、彼女らは未来を変えられるのか?!
それとも全滅してしまうのか??
といった、あらすじです。
【続いてバーン!】
本編は、現実世界を舞台にしたファンタジーです。
登場人物と、一部の地域や企業に団体などは、フィクションであり、実在していません。
出来るだけグロい描写を避けていますが、少しはそのような表現があります。
一方で、内容が重くならないように、おふざけを盛り込んだりもしていますが、やや悪ノリになっているのは否めません。
最初の方は、主人公が情緒不安定気味になっておりますが、落ち着いていくので、暖かく見守ってあげてください。
【最後にニャ―ン!】
なにはともあれ、楽しんでいただければ幸いです。
それではこれより、繰り返される時空の旅に、お出かけください。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
悪役令嬢は始祖竜の母となる
葉柚
ファンタジー
にゃんこ大好きな私はいつの間にか乙女ゲームの世界に転生していたようです。
しかも、なんと悪役令嬢として転生してしまったようです。
どうせ転生するのであればモブがよかったです。
この乙女ゲームでは精霊の卵を育てる必要があるんですが・・・。
精霊の卵が孵ったら悪役令嬢役の私は死んでしまうではないですか。
だって、悪役令嬢が育てた卵からは邪竜が孵るんですよ・・・?
あれ?
そう言えば邪竜が孵ったら、世界の人口が1/3まで減るんでした。
邪竜が生まれてこないようにするにはどうしたらいいんでしょう!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる