上 下
34 / 49
異世界へ

第34話 ゲキカワみーとんと推し現る

しおりを挟む
 私は美豚がいた場所を見る。

「ぷひぃ!」

 そこには、産毛が生えた2本の足でしっかり立つ、小さな豚さんがいた。

 いうなれば、3匹の子豚さんの三男だ。

 子豚さんは、蹄で挨拶をするような仕草をしている。

《美豚……?》

《ぷひぃ! みーとんですぷひぃ》

 はわわっ、なんじゃそれむっちゃ可愛い!
 声もやばい……天使ですか?! いや、天使ですよね!


 抱きつきたい、抱き締めたい、吸いたい!


 ――ニュル。


 私の考えに応じるように万能触手ちゃんが、美豚改めて、みーとんへと伸びていき、なでなでやむにむになど、願望の限りを尽くす。

「ぷひひー、くすぐったいぷひぃ!」

 はあぁぁん、悶絶級の尊さぁぁぁー!

 人間ってゲンキンダヨネー、可愛くなったちゃえば、大体のことはおっけーになるんだから。

 うんうん。

 にしても、スキル【寄生】の謎が深まったかも。

 いや、そもそももう疑問だらけだから、どうでもよくなっている部分もある。

 けど、今になって思った。

 スキル【鑑定】選んでおけばよかったのではないかと……。

 い、いや! でーも、ほら! もし選んでたらこういう未知の? 刺激的な? おしゃぶり探検隊はできていなかったわけだし……ね。

 ね?

 私が岩の上でウネウネし、過去の自分の選択を悔いていると、みーとんが温泉から上がり、犬のようにふるふると体についた水分を飛ばしてテクテク歩いてきた。

「あるじさん、あるじさん、なんかきましたぷひぃ」

《えっ!?》

 私は蹄で指された方向に視線を向ける。

 なんと! その先には、加琉羅ルイと瓜二つのイケメソ……いや、イケてるマジモン! イケマジの加琉羅ルイ君が立っていた。

 しかも、異世界ふう騎士というマシマシのマシというコスで。

 あー、とうとうだー。
 精神的な疲れがピーク過ぎて、幻想が見えているんだー。
 はぁー、おしゃぶりだからって言っても、所詮は元人間……精神の方にガタが来ちゃったようです。

 皆、今まで本当にありがとう。

 おやすみなさい。

 って、死んでられるかぁぁぁーい!

 夢でもええやん! 推しとの再会やぞ!
 しっかりせい! ○○先生も諦めたらここで試合終了って言ってたやん!

 立ち上がれ和世! 全てはDon't Think.Feelだ!

 私は背筋をピンとする。

 そして、イケマジ加琉羅ルイ君の元へと近づいていった。

 が、忘れていたのだ。

 今の自分の姿を。



 ☆☆☆



「〇×△□!?」

 距離にして、10メートル前後。

 加琉羅ルイ、いや、加琉羅ルイ君(仮)は目を丸くし私とみーとんを交互に視線を移し動きを止めていた。

 いやー、そりゃそうですよねー!

 神目線で見たら、もう全部怖いもん。

 てか、当然ながら何を言っているのか、全く聞き取れないわー。

 英語? でもないし、フランス語でもない。

 もちろん、日本語でもない。

 なんかよくわからない感じかも。

《あるじさんは、こわくありませんよ?》

 うん、天使だね……みーとんは。
 異世界ゆるキャラグランプリが開催されたら、間違いなくナンバーワンだよ!

 って、今気付いたんだけどさ……この会話って言葉を発してないよね? どうやっているの?

《ぷひぃ! これはぼくがあるじさんのつかいまだからですぷひぃ!》

 そうなんだー、じゃああれかな? 新しいスキルを取得した影響ってこと?

《ぷひぃ……みーとんには、そのへんわからないぷひぃ……》

 みーとんは申し訳なさそうに頭を垂れる。

 はわぁ……ごめんよー。
 ちょっと早口で圧を感じてしまったよね。

《ぷひぃ! だいじょうぶですぷひぃ!》

 うん、やっぱり可愛い……。

 じゃなくて!

 加琉羅ルイ君(仮)の動きが止まっている間に、自分の状態を確認しないとだよね。

 なんか現状を解決できるスキルとかないかなー?

《ステータスオープン》

【個体名】おしゃぶり(転生者) 『エンペラーゴウル吸収』
【種族】物
【レベル】20
【体力】2500/2500【魔力】3950/3950
【攻撃】2800【防御】2850
【敏捷性】2600【知力】1950
【健康状態】火傷
【空腹状態】普通
【スキル】寄生レベル10   継承レベル10
     捕食レベル10    酸攻撃レベル10
     氷魔法レベル1  料理レベル10 
     威圧レベル8   索敵レベル10
     格闘術レベル6  仲間呼びレベル5
     斧術レベル10 風魔法レベル5  土魔法レベル5
     吸収レベル2  炎魔法レベル5
     風魔法レベル5 土魔法レベル5
    魔物使いレベル5 精霊獣使いレベル1(炎)
    

 尻神様って、エンペラーゴウルって名前だったんだ。
 へぇー、強そうー。
 
 ふと、私は自分の体に目を向ける。

 うんうん、くまさんマークから、オークになって、今は尻神様ですねー。

 そして、もう一度ステータス画面に目を向けた。

 スキル【吸収】のレベルも上がっているー。
 そうだ、使ったしねー。

 あ、なるほどー。
 スキル【吸収】って、一体吸収したら一体出ていく感じなんだー。

 へぇー、知らなかったー。

 スキル【精霊獣使い】ってスキルもあるんだねー。ふーん、すごーい。

 って、いや! 待て待て! 意味がわからん。もうなんか色んな数値が上昇しているし、スキルレベルも上がっているし、350で高いって言われてたステータスの平均値が……2500オーバー……だし。

 えっ、あれ? 私ってバケモノ……じゃね?

 しかも、レベル20でこれってさ……。

 私が、ステータス画面を見て頭を抱えていると、みーとんの声が頭の中に響いた。

《あるじさん、まただれかがこられましたぷひぃ》

《えっ!? また誰か来たの?》

 私は加琉羅ルイ君(仮)の方へと視線を向ける。

 すると、その後ろから、青いマントに白銀の鎧、腰にはサーベルを携えた騎士のような格好をした人が2人と女の子が1人現れた。

 しかも、全員顔面の作画がいい。

 これは……やっぱり夢……?

 またまた、私が正気を失いかけている中、加琉羅ルイ君(仮)とそこに来た女の子が親しげに会話を始めた。

《はっ! 彼女持ち……うん……なんというか、お似合いのカップルやないかい》

 腹は立つけど、お相手の女の子は加琉羅ルイ君(仮)の銀髪で端正な顔立ちに負けないくらいの外見をしている。

 空のように蒼く大きな瞳、風が吹く度になびくキューティクル百点満点な金髪、そして、ルーミーにも引けを取らないグッジョブバディ……。

 その上、肩にオッドアイの小さな猫を乗せている。

 うむ、こちらもマシマシかー。実にけしからん!

《あるじさん、どうするぷひぃ?》

 うん、どうしようかー。

 逃げるって言うのが一番いいと思うんだけど、推しを眺めていたい気もする。

 だって、もう会えないと思ってたんだもん。

 うん、仲良くなりたい。

 けど、絶対警戒されているよね……まぁ、当然なんだけど。

 やっぱ逃げる?

《ぷひー、みーとんにいいかんがえがあるぷひぃ》

 ほ、ほんとに!?

《ぷひぃ!》

 私は目の前にいる可愛いの化身、私の初めての使い魔へ任せることにした。

 みーとんは、自信満々で一歩、一歩、歩みを進める。

 そして、あの集団の前に着いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

【完結】☆遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる ~ 婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます☆

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

処理中です...