スペリオンズ~異なる地平に降り立つ巨人

バガン

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秘境探訪、その1

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 「このあたりかのはず・・・だが。」

 雷が見えて数分後、嫌な予感を察知したデュラン先生はすぐさま現場へと足を向けた。しかしどうだろうな獣か何かが争ったような形跡や、発生して間もない焦げたニオイこそあれど、あの4人の姿はなかった。代わりに見つけたのはというと・・・

 「何者の足跡だ?」

 長年の勘から、生徒たちの物ではない足跡、それも6、7人といったところの何者かと断定できる足跡を見つけた。見つけてしまった。

 「だが、これではまるで・・・。」

 生徒たちは、その何者かに連れていかれたようだった。見慣れた靴の足跡は3つ。1つ足りない物はサイズから鑑みるにガイのものだろう。ガイだけは誰かに背負われたか、担がれたかしている、つまり負傷状態にあるとみていい。

 「無事でいてくれよ・・・。」

 足跡を追跡することは可能だ。だが遭難地点に他の生徒たちを残してきてしまっている。そちらがこの正体不明な集団や獣に狙われる可能性も捨てきれない。

 「・・・やむを得ないか。」

 その場に横たわっている数匹の獣を掴んで、元来た道を辿る。とりあえず食料は確保できた。水も何とかなるだろう。あの4人ならなんだかんだ大丈夫だろう、戦闘力は高い方だし。

 唯一にして最大の懸念事項は、その謎の集団の足跡が、人間の物に見えない事だった。足跡の踵の部分にピンホールのような小さな穴が開いている。まるでそこから爪でも生えているような・・・。


 ☆


 「ウラァアアアア!」
 「ウララァアアアアアアアア!!!」

 ところ変わってどっかの集落。キャンプファイヤーのように火を囲んで部族の者たちと、それからやたらテンションの高いパイルが野獣のような声をあげている。

 「あー・・・オレら一体何を見てるんだろうな。」
 「わからへん・・・。」

 この珍妙な儀式をドロシーとサリアは半ば死んだような目で眺めていた。傍らには気絶しているガイが寝転がっている。

 「しかしまさかパイルがあんなにハイテンションになってるところ初めて見たな。」
 「せやなー。」

 普段見せないような、滅茶苦茶楽しそうな姿をしている。

 「んっ・・・ん・・・。」
 「あっ、ガイ起きた?」
 「ここは・・・なんっ!?」

 目を覚ましたガイは、驚きの声をあげた。それは級友がものすごいテンションになっているのを見たせいではない。

 「爬虫人類・・・?」
 「オレたちをここまで運んできてくれたんだ。」
 「見た目アレやけど、いい人らやで。」

 そこにいる多くの人々は、体の表面にウロコが付いていた。明らかに哺乳類のそれではない、爬虫類の特徴だった。

 「気が付いたようだな。」
 「あんたは?」
 「族長だ。」

 頭に豪華な飾りつけをした、爬虫人の男性が声をかけてきた。

 「狩りの途中、突然の落雷を見て来てみたら、君らがいたというわけだ。」

 そして今日の成果として山猫の丸焼きが振舞われた。何かスパイスが効いていて、なかなか美味かった。

 そしてこの付近の地理について聞いた。どうやらここはやはり、南の別大陸サウリアだったらしい。

 「となると、ノメルに帰るには海を渡って、さらにずーっと歩かなきゃならないのか。」
 「ほぼ世界の端から端だぜ、半年ぐらいかかるかもしんねえぞ。」
 「そんなにか。まあ飛行機も無いしな。」

 それにまず、サウリアから出るには磁気嵐で大荒れの海を越えなければならない。

 「それに関してはツテがある。」
 「どんな?」
 「北の大陸近くの浜辺には、大陸と貿易を行っている町がある。そこからなら、アルティマに渡る方法も見つかるだろう。」
 
 が、爬虫人類全体が基本的には閉鎖的で、貿易をしている連中のほうが珍しいらしい。その珍しい連中の目的とは、

 「『ギラス教』だよ。」
 「ギラス?」
 「竜の神様らしいよ。」
 「我々が奉っているギラスを、アルティマにも広めようとしているのだ。」

 このギラス教、教と呼んでいるのは布教している者たちだが、ギラスを信奉しているからこそ閉鎖的だったのだが、その習わしに待ったをかけたのが、ギラス教なのだ。

 「未開の部族に、新興宗教か、争いの種になりそうだな。」
 「そうならないでほしいと思っている。」
 「オレら一介の学生に出来るとは思えないんですけど?」
 「我々は種を蒔くだけだ。」
 「蒔いただけじゃ、花は咲かないけど。」

 こちらもあまりに浅薄じゃないか。閉鎖的というよりも、ギラスへの信奉を他所にあげたくないと言ったところか。

 「なんにせよ君たちを案内しよう。明日から。」
 「そういや、教室のほうはどうなってんの?」
 「・・・あっ。」
 「今思い出したのか。」

 向こうは今何やってんだろう。水と食料結局持っていけなかったけど。

 「ウララァアアアアアア!!!」
 「ウラァアアアアアア!!」

 それにしても、これは何の踊りなんだろうか。パイルには何が見えているんだろうか。

 なんにせよ、夜になってしまっては動くこともままならない。遭難地点に戻って、仲間と合流するのは明日ということとなった。

 「・・・。」
 「・・・ガイ、まだ起きてる?」
 「ああ。」
 「大変なことになっちまった。いや、しちまった。」
 「そうだな。」

 同じテントで並んで寝かされている。外は非常に静かで、時折風が木を揺らす音や、虫の鳴き声が聞こえるばかりの中、ドロシーとガイの話し声がひっそりとしている。

 「みんな怒ってるかな・・・怒ってるよな。」
 「怒るよりも、困惑の方が大きいんじゃないか。そもそも本当にお前のせいだと決まったてるわけでもなし。」
 「いや、絶対オレのせいだって。オレがあんなことしなければ・・・。」

 非常にばつの悪そうな声でドロシーが呟く。

 「お前は、怒られたいのか?」
 「・・・ただ、居心地悪い。」
 「お前が起こられて問題が解決するならそれでいいけど、何も解決しないからな。ただお前の気分がちょっとよくあんって、空気が悪くなるだけだ。」
 「やっぱり、そうなるか?」
 「わかってたんならそれでいい。」

 結局それ以上でもそれ以下でもない。なっちまったもんはなっちまったんだ。幸いまだ詰みではない。

 「今は休めよ、疲れてると正常な判断も出来なくなる。」
 「うん・・・あのさ。」
 「なんだ?俺を召喚したことを、怒ってるとでも?」
 「う、うん・・・。」
 「してないよ。毎日が楽しい。」
 「ホント?」
 「本当だ。俺は人生を楽しんでる。」
 「ホントのホント?」
 「本当はちょっと助かったと思ってる。真っ暗な道の途中で、明かりが見えた時みたいに安心してる。だから心配するな。」
 「うん・・・ありがとう。」

 

 夜はさらに更けていけども、希望の光は消えてはいない。

 (それにしても、まさか爬虫人類がいるとは。それにギラスとは・・・。)

 眠らない脳みそが、過ぎ去ったはずの暗雲を思う。


 ☆

 他方、人の気配がまるで感じられぬ深い森を見下ろす、山の頂にある古びた建物。

 「やはり・・・ここか。」

 その奥に、人の身長を超える程の大きさの金属の球体が、タマゴのように並んでおり、そのうちのいくつかが破裂していた。

 「オイ!そこにいるのは誰だ!」
 「おっと。」

 それを調べるでもなく、眺めていた黒いローブの男がいたが、現住民族がどやどやとやってくると姿を消した。

 「あぁっ!御神体が!」
 「一体誰がこんなことを・・・。」
 「よそ者の仕業か!」

 現住民族たちは、自らの信奉する『神々』の収められた聖櫃が壊されていることに気がついた。

 破れた球体から、ぬるぬるとした液体が漏れ出し、そこから点々とした丸い跡がついている。そしてそれはだんだんと大きくなっていた。


 ☆


 「これは・・・。」

 夜が明けて、あらかじめつけておいた目印を手掛かりに遭難地点へと戻ってきたガイたちが見たのは、

 「教室が消えた?」
 「みんなおらへんやん!」

 場所は合っているはずだったが、ものの見事に忽然と何もかもが姿を消していた。

 「火を焚いた跡はあるな。」
 「こっちに大きな足跡がある!」

 焚火跡の周りには骨が散乱している。足跡のように見えるものは、ゾウのものほどの大きさがある。

 「ふむ・・・これほどの大きさの足跡は、生まれてこのかた、この森では見たことがない。」
 「ジャングルの部族の族長が見たことない生物を、オレたちが知ってるわけがないよな。」

 ついてきた部族の方々も、その足跡の大きさに驚きを隠せないでいた。

 ゾウと同じ四つ脚の動物なら、そのゾウをゆうに超える10mはあることになるだろう。そんな巨大な生物が、教室ごとみんなを攫って行ったというのか?みんなは無事なんだろうか。

 「この足跡の向かう先、まずいかもしれない。」
 「なにがまずい?」
 「河のほうに向かっておる。あの先には我らよりももっと偏屈な部族が住んでおる。」

 森を抜けた先、流れも緩やかながら、大きく森を割くような河が現れた。

 「これ渡るのちょっと大変じゃない?」
 「この大陸を横断している、『ギラス河』だ。部族の国境代わりにもなっている。」

 本当にギラスが好きなんだな。ともかく、捜索のために河を渡るための筏を用意される。

 「あんまし大人数で行くと、向こうさんを刺激するんじゃない?」
 「そうだと思う。このモラックを案内役につけよう。」
 「モラックです、よろしくお願いします。」
 
 そう言って、族長が紹介した若者と、ガイたち4人が筏に乗る。

 「向こうの桟橋についてから、少し歩くと向こうの部族『メオ族』の村です。我々『カレ族』よりもよそ者に厳しい部族です。」
 「モラックは会ったことあるの?」
 「ありますとも。私は部族間の交渉役ですから。」

 曰く、これから行くメオ族の村はギラスの総本山が近く、そのせいで他者を近づけたくないらしい。そのため、アルティマと交易をしている町『ガビアル』とはすこぶる仲が悪い。目に見える不安要素に頭が痛い。

 「見えてきた。」
 「わぁ。」

 「あっ、ドロシーちゃん。助けて。」
 「わたくしたち、バーベキューにされてしまいますわー!」

 メオ族の村に着いてまず目に入ったのは、荒縄にふん縛られたみんながいた。

 「おうおう、そこにいるのはカレ族長の息子で交渉役のモラックではないか。貴様もよそ者を生贄に持ってきたのか?」
 「残念ながら違うメオ族長。」

 気さくに物騒なことを話してくるのはメオの族長。やはり頭には派手な飾りつけをしている。

 「そこでボンレスハムにされてるやつらは、俺たちの仲間なんだ。返してほしい。」 
 「それはいけないな。こいつらは我々の聖櫃を犯した疑いがあるから!」
 「そんなはずがない。俺たちが来たのはつい昨日のことだし、それがどこにあるのかすら知らない。」

 「いいや、証拠があるのだ。聖櫃に入ったという証拠が。」
 「それは?」
 「あれを見るがいい!」

 族長の指差す先にいたのは、すごい大きさのカメ。

 「あれは?」
 「あれは、マンモスガメのようだが・・・?あんな大きさなはずがない。」
 「マンモスガメ?」
 「ここよりもっと北の浜辺近くにいる、カメの仲間さ。甲羅の上に岩を背負う習性がある。」
 「それがなんでオレたちの教室を背負ってるんだよ。」

 やけに見覚えのある舞台セットのような建物を背負ったリクガメが首を引っ込めて寝ている。遭難地点にあった足跡はコイツのものだろう。

 「この特別大きなマンモスガメは、聖櫃のひとつの中にいたものに違いない、それを連れていたのだから、こいつらが賊に違いないのだ!」
 「一応聞いておくけど、そんなことしたの?」
 「してない。」
 「してませんわ。」
 「だろうな。先生は大丈夫?」

 先生は入念に猿轡をかまされて声も出せないようされている。中年男の緊縛プレイなんぞ誰得であるが。

 「その聖櫃から勝手に逃げだしたとかではない?」
 「その時、誰かが逃げていくのを見た者もいる。何者かの手引きがあってのことと間違いない。」
 「何度も言うけど、俺たちはここに来たばかりで、その聖櫃の場所も知らない。」
 「それは我々が保証できます。彼らは無実です。」
 「ううむ、モラックがそこまで言うのか。」

 「しかし、実際我々の大切な聖櫃が壊されているのは確かだ。外から来た者たちよ、ならば君たち自身の手で無実を証明してほしい。」
 「大分譲歩してくれたな。偏屈ってわりには。」

 「このマンモスガメの他にあと二体、出て行った御神体がいる。それらを探して、ここに連れてきてほしい。」
 「こんな巨大なのがあと二匹?」

 既存の動物をそのまま巨大化させただけなのかもしれないが、だとしても真正面から対峙するのは危険だろう。ここにいるカメのようなのんびり屋なら楽かもしれないが。

 「おー!なんか危険のカオリがする!」
 「お前は気楽だな。」

 こうして、この冒険最初のクエストお使いが始まった。


 ☆


  「さて、探すにしてもまずはどんな動物なのか知らない限りはやりようがないと思う。という事で、その霊廟に入れないか交渉頼んだ!」

 モラックは嫌そうな顔をしながらメオ族長に頼み込む。

 「・・・何人か見張りをつけるなら、入っても構わない。ただし、何か怪しいことをしたら、その場で首を切り落とす。」

 怪しいことはしないから問題ないな。

 「ふむ・・・一見すると培養カプセルのように見えるが。」
 「ガイ、わかるのか?」
 「生物のサンプルが、成長抑制剤と一緒に入ってるらしい。カプセルが壊れた理由はわからないけど、抑制剤が切れてリバウンドしたのが巨大化の原因だと思う。」

 『おそらく』と族長が言っていたことから、中身がなんなのかまでは知らなかったと思われる。実際外から中が見える覗き穴はついていないし。おそらく、このカプセルは生物改造用の実験器具ではなく、タイムカプセルのようなものなのだろう。いつか解き放つことを考えられていたのか。

 「この施設は一体誰が建てたんだ?何の目的があってのことだ?」
 「知らない。昔からあったものだ。ただ、我らの始祖ギラスがここでジャングルの生き物をお創りになられたとされている。」
 「なるほどな。」
 
 その記念館みたいなものなんだろうか。自然劣化でカプセルが壊れたと見るべきなのかそれとも、侵入したというよそ者の仕業だったのか。ともかく、今は目の前の問題を片づけなければならない。

 「この足跡がそうか。」

 割れたカプセルから続く足跡も、3種類ある。ひとつは遭難地点から見えていた丸い足跡。これはもう解決している。その正体がマンモスガメという見たこともない動物だったことから、他の2種類も未知なる動物と考えたほうがいいだろう。同じぐらい温厚な動物だと助かるのだが。

 二つ目は、爪が三つ伸びたような足跡。これもまた巨大だ。動物博士ではないので、これだけで判断しろというのはちと無理な話だ。

 「モラック、何かわかる?」
 「・・・爬虫類のものではないな。重量級の哺乳類、サウリアサイかもしれない。」
 「サイか、草食だけど暴れられたら厄介だな。」

 そして三つ目は、肉球のある柔らかそうな足。つい昨日、ヤマネコに襲われたことを思い出してしまう。

 「・・・これも、ジャガーか?」
 「だからトラだろ!」
 「ヒョウやろ?」

 10mもあるネコ科の猛獣の相手なんて、考えたくもない。マタタビかなにかで無力化できないものか。

 「よし、さっそく作戦会議だ!メオ族だけじゃなく、カレ族にも手伝ってもらおう。」
 「どうして?」
 「猛獣が放たれたからには、同じジャングルに住むものとしても放っておける問題じゃないだろう?モラック、あっちにも話をつけてほしい。」
 「うーむ、族長が許可をくれるだろうか?」
 「反目しあってるのかもしれないけど、今こそ団結の時だ。そうだろう?」
 「そうなったら、私の交渉の役目もおしまいかな?」
 「それを今から発揮してこいっていうの。」

 「・・・どっちにも手伝わせて労力を減らそうってことかい?」
 「しーっ。」 

 さすがパイルは観察力がある。

 「秘密ついでにもう一つ。こんなものを見つけたんだけど。」
 「なんだ、コイン?」

 女性の顔が描かれたコイン。見たところ金のようだ。爬虫類顔ではないということは、アルティマ大陸のものだろう。

 「これを、どこで?」
 「そのカプセルの下に落ちてたんだけど。」
 「それ、シアーで使われてる『ミィプル金貨』とちゃう?」
 「シアーっていうと、サウリアから一番近いところか。」

 色々と謎は尽きないが、ともかく今は会合の場へと赴こう。
 
 ☆


 「・・・そういうわけで、此度の問題は協力し合って解決したい。」

 急遽ひられた部族同士の会合の中心でモラックが声を張り上げる。

 「そもそもメオが霊廟の管理をおろそかにしていたせいでは?」
 「カレこそ、よそ者を受け入れるようなことをするせいだ!」

 「聞けよ!」
 「はい。」

 一触即発、喧嘩一歩前な両陣営なところ、モラックは一喝する

 「まず、足跡が河の前で途切れていたということは、みんな河を渡ったということだろう。実際そのマンモスガメは、カレ族の村の割と近くまで来ていたのだから、カレ族にとっても見捨てておけない問題なはず。」

 その言葉にカレ族の者たちはしゅんとなる。

 「今はどうすれば解決できるかを考えたい!そのためには、よそ者であるガイたちの力も借りたいが。」
 「構わない。どうせそうしなければ解放されないし。」

 やれよそ者の力を借りるのは反対だの、またひと悶着あったが割愛。

 「それで、何か提案はないか?」
 「先生、なんかある?」
 「そうだな、巨大化しても元の習性が残っているのなら、まずはその線から探ってみたほうがいいだろう。」

 まずは生息域から。サウリアサイは開けた場所が好きで、ジャガーは木の上にいる。どちらも巨大な自分の体に合う場所を探しているとすると、おのずと見当もついてくる。

 「ここから東に平原があるし、南には背の高い木がある。まずはそこを当たってみるとしよう。」
 「ふん、カレ族の腰抜けどもは、間抜けで鈍間なサイを追っかけていればいいさ。我々はジャガーを探すぞ!」
 「いやぁ、危険度から言ったらどっちどっちやと思うで?」
 「それって、私たちも手伝わなければなりませんの?」
 「手伝うって言っちゃったからにはねぇ。」
 「最悪だ。」

 クラスのみんなも解放されてはいるが、自由にはなっていない。これからが大変になってしまった。

 「組み分けはどうしよう?」 
 「オレはトラと戦うぜ!」
 「マジ?昨日の今日なのに?」
 「リベンジだよ!今度こそぜってー叩き潰してやる!」

 ドロシーはやる気まんまん。

 「じゃあ、アタシもドロシーと一緒に行くわ。」
 「あら、ゲイルがそっちに行くなら私もそっち行くわ。ガイも行くでしょう?」
 「何故決める。まあ行くけど。」

 ということで、ジャガー狩りはドロシー、ゲイル、カルマ、ガイ。サイ狩りにはシャロン、パイル、サリア、クリン。

 「教師としては、お前たちを危険な目に遭わせるわけにはいかないが・・・今回は事態が事態だ。全員、自分の命を最優先するように!」
 「はい!」

 優秀なインストラクターがつくとはいえ、非常に危険な課外授業となる。デュランはサイ狩りに、ジャガー狩りにはモラックが付いていくこととなる。


 「では出発だ!我らの勇猛さを見せつけてやるのだ!」
 「「「ウラァアアアアアア!!!」」」

 ひょっとすると、これだけでそこらの猛獣は逃げ出すんじゃないかと思える叫びをあげるメオ族と、その様子を一歩離れて見ているガイ一行。

 「昨日もこんな洗礼を浴びたな。」
 「爬虫人類ってみんなこうなのかしら?」
 「古くからの伝統なんだ。けど、もうすぐ近代化の波がやってくるだろうけど・・・。」
 「北の町で交易をやってること?」
 「そう、こちら側はカカオやコーヒーやタバコを、向こうからは金を輸入してる。」
 「そういえば族長の飾りにも金が使われてるな。」

 この大陸では金が採れにくいが、それゆえに金の装飾は貴重ということだ。

 「だが、そんなんじゃ足りない。金の取り合いや抗争にうつつを抜かしていては、近代化にはついていけない。団結してアルティマに対抗しなければ・・・。」
 「・・・なぁ、モラック。」

 ガイは少し考えると、ポケットから金貨を取り出した。

 「これが何か、見覚えあるか?」
 「・・・いいや。」
 「質問ついでにもう一つ言わせてもらうと、聖櫃から動物を解き放ったのは、お前なんだろう、モラック?」

 それを聞いて、モラックの表情から笑いが消えた。
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