上 下
28 / 54

第24話

しおりを挟む



「うわぁ、すごい、、、硬い、バキバキ。。
はじめさん、こんな状態になるまで放って置くなんて。
言ってくれれば私がしてあげたのに。。
さあ早くベットに座って。それとも横になる?」



「あ、いやこんなの、大丈夫だ。自分でーー」



「ダーメ。ふふ、捕まえた。
う、やっぱり硬いっ!それに、はじめさん大きくて、力が、、入らない。やっぱり横になって。そうすればいけるよ。
ぐっ、うっ、うっ。
ーーーどう?気持ちいい??」


「き、気持ち良いんだが、、もうこれ以上は!」



逃げようとするはじめさんを捕まえ組み伏せる。



「大丈夫、私に身を任せて。
ほらっ!ほらっ!ーーどう??」



そして更に巧みに手を動かした。



「うぅ、、もうダメだ!耐えられない!!!」



そう言ってはじめさんは顔を枕に押し付け足をバタつかせ悶えている。

私はそんな姿を愛でながらマッサージを続ける。


「ね?私上手いでしょ?
みんな『すごいっ!』って言ってくれるんだよ。
でも今までマッサージした中ではじめさんはダントツに苦戦したよー。
肩こり酷くてバッキバキだし、上背があるから座った状態じゃ力入らないし。
でもこのうつ伏せ状態なら隅々まで解せるよ。」



身体を触ってみて気付いたがこれは相当疲れが溜まっている。
肩甲骨付近のツボをじわじわ刺激する。
強くし押し過ぎると揉み返しが来るから力加減が難しい。



「はぁ、はぁ、、気持ちいいが、は、恥ずかしい。。
ゆづ葉がマッサージが得意なのは分かっが、言葉の選択が、その、、びっ微妙なんだ。

ーーいやそれより、『みんな』って誰が含まれる?
もしかしてその中に『男』はいないだろうな?」



後半になるに連れて声トーンが下がる。
うつ伏せの為表情が見えないが、機嫌が悪い気がする。
もしかして全く匂わせて無いけど、見えない『男』の影に嫉妬してくれている?とか。



「大丈夫、両親と田舎の祖父母、それに夕子だけだよ。
夕子が『絶対他の人にやっちゃ駄目だよ~。あんたのマッサージはから。親友の私か家族だけにして~。』って言うからさ。
ふふっ、『他はダメ』だって。夕子ったら甘えん坊だよね。」



当時の夕子の顔を思い出しながら話す。
いつも通りの口調だったのに有無を言わせないような目力だった。
独占欲かな?って揶揄うとすごい冷気飛ばしてたな。



「あぁ、そうだな確かに。身体にも精神にもガツンとくる。
足立の言う通り、他ではやるなよ。
ーー俺にマッサージしたと聞いたら足立が怒り狂いそうだな。」



ブルッと身震いするはじめさん。
確かに夕子との約束を破ってしまったが、本日の私達は夫婦(仮)。家族枠適用で許されるはずだ。うん。

私も背筋に冷たいものを感じ身震いしたがそれを振り払い無心でマッサージを続けた。
気付けばピクリとも動かないはじめさんがいた。
顔を覗き込むと無防備な顔で寝息を立てていた。
シーツを掛け、軽く頭を撫でる。

日頃の激務に長距離運転。
そしてデート中に心配を掛けたその心労でとうとう限界が来たのだろう。
このまま寝かせてあげようと静かにベットから降りた。

時計を見るともうすぐ21時だ。
寝る支度をしよう。

昼のお弁当箱を軽く洗ったあとシャワーを浴びにバスルームへ。


シャワーを浴びながら今日の事を思い出す。
デートは中途半端になってしまったが、ミカさんと出会うことができた。
辛いこともあっただろうに、それに負けず、強くあろうとした彼女の笑顔は素敵だった。
私もそうありたいと思った。
彼女の様にこの先何があったとしても笑顔で乗り越えられる自分でありたいと。



就寝支度完了。
さあ寝ようとベットに入る。
はじめさんの頬におやすみのキスをしようと近づけば、突然目が開きこちらを見つめる。だがその瞳は虚ろだ。
無言で私へと手を伸ばしてきた。そしてそのまま私を抱え込むと一言、


「おやすみ」


という言葉と共に寝息が聞こえ始める。


夏休み初日もこんなことあったな。
はじめさんは寝ぼけると人恋しくなる体質のようだ。
こんながっちり抱え込まれたらいたずらも出来やしないと観念し、大人しく寝ることにする。
はじめさんの匂いに包まれて目を瞑ると、心地良くなりすぐに意識を手放したのだっだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌朝早朝。


ビクッという振動で目が覚めた。
ワサワサした手触りのモノを抱えてる状態だった。温かくて気持ちいい。
なでなでしていると、ぼやけた視界がはっきりして来た。
そう私が抱えていたのははじめさんの頭だった。


夜と逆転した形になっていた事に驚いたものの、この幸せな状態を堪能するべく更にはじめさんの頭を抱えこむ。




「待て待て!だめだ!!起きたんだろ?!離れてくれ!
かっかっ、顔が埋もれる!!!!?」



「あっ、起きちゃった?
おはよう。抱き締めて眠るってこんなに気持ちいいんだね。癖になりそう。
あっ、言っておくけどはじめさんが先に私を抱き締めて眠ったんだからね。
だから苦情は受け付けないよ?」



はじめさんの顔の位置までモゾモゾ下がりつつ、クレームを回避するため先手を打つ。
実際、はじめさんが抱え込まなかったら大人しく離れて寝るつもりだったのだ。


はじめさんは私を直視せずそっぽを向いて話し出す。



「すまない。また寝ぼけてやってしまったのか。寝ぼけると、、自分をさらけ出してしまうのかもな。
ーーって、いやそれより、ゆづ葉、着替えてくれないか。Tシャツ一枚は不味い。。」



自身の格好を見返す。
ダボダボの大きめのTシャツのせいで下の短パンが見えていない。
下を履いていないと勘違いがないようバッとめくって履いている事を強調した。


「ほら見て!ちゃんと短パン履いてるよ?」


一瞬コチラを見たかと思ったら勢い良く横を向くはじめさん。



「やめろ、見せるな!分かったから!!下げろ!
ーー俺を弄ばないでくれ。。」



そんつもりは無いんだけど、うーーん難しいな。



「そうじゃない。
下じゃなく、上。。それ一枚だよな?!
むっ、むね、いやいや、体型が、、丸分かりだ、ぞ。」



「ん?あぁ、胸ね。でも寝る時だしブラ着けて寝ないから普通でしょ?
え?私だけ??」



「知らん!!!だが、男女でベットに居るんだ、服装に気をつけて節度を、、」



「男女がベットにいるんだよ?節度も何も。ーー寧ろ裸が正しくない?」



「正しくなーーーーい!!!」



これは後日アンケートを取らないといけない案件だ。
まずは夕子に聞いてみようと決めたのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この後、再び動物園へ行き昨日出来なかった動物達とのふれあいをしたり、約束した下りSAサービスエリアのメロンパンを食べたりとデートの続きを楽むことになった。



そして初デートは一泊二日のお泊まりデートと形を変え、素敵な思い出として残ったのだった。




そうそう後日の事。
夕子にはじめさんと口論した
『ブラを着けて寝るか?』
『男女同じベットで寝る時は節度ある格好は必要であるか』
を聞いてみるとーー



「ゆづ葉、、、そんな事より、、まず山田、センセイとそんな会話をした経緯を洗いざらい事細かに話しなさい。」


有無を言わせない圧が夕子から発せられ、私は無意識に正座した。
そして初デートの出来事を全て話した後ーーー


永く、永遠とも思える説教を頂いた。。。



調子に乗ってすいませんでした!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

元婚約者様の勘違い

希猫 ゆうみ
恋愛
ある日突然、婚約者の伯爵令息アーノルドから「浮気者」と罵られた伯爵令嬢カイラ。 そのまま罵詈雑言を浴びせられ婚約破棄されてしまう。 しかしアーノルドは酷い勘違いをしているのだ。 アーノルドが見たというホッブス伯爵とキスしていたのは別人。 カイラの双子の妹で数年前親戚である伯爵家の養子となったハリエットだった。 「知らない方がいらっしゃるなんて驚きよ」 「そんな変な男は忘れましょう」 一件落着かに思えたが元婚約者アーノルドは更なる言掛りをつけてくる。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

浮気中の婚約者が私には塩対応なので塩対応返しすることにした

今川幸乃
恋愛
スターリッジ王国の貴族学園に通うリアナにはクリフというスポーツ万能の婚約者がいた。 リアナはクリフのことが好きで彼のために料理を作ったり勉強を教えたりと様々な親切をするが、クリフは当然の顔をしているだけで、まともに感謝もしない。 しかも彼はエルマという他の女子と仲良くしている。 もやもやが募るもののリアナはその気持ちをどうしていいか分からなかった。 そんな時、クリフが放課後もエルマとこっそり二人で会っていたことが分かる。 それを知ったリアナはこれまでクリフが自分にしていたように塩対応しようと決意した。 少しの間クリフはリアナと楽しく過ごそうとするが、やがて試験や宿題など様々な問題が起こる。 そこでようやくクリフは自分がいかにリアナに助けられていたかを実感するが、その時にはすでに遅かった。 ※4/15日分の更新は抜けていた8話目「浮気」の更新にします。話の流れに差し障りが出てしまい申し訳ありません。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

処理中です...