11 / 54
第11話
しおりを挟む結城さんは姪御さんだった。
私は全く見当違いの誤解をしていたようだ。結城さんとの関係に自覚無く無意識に嫉妬していた。
そして訳もわからず先生を避け、勝手に悩んで勝手に弱り、最後には夕子に自宅へ強制連行される。
完全に一人相撲をしていた。
だが今はくよくよしてる場合じゃない。改めてはじめさんの言葉を反芻する。
はじめさんは教師として逸脱していると分かっていながらの私の心配をし、家まで来てくれた。
つまり少なからずまだ希望を持ってもいいと言うことだとポジティブに考える。絶望からのチャンスだ。
逃す訳には行かない。
私は今の好機を逃さない為にはじめさんを口説く事にする。
「結城さんの事は分かりました。私の勘違いで一人であれこれ悩んでたのが恥ずかしいです。でもおかげではじめさんへの気持ちを自覚出来ましたから結果オーライでしょうね。
それでですが、、はじめさんには恋人は居ない。という事実がわかりましたので、、、もう遠慮はいりませんよね?
先程も言いいましたがはじめさんが好きです。いえそんな言葉では収まり切らない。誰よりも愛してます。
はじめさんにとって『好ましい』私本郷ゆづ葉とお付き合いしませんか?もちろん結婚を前提に。」
もう外聞なんて構っていられない。誰かに取られる前にこの愛しい人を自分モノにしたい。
この独占欲は抑えられる気がしない。
そう言う気持ちを全面に攻めることにした。逃げる隙なんてみせるものか。
「、、は?、えっ?っはぁーー!!?」
案の定はじめさんは驚いた様だ。
さっきまでは『好きだと言う気持ちだけは伝えたい』とだけ言っていたのに今は『付き合いたい』と真っ向から言っているからだ。
「無理ですか?やはり私とはお付き合いはできませんか?
『教師と生徒だから』とはじめさんが躊躇するのであれば私は喜んでこの学校を辞めますよ。はじめさんが手に入るなら今すぐにでも。でもそうなるとはじめさんは責任を感じてしまいますよね?
生徒の未来を自分の所為で変えてしまうと。
なら、そうならないようにこのままお付き合いしましょ?誠意は見せたいのでお互いの身内には話したいですが、学校内では隠し通します。
もし学校内で露見した場合、はじめさんの意思を無視し、私が全ての責任を取りますよ。まあ全力で露見しないよう努めますが。
で如何ですか?」
はじめさんが否定する前に畳みかけるように言葉を続ける。
私の怒涛の口撃に、はじめさんは口をぱくぱくさせ言葉を紡げないでいる。多分動揺している。
だがそれはチャンスだ。肯定の言葉を貰えれば私の勝ち。
あと一押し。
下を向き両手で顔を抑えトドメの一言を口にする。
「答えてくれないんですね。、、、、うっ、私の事、嫌いなら、、、そう言ってくだ、、、さい。」
するとはじめさんは慌て言葉を発した。
「泣くな!全く嫌いじゃない!!こ、好ましいと思ってると言っているだろ。」
私は俯いたままで言葉を待つ。
「くっ!、、、分かった、、、分かった!こんな俺で良ければ、、、よろしく頼む。」
貰った!!!!はじめさんを頷かせ言質を取った。
嬉しくてついはじめさんに満面の笑みを向けてしまった。
その私の表情を見てはじめさんは驚愕の顔で、、、
「待て!お前泣いてないじゃないか?!騙したのか?今のは無「騙しては無いですよ。愛しているはじめさんに真摯に向き合い、全力で愛を語っただけですから。嘘偽りは無いです。その気持ちにはじめさんはOKを出した。そうですよね?」」
はじめさんの言葉に被せて言えば、何も言えないらしい。
「うっ」と言葉を詰まらせる。
流石に強引に押しに押したので少し罪悪感が、、、だからフォローを入れる。
「優しいはじめさんに甘えて強引に押し切ってしまいましたが、私の気持ちは本当です。はじめさんが教師、私が生徒という事実を全て背負います。だから私と付き合って下さい。
絶対に、絶対に幸せにしますから。」
そう言ってはじめさんに近づき抱き締めた。
はじめさんは一瞬身体を強張らせたが、はぁーと大きく息を吐いた後、抱き締め返してくれた。
「俺の負けだ。認める。俺はお前のそんな強気で強引で、でも相手の事を想いやれる所に初めから惹かれていたんだ。それに弱っているのを隠そうとする所も放って置けない。
お前の気持ちに応える為に取ってつけた訳じゃないぞ。言っておくがお前よりずっと前からこの気持ちを自覚していた!
それを言うつもりは無かったがな。
だがこうなったからには俺からも言おう。本郷、いや、ゆづ葉、、、付き合ってくれ。
もしこの関係が世間に認められなかったら責任はゆづ葉じゃなく俺が背負う。
そんな時が来たとしても、もうゆづ葉を離す気は無い。誰かに邪魔されそうになったら掻っ攫うからな。」
そうはじめさんに言われ、コクンと頷く。
思いもよらない言葉に加え初めての名前呼びに顔が、いや全身が熱くなってきた。まさかはじめさんからこんな風に言ってもらえるなんて、、。
どうしようもなく恥ずかしくなり両手で顔を隠そうとするとはじめさんがその手を掴んだ。まじまじと顔を見られながら
「お前そんな顔もするんだな。ふふっ、可愛いな。」
そう言ったはじめさんの顔は、今まで見た事が無い、意地悪そうでいて、そして優しい笑顔をしていた。
その後
初めて見る可愛すぎる笑顔を目の前に、私は羞恥を忘れ理性を失い押し倒した。
覆い被さった状態で無抵抗なはじめさんの口元に目が行く。
どちらとも無くゆっくり顔が近づいていきそして、、、パシン!バシーン!!と2回小気味良い音と同時に頭頂部に衝撃がきた。
突然の衝撃に涙目で後ろを振り向けば何故か夕子がスリッパを持ち仁王立ちしていた。
「はあ、こんなことになる気がして待機していたの。本能のままか、この野生動物共が。」
と説教を頂きました。。。
頭を押さえたはじめさんも隣に並び私と同じく正座をして夕子の説教を聞いていました。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
元婚約者様の勘違い
希猫 ゆうみ
恋愛
ある日突然、婚約者の伯爵令息アーノルドから「浮気者」と罵られた伯爵令嬢カイラ。
そのまま罵詈雑言を浴びせられ婚約破棄されてしまう。
しかしアーノルドは酷い勘違いをしているのだ。
アーノルドが見たというホッブス伯爵とキスしていたのは別人。
カイラの双子の妹で数年前親戚である伯爵家の養子となったハリエットだった。
「知らない方がいらっしゃるなんて驚きよ」
「そんな変な男は忘れましょう」
一件落着かに思えたが元婚約者アーノルドは更なる言掛りをつけてくる。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
浮気中の婚約者が私には塩対応なので塩対応返しすることにした
今川幸乃
恋愛
スターリッジ王国の貴族学園に通うリアナにはクリフというスポーツ万能の婚約者がいた。
リアナはクリフのことが好きで彼のために料理を作ったり勉強を教えたりと様々な親切をするが、クリフは当然の顔をしているだけで、まともに感謝もしない。
しかも彼はエルマという他の女子と仲良くしている。
もやもやが募るもののリアナはその気持ちをどうしていいか分からなかった。
そんな時、クリフが放課後もエルマとこっそり二人で会っていたことが分かる。
それを知ったリアナはこれまでクリフが自分にしていたように塩対応しようと決意した。
少しの間クリフはリアナと楽しく過ごそうとするが、やがて試験や宿題など様々な問題が起こる。
そこでようやくクリフは自分がいかにリアナに助けられていたかを実感するが、その時にはすでに遅かった。
※4/15日分の更新は抜けていた8話目「浮気」の更新にします。話の流れに差し障りが出てしまい申し訳ありません。
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる