14 / 20
背けては居られない
2
しおりを挟む
「はつみん、はつみん!」
学校、私の机に両腕と、その上に小さな頭を乗せて、少し高い声で私を呼ぶ友人。
首の角度が絶妙にあざといその毛先のはねた少々ボサボサな頭を、返事の代わりに緩く撫でると、まあるい大きな目をすっと細めて満足気に微笑んだ。
まるで猫みたいだ。
「あのね!えっちゃんがね……」
同い年のはずなのに何処かたどたどしい話し方で『えっちゃん』こと江藤優翔(えとうゆうか)、優翔ちゃんの話をし始める。
「ピューラーで野菜むいてて、手の爪まで一緒にむいた話をしてくるんだよ!」
プクッとふくらんだ頬をつつきながら話を聞いていると、どうやらまた優翔ちゃんが笑い話と称して、全く笑えない少々グロテスクな話をしたようだ。
「はつみ~ん。」
若干唇を尖らせながら上目遣いで見上げてくる友人、さよちゃん(本名石川小夜里(いしかわさより))の頭を撫でながら件の人物を呼び出す。
「優翔ちゃん?ちょっとおいで?」
この時、優しく笑顔で呼ぶことを心がける。
ビクッと肩を揺らした優翔ちゃんが渋々といった様子で近くまで来た。
どうやら、先程までのさよちゃんの話が聞こえていたようだ。まぁ、大きな声で話していたから当然と言えば当然なのだけれど。
「まず、ひとついい?」
笑顔のまま問いかけると、優翔ちゃんは黙ったまま目を逸らした。
「優翔ちゃん?」
にっこりとしたまま、声をワントーン低くする。
「……。」
それでも目を合わせようとしないので、優翔ちゃんの両肩に手を置いて、
「優翔ちゃん?お返事は?」
びくりと肩が揺れた。
ダメ押しのように、一音づつ区切りながらもう一度、
「お へ ん じ は ?」
と問うと、蚊が泣いたような小さな声で、
「……はい。」
と返ってきた。
「まず、1つ目ね。ピューラーで爪を剥いた話は、笑い話とは言わないし、全く面白くもないし笑えないの。わかる?」
にっこりと反論はないよね?という気持ちを込めていつもよりワントーン低い声を意識して出した。
「……でも、ほんとに面白いと思ったんだ。」
拗ねたように目線を外しながら優翔ちゃんが言った。
「面白くない。」
ピシャリと否定をした後に続けて、
「2つ目、さよちゃんはグロテスクなの苦手なのわかるよね?」
「でも、美羽(みつは)さん。全然グロくないだろ?」
懲りない優翔ちゃんは未だに反論をしてくる。
「世間一般と価値観ズレてるのをそろそろわかってって私何回言ったっけ?」
そこまで言うと、ぐぬぬと唸って何も言わなくなった。
「優翔ちゃん?さよちゃんになんか言うことないの?」
もうわかるよね?と今度はいつもの声色で優しく問いかけた。
こくりと頷いた優翔ちゃんは、とてとてとさよちゃんに近寄って、一言
「ごめんなさい。」
と謝った。
さよちゃんは優翔ちゃんが近付いたことで今度はどんなグロい話をする気かと警戒しながら少し後ずさった。
ほんとに、猫みたいだ。
後ずさって警戒を解かないさよちゃんに、オロオロした優翔ちゃんが、
「もう言わないから、逃げないでくれ~。」
なんて言ってるのが本当に面白くて、思わず笑ってしまった。
学校、私の机に両腕と、その上に小さな頭を乗せて、少し高い声で私を呼ぶ友人。
首の角度が絶妙にあざといその毛先のはねた少々ボサボサな頭を、返事の代わりに緩く撫でると、まあるい大きな目をすっと細めて満足気に微笑んだ。
まるで猫みたいだ。
「あのね!えっちゃんがね……」
同い年のはずなのに何処かたどたどしい話し方で『えっちゃん』こと江藤優翔(えとうゆうか)、優翔ちゃんの話をし始める。
「ピューラーで野菜むいてて、手の爪まで一緒にむいた話をしてくるんだよ!」
プクッとふくらんだ頬をつつきながら話を聞いていると、どうやらまた優翔ちゃんが笑い話と称して、全く笑えない少々グロテスクな話をしたようだ。
「はつみ~ん。」
若干唇を尖らせながら上目遣いで見上げてくる友人、さよちゃん(本名石川小夜里(いしかわさより))の頭を撫でながら件の人物を呼び出す。
「優翔ちゃん?ちょっとおいで?」
この時、優しく笑顔で呼ぶことを心がける。
ビクッと肩を揺らした優翔ちゃんが渋々といった様子で近くまで来た。
どうやら、先程までのさよちゃんの話が聞こえていたようだ。まぁ、大きな声で話していたから当然と言えば当然なのだけれど。
「まず、ひとついい?」
笑顔のまま問いかけると、優翔ちゃんは黙ったまま目を逸らした。
「優翔ちゃん?」
にっこりとしたまま、声をワントーン低くする。
「……。」
それでも目を合わせようとしないので、優翔ちゃんの両肩に手を置いて、
「優翔ちゃん?お返事は?」
びくりと肩が揺れた。
ダメ押しのように、一音づつ区切りながらもう一度、
「お へ ん じ は ?」
と問うと、蚊が泣いたような小さな声で、
「……はい。」
と返ってきた。
「まず、1つ目ね。ピューラーで爪を剥いた話は、笑い話とは言わないし、全く面白くもないし笑えないの。わかる?」
にっこりと反論はないよね?という気持ちを込めていつもよりワントーン低い声を意識して出した。
「……でも、ほんとに面白いと思ったんだ。」
拗ねたように目線を外しながら優翔ちゃんが言った。
「面白くない。」
ピシャリと否定をした後に続けて、
「2つ目、さよちゃんはグロテスクなの苦手なのわかるよね?」
「でも、美羽(みつは)さん。全然グロくないだろ?」
懲りない優翔ちゃんは未だに反論をしてくる。
「世間一般と価値観ズレてるのをそろそろわかってって私何回言ったっけ?」
そこまで言うと、ぐぬぬと唸って何も言わなくなった。
「優翔ちゃん?さよちゃんになんか言うことないの?」
もうわかるよね?と今度はいつもの声色で優しく問いかけた。
こくりと頷いた優翔ちゃんは、とてとてとさよちゃんに近寄って、一言
「ごめんなさい。」
と謝った。
さよちゃんは優翔ちゃんが近付いたことで今度はどんなグロい話をする気かと警戒しながら少し後ずさった。
ほんとに、猫みたいだ。
後ずさって警戒を解かないさよちゃんに、オロオロした優翔ちゃんが、
「もう言わないから、逃げないでくれ~。」
なんて言ってるのが本当に面白くて、思わず笑ってしまった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる