アネモネを君に

野部 悠愛

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目を背けて

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「できたよ。」

その言葉で、私の胸はミシリと嫌な音を立てた。頭の中ではこの間の残酷な夢がフラッシュバックしてずっとぐるぐると回っている。

でも、それを気づかれる訳にはいかない。
冷静に、落ち着いて。心の中で呪文のように唱えながら、
「え、だれ?同じ学校の人?」

彼女は眉を八の字にしてへにゃりと笑いながら言った。

「この中。」

そう言って彼女が指さしたのは、スマートフォンだった。
頭の中が疑問符でいっぱいになる。

それに気づいた彼女は悪戯が成功したときのような嬉しそうな顔で、

「ゲームの中!」

がく、と全身から力が抜けた感じがした。

それと同時にひどく安堵した自分がいた。















































































































そうやって、自分には彼氏が出来て、彼女には恋人ができそうな気配すらないことに安堵し、仄暗い喜びを感じたことが、酷く恥ずかしくて、情けなくて、申し訳なくて、


………………そっと目を背けた。
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