77 / 89
ヴィヴィアンの恋と革命
(15)赤い旋風
しおりを挟む
完全に戦闘モードで瞬間転移してきたスカーレットは、敵がここにいないと聞いても、すぐには警戒を解かなかった。
「ヴィヴィアン、その怪しい大蛇は?」
「その子は、ドクムギマキたちからの贈り物だよ」
「ドクムギマキって?」
「止まり木にいる子たち。さっき、家族になった」
「ぢゅん」
「そういえば、なんか増えてるわね…」
「ぢゅんぢゅん」
大蛇の頭にとまって、毒麦をつついて食べている小鳥たちを見て、スカーレットは、大きなため息をついた。
「ここに敵がいないのは分かったわ。それで、命が危険ってどういうことなの?」
「第二のトンチキ壷が、取り憑いてるマルド一家の父親を操って、さっきうちに来た。うちの中には入れないから、あきらめて帰っていったんだけど、まだ何か仕掛けようとしてるみたいで、その一家の息子の命が、たぶん危ない」
スカーレットは額に手を当てて、もう一つ大きなため息をついた。
「ヴィヴィアン、あんたってば、昨日の今日で、またそんなことになってたの?」
「スカーレットの先読みが、バッチリ当たった」
「当たってほしくなかったわ…」
げんなりした顔のスカーレットに、タバサがガラスのカップに注いだ茶を出した。
「アイス謎茶を作ってみただ。お医者様も、飲んで一息ついてけろ」
「ありがと……いい香りね」
ドクムギマキたちや大蛇にもアイス謎茶が行き渡るころには、スカーレットもだいぶ気持ちが落ち着いたようだった。
「マルド商会って、聞いたことがあるわ。食品関係を取り扱ってる老舗だったと思うんだけど、いつから薬壺に取り憑かれてたのかしら」
「分からない。でも、そこの家では、ユアン・グリッドたちの家と同じことが起きてる。父親が操られて、女の家族が行方不明だって」
「薬壺が何か仕掛けようとしてるっていうのは?」
「タバサの旦那さん……アーチボルド・セミグリッドの幻影を使って、今夜グリッド家の人たちに会うように仕向けてきた」
「なんですって!? それって、まさか…」
ヴィヴィアンは、スカーレットが自分と同じ推測をしたのを察した。
「うん。もう一度、タバサを核にしてトンチキ壷を再構築して、グリッド家に取り憑くつもりなんだと思う。そのために必要な魔力を、マルド商会長の息子たちから奪う可能性がある。ギル・グリッドがやられたみたいに」
「命の危険って、そういうことだったのね……急がないと、まずそうだわね」
「うん、急ぎたい。マルド商会の奥さんと娘さんも、いまなら助けられるかもしれない。あと、第二のトンチキ壷の核にされてるアーチボルド・セミグリッドは、絶対に助ける」
タバサが息をのむ音がした。
ヴィヴィアンは、食堂に集まっている家族たちの一人一人を確認するように見てから、依頼の言葉を口にした。
「スカーレット、私たちに、先手必勝の大作戦を授けてほしい」
「ヴィヴィアン、その怪しい大蛇は?」
「その子は、ドクムギマキたちからの贈り物だよ」
「ドクムギマキって?」
「止まり木にいる子たち。さっき、家族になった」
「ぢゅん」
「そういえば、なんか増えてるわね…」
「ぢゅんぢゅん」
大蛇の頭にとまって、毒麦をつついて食べている小鳥たちを見て、スカーレットは、大きなため息をついた。
「ここに敵がいないのは分かったわ。それで、命が危険ってどういうことなの?」
「第二のトンチキ壷が、取り憑いてるマルド一家の父親を操って、さっきうちに来た。うちの中には入れないから、あきらめて帰っていったんだけど、まだ何か仕掛けようとしてるみたいで、その一家の息子の命が、たぶん危ない」
スカーレットは額に手を当てて、もう一つ大きなため息をついた。
「ヴィヴィアン、あんたってば、昨日の今日で、またそんなことになってたの?」
「スカーレットの先読みが、バッチリ当たった」
「当たってほしくなかったわ…」
げんなりした顔のスカーレットに、タバサがガラスのカップに注いだ茶を出した。
「アイス謎茶を作ってみただ。お医者様も、飲んで一息ついてけろ」
「ありがと……いい香りね」
ドクムギマキたちや大蛇にもアイス謎茶が行き渡るころには、スカーレットもだいぶ気持ちが落ち着いたようだった。
「マルド商会って、聞いたことがあるわ。食品関係を取り扱ってる老舗だったと思うんだけど、いつから薬壺に取り憑かれてたのかしら」
「分からない。でも、そこの家では、ユアン・グリッドたちの家と同じことが起きてる。父親が操られて、女の家族が行方不明だって」
「薬壺が何か仕掛けようとしてるっていうのは?」
「タバサの旦那さん……アーチボルド・セミグリッドの幻影を使って、今夜グリッド家の人たちに会うように仕向けてきた」
「なんですって!? それって、まさか…」
ヴィヴィアンは、スカーレットが自分と同じ推測をしたのを察した。
「うん。もう一度、タバサを核にしてトンチキ壷を再構築して、グリッド家に取り憑くつもりなんだと思う。そのために必要な魔力を、マルド商会長の息子たちから奪う可能性がある。ギル・グリッドがやられたみたいに」
「命の危険って、そういうことだったのね……急がないと、まずそうだわね」
「うん、急ぎたい。マルド商会の奥さんと娘さんも、いまなら助けられるかもしれない。あと、第二のトンチキ壷の核にされてるアーチボルド・セミグリッドは、絶対に助ける」
タバサが息をのむ音がした。
ヴィヴィアンは、食堂に集まっている家族たちの一人一人を確認するように見てから、依頼の言葉を口にした。
「スカーレット、私たちに、先手必勝の大作戦を授けてほしい」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる