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ヴィヴィアンの恋と革命

(15)赤い旋風

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 完全に戦闘モードで瞬間転移してきたスカーレットは、敵がここにいないと聞いても、すぐには警戒を解かなかった。

「ヴィヴィアン、その怪しい大蛇は?」

「その子は、ドクムギマキたちからの贈り物だよ」

「ドクムギマキって?」

「止まり木にいる子たち。さっき、家族になった」

「ぢゅん」

「そういえば、なんか増えてるわね…」

「ぢゅんぢゅん」

 大蛇の頭にとまって、毒麦をつついて食べている小鳥たちを見て、スカーレットは、大きなため息をついた。

「ここに敵がいないのは分かったわ。それで、命が危険ってどういうことなの?」

「第二のトンチキ壷が、取り憑いてるマルド一家の父親を操って、さっきうちに来た。うちの中には入れないから、あきらめて帰っていったんだけど、まだ何か仕掛けようとしてるみたいで、その一家の息子の命が、たぶん危ない」

 スカーレットは額に手を当てて、もう一つ大きなため息をついた。

「ヴィヴィアン、あんたってば、昨日の今日で、またそんなことになってたの?」

「スカーレットの先読みが、バッチリ当たった」

「当たってほしくなかったわ…」

 げんなりした顔のスカーレットに、タバサがガラスのカップに注いだ茶を出した。

「アイス謎茶を作ってみただ。お医者様も、飲んで一息ついてけろ」

「ありがと……いい香りね」

 ドクムギマキたちや大蛇にもアイス謎茶が行き渡るころには、スカーレットもだいぶ気持ちが落ち着いたようだった。

「マルド商会って、聞いたことがあるわ。食品関係を取り扱ってる老舗だったと思うんだけど、いつから薬壺に取り憑かれてたのかしら」

「分からない。でも、そこの家では、ユアン・グリッドたちの家と同じことが起きてる。父親が操られて、女の家族が行方不明だって」

「薬壺が何か仕掛けようとしてるっていうのは?」

「タバサの旦那さん……アーチボルド・セミグリッドの幻影を使って、今夜グリッド家の人たちに会うように仕向けてきた」

「なんですって!? それって、まさか…」

 ヴィヴィアンは、スカーレットが自分と同じ推測をしたのを察した。

「うん。もう一度、タバサを核にしてトンチキ壷を再構築して、グリッド家に取り憑くつもりなんだと思う。そのために必要な魔力を、マルド商会長の息子たちから奪う可能性がある。ギル・グリッドがやられたみたいに」

「命の危険って、そういうことだったのね……急がないと、まずそうだわね」

「うん、急ぎたい。マルド商会の奥さんと娘さんも、いまなら助けられるかもしれない。あと、第二のトンチキ壷の核にされてるアーチボルド・セミグリッドは、絶対に助ける」

 タバサが息をのむ音がした。

 ヴィヴィアンは、食堂に集まっている家族たちの一人一人を確認するように見てから、依頼の言葉を口にした。

「スカーレット、私たちに、先手必勝の大作戦を授けてほしい」

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