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紳士さん
7話 〜斧と糸と魔法と〜
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「!?」
けたたましいサイレンのような音が鳴り響く。地下通路を進むバルバラはそれに驚き、思わず天井を見上げてしまう。
「何故このような音ガ?」
このサイレンのような音は不規則なリズムで、まるで叫びのようにも聞こえ、耳を塞ぎたくなるような音量にも関わらず一か所から流れている。地下からでも判る程の爆音は漏れなく白雷の街全体に鳴り渡る。
「このようなサイレンは設置していないはずデス。悪い予感がシマスネ。急ぎマショウ」
バルバラは走る足を急がせて地下通路を進んだ。
バルバラは人形故に取得する音量の調節ができるが、地上の、それも生身のモノはそうもいかないはずだ。それに、この音を出したのが怪物に関わるモノなら、まず良い事は起きないだろう。
魔王であるゼティフォールと、雷を統べる王の雷御が共に戦っている。だから生半可な相手なら心配は無いはずだが、昨日の大規模爆発の原因であり、魔王をあそこまで追い込んだプルプルの正体もまだわかっていない現状、どうしても不安になってしまう。
魔王や雷の王が万が一危機に陥った場合、そんな相手をバルバラがどうこうできるはずもないが、少なくとも街の長として住民の避難だけでも成し遂げなければならない。
「次が最後の場所デスネ」
病院、学校、工場、大きな避難施設などのエネルギーを大量に必要とする主要施設の地下には、電気を流す魔機と大きな魔石が設置されている。
バルバラはそれを巡り、最後の一か所を残すだけになっていた。先程までローランも一緒だったが、怪物との戦いで負傷。今は避難施設で治療を行っているはずだ。
「マダ、いましたカ……」
通路の陰で魔機のある部屋を覗くと、何やら蠢く姿があった。
『crrrrr......』
それは丸太のように太く、大蛇の如く長い体を持った魚の様な姿の怪物で、緑の光を明滅させつつ宙を泳いでいた。
「蜘蛛は見当たりませんネ……。地上に出てしまったのでショウカ?」
バルバラは腕から機械を出して、魔力の糸を通して鞭にする。
悠々と泳ぐ怪物はこちらにまだ気付いておらず、魔石からエネルギーを吸い取っている。
「雷光鞭!」
怪物の不意を突いて、バルバラは雷を纏った鞭を叩きつけた。
「……効いてナイ?」
その怪物は雷をものともしなかった。それに加えて、バルバラに警戒を示したらしく緑だった光が黄色に変わる。
バルバラの腕の機械はまたもオーバーヒートを起こし、暫くは使い物にならない。
「しかたありマセン」
装着していた機械をパージして、別の機械を取り出す。
『Kyrrr!』
魚型の怪物が尻尾をバルバラ目掛けて叩きつけた。素早い攻撃だったが、バルバラはぎりぎりのところで躱す。
「危なかったデス」
バルバラの代わりに叩きつけを喰らった床は砕け、その場所は電気を帯びていた。
「通りで効かないのデスネ……」
魚は魚でも、この怪物は電気ウナギをモデルにしていたのだ。
バルバラは取り出した装置を素早く片腕に装着して糸を通す。これも鞭の形だが、今回は電気が通っていない。
「決め手に欠けマスガ、仕方ありマセン。……金鞭!」
怪物も金鞭に尻尾で対抗する。
「ぐッ!」
怪物の攻撃は予想以上に重く、何度か打ち合った後、耐え切れずバルバラは鞭ごと吹き飛ばされる。バルバラはすぐに気を取り直して、魔力の糸を壁や天井等に張り付けつつ網のようにして、壁に直撃する寸前で体を支えた。
その間も怪物は待ってくれず、追撃として噛み付いてきた。
バルバラは天井に張り付けた糸を使って咄嗟に上に回避。そして、ガラ空きになった背中に鞭を振り下ろした。
『Crrrr?!』
怪物は地面に打ち落とされた。しかし、ダメージは通っていないようで、すぐに宙に浮く。
「……そうダ!」
バルバラは閃く。
「追撃しマス!」
怪物がこちらに向き直り、防御姿勢に入ろうとするがもう遅い。
先の戦いで蛸型の怪物から手に入れた刃を懐から取り出して、鞭の通っていないほうの腕に装填、ボウガンのように発射した。
『Cyrrry!』
一撃加えた後も手を休めず、連続で刃を撃ち込んでいく。怪物が怯んでいる内に、バルバラは刃を鞭にも装着する。
「これならどうデスカ!」
刃の付いた鞭を魚型の怪物に打ち付ける。
『Grrrrahh!』
怪物は血や肉が飛ぶ事無く、石でも砕いたかのように体が裂け、動かなくなった。
「……ゴーレムでショウカ? イヤ、少し変デス。エネルギーに魔力が一切感じられませんデシタシ、研究する必要がありマスネ」
動かない事を確認して、バルバラは怪物に近づき、体の組織の一部を採取した。
『Gyrraahh!!』
その時、体から切り離されたはずの尻尾が、バルバラを背後から襲った。
「ナッ?!」
バルバラは咄嗟に魔力の糸の盾で防御を試みる。が、怪物の尻尾には高圧の電気が通っており、咄嗟の盾など難なく貫通してしまった。
「ぐァー!?」
感電したバルバラは盾も維持できなくなり、攻撃の衝撃のもと地面に叩きつけられ、倒されてしまった。
怪物はその隙を見逃さず、核を外に出して光を放つ。瞬く間に元の姿を取り戻してしまった。
バルバラは電気によって思うように身動きがとれず、まともに立ち上がることすらできない。
怪物は動けないバルバラに興味を失い、再度魔石に貯められているエネルギーを吸収する。そして、十分エネルギーを吸収した怪物は地上に続く道を進み始めた。
「ニ、逃がしマセン……」
バルバラは感電しつつも怪物に糸を括り付けた。
「助けを、呼ばないト……」
そして懐からパルトネルを取り出して、救難信号を放ち、バルバラは気を失った。
「────────ッハ!?」
「目が覚めたかい、バルバラ?」
エドウィンがバルバラに治癒魔法をかけつつ声をかける。
「エドウィン? ボクは気を失っていたのデスカ?」
バルバラが目を覚ますと、そこは怪物の襲撃によってボロボロになった市街地だった。
「ええ」
「アッ! 怪物、怪物を倒さないト!」
バルバラは意識がはっきりしてきた所で、怪物と戦っていたのを思い出した。
「それには及ばないよ。ほら、あそこを見てごらん」
エドウィンが手を向けて、ある方向を見るように促す。
「みのサン!」
そこには、魚型の怪物と一歩も引かずに戦っているみのたうろすの姿があった。
「バルバラ、君の救難信号と位置情報のおかげで駆け付ける事ができたんだよ。……本当に良かった」
「すみマセン……。心配かけマシタ」
「いえ。目が覚めたみたいだし、ここから離れるとしようか」
「待っテ! みのさんはどうするんデスカ。あの怪物は強いデスシ、他の怪物が来ないとも限りマセン。ひとりにするわけにハ……」
「大丈夫。私のできる最高位の補助魔法をかけておいたし、あの方は私達が思うよりもお強い。むしろここに居た方が邪魔になりかねない。それに、今は他の怪物の心配はなさそうだよ」
「どういう事デスカ?」
「先程、塔のあたりからサイレンのような音が鳴っていけど、バルバラも聞こえたかい?」
「ハイ」
「それから怪物の殆どが塔に向かってね。残っていた怪物も皆で力をあわせて殆ど倒しきったんだよ。だから今街にいるのは、みのたうろす様が戦っているあの怪物で最後というわけさ」
「そうでしたカ」
「ええ。みの様も、塔も気になるかもしれないが、わたし達にもやらなければならない事があるんだよ」
「何デスカ?」
「結界が弱くなっていて、今にも破れそうなんだよ。そうなればモンスターが街に入って来る」
「魔王軍の応援まで間に合いマセンカ?」
「無理だろうね。だから、応援が来るまで避難所を守り切らなければならない」
魚の怪物はみのたうろすに突進するが、みのたうろすは押されつつもそれを受け止める。
「バルバラ、おきたか!」
みのたうろすが、バルバラが目を覚ましたのに気づき声をかける。
「ハイ!」
みのたうろすは怪物を掴んだまま回転し、遠くに放り投げる。
「おれのカラダ、あったまった! あとはまかせろ、バルバラ!」
そう言うと、みのたうろすは高らかに雄たけびを上げた。
「バルバラ、行こう」
「……わかりマシタ」
バルバラは起き上がり、みのたうろすを一瞥した後、エドウィンと共に走り出した。
「ぶむむ……!」
みのたうろすはふたりが去ったのを確認すると、
「ぶもう!!」
全身と大斧に魔力を巡らせた。みのたうろすのただならぬ様子に、怪物も身構える。
『Cryrrrga!』
怪物は猛スピードで迫り、勢いを尻尾に乗せて叩きつけてきた。
「ぐむぉ!」
みのたうろすは大斧を持っていない左腕で防御するのを見て、怪物は電気を流す。先程バルバラを倒したものと同じ位か、それ以上の威力だ。
「……ぐぅ」
怪物の攻撃は重く、防御するみのたうろすは、どんどん地面にめり込んでいき、その間も休むことなく電気が流れ続けている。腕は次第に下がり、このままいけば体に直撃してしまう。
いくら強いモンスターであるミノタウロスであっても、電気は無効ではなく、感電して思うように力がでないでいた。
「……たしかに、」
しかし、みのたうろすは、下を向いていた顔を上げる。
「おまえ、つよい」
そして、左腕に力を込め直す。
「おれも、よわくなった」
少しずつ、左腕と尻尾の位置が上がる。
「だけど……」
目が光り、毛が逆立ち、ラビュリスを持つ腕に血管が走る。
「おれのほうが……」
ラビュリスに込められた魔力が、叫びのような音をたてて吹き出す。
「つよい!!」
怪物を勢いよく押し返し、大斧を両手で掴む。
『Gyarrr!』
怪物はもう一度攻撃しようと迫るが、
「ぐぅ、もっー!」
みのたうろすは渾身の力で大斧ラビュリスを振り下ろし、怪物を真っ二つにたたっ斬った。
『Crrgha……』
怪物は先程と同じように尻尾を忍ばせようとする。
だが、みのたうろうには意味のない、無駄な悪あがきだった。何故なら────
「かけらものこさん。いけ、ラビュリス!!」
その掛け声に応じ、ラビュリスは込められた全ての魔力を、爆発という方法で解放したからである。
その爆発は地面をえぐり、周囲の建物を砕き、怪物を破壊し、黒い炎で跡形も無く焼き尽くした。
「や、やりすぎた……。またおれの きゅうりょうがへらされる……」
周囲にあったはずのいくつもの建物は消え、更地になってしまったこの場所を見て、みのたうろすは途方に暮れてしまった。魔王軍は基本給は少ない代わりに、活躍次第では給料が天井無しと言われている。
そう、住民に被害は無かったとは言え、建物を消し去ってしまったとあれば減給待ったなしなのだ。
「だめだ。よけいにハラへってきたぞ……」
食いしん坊のみのたうろすにとっては死活問題。憂鬱になったみのたうろすはその場で倒れこんでしまった。
バルバラとエドウィンがそろそろ近くの避難所に着こうとした頃。
またも大音量のサイレンのような音が街に響き渡る。
そして、鳴り止むが早いか、周囲が、いや、見渡す限り全体が明るくなった。
「こ、これは……?!」
「何デスカ?! 急に明るく……」
「朝に? いや、しかしまだそんな時間では!」
「ソレニ、よく見れバ、明るいと言うヨリ……」
「ええ。まるで影が、闇が消えたような……」
異常な事態に、バルバラとエドウィンは狼狽えてしまう。
近くにいた衛兵も、この事態に不安な顔をして周りを見回していた。
「見てくだサイ!」
バルバラがある方向に指を差す。
「あれは!」
白雷の塔の頂上。闇を失った街とは裏腹に、そこにだけ、そう、その一点にだけ闇が存在していた。
「まるで、一帯の闇をあそこに集めたみたいだ……」
衛兵のひとりが溢す。その一言で衛兵たちはざわめき、異常事態に不安を感じた避難民たちも外に出てきてしまった。
「これは、ど、どういう事なんですか!?」
「俺たちはどうなってしまうんだ!」
ひとり、またひとりと住民が外に出て来てしまう。
「ああ!」
その時、街を覆っていた結界が割れ、消えて無くなってしまった。
「いけません。このままでは……! 皆さん、落ち着いて避難所に戻ってください!」
エドウィンが呼びかけるも、大勢のヒトがパニックになってしまって、声が届かない。
バルバラも、パルトネルで全ての避難所に一斉放送をし、避難所に留まるよう注意をするが、他の避難所でも同じようにパニックになっている可能性は高い。その状態でモンスターが街に入ってきてしまえば、大勢の被害者を生んでしまうことになりかねない。
「バルバラ、仕方ありません!」
エドウィンが大きな魔石の付いたヘッドセットのような魔機をバルバラに渡す。
「分かりマシタ」
バルバラは装着し、起動する。
「緊急事態だけど、あまり無理はしないようにね、バルバラ」
「……ハイ。デハ、いきマス。千里眼!」
魔機はバルバラに周辺を含め、白雷の街全体の情報を流し込む。
「クッ!」
思わずバルバラが膝をついてしまい、心配したエドウィンがかけよる。
「大丈夫か?!」
「大丈夫デス。少しふらついただけデスカラ」
バルバラは少し笑って見せ、すぐに立ち上がる。
「わかった……」
言葉を汲み取り、エドウィンは一歩引く。
「山河社稷図!」
するとバルバラの体から無数の魔力の糸が溢れ出し、瞬く間に白雷の街に広がる。
そして糸は、パニックを起こしていない衛兵とエドウィン、術者であるバルバラを残して、その他の住民全員に平和な街の幻を見せ、精神を落ち着けつつ避難所に移動させた。残った糸は重なりあい、編み込まれ、強固な結界になって全ての避難所を覆った。
「──────ッウ……」
魔石があったとはいえ、莫大な魔力を消費してしまったバルバラは倒れてしまう。
「バルバラ!」
エドウィンが駆け寄ってバルバラを支え、魔機を取り外す。
「よく頑張ったね。私達に任せて、もう休みなさい」
「すみマセン……。ア、衛兵のヒトに……」
「分かっているよ、説明はしておくから」
「ありがとうゴザイ、マス……」
そう言ってバルバラは目を閉じた。
バルバラを避難所に寝かせた後、エドウィンはパルトネルで離れた位置の衛兵と、今いる避難所の衛兵に今の状況を伝えた。
今、白雷の街の殆どヒトが“山河社稷図”というバルバラの使った魔法によって、パニックを起こさせないために、避難所から無闇に出させないために幻を見せられている事、同じくこの魔法で結界が張られた事と、強力とは言っても強いモンスターや今晩出てきた怪物の攻撃がどれ程耐えられるか分からない事。現在魔王軍が兵を招集しこちらに向かっていて、その応援が到着するまで街とヒトビトを守らなければならない事を伝えた。
「もし、この結界が突破されたらどうなるんですか?」
ひとりの衛兵が聞いた。
「住民は自分自身で逃げるように魔法をかけてはいますが、逃げる速さは個々の能力次第です。ですから、子どもやまともに逃げられない方達を優先してください。しかしそうなれば、被害は避けられないでしょうから、全力で阻止してください。私も戦いますので」
「わかりました」
「この魔法はいつ解けるんですか?」
「基本的には使用者しかこの魔法は解けませんので、バルバラの安全を優先してください。ですが……、万が一バルバラにもしもの事があっても、魔王軍にはこの魔法が解けるヒトがいると聞いた事がありますので、もしもの時はそちらに頼みましょう」
「はい……」
「この、光っているのは、暗い所が塔のあの場所だけなのはどういう事ですか?あと、あの怪物たちも……」
「率直に言いますと、現状では不明です。別の国でも噂になっている怪物ではないかと思います。ですが、まだ何とも言えません」
エドウィンは十分な情報も伝えられず、街やヒトを守るためとはいえ、得体の知れない怪物と衛兵たちに戦わせると考えると、やるせない気持ちになり渋い顔をしてしまう。
「少しの間くらい、わたし達だけでも大丈夫ですよ、エドウィンさん! 魔王軍の方達が来るなら、問題ありません」
『そうだそうだ』と衛兵たちが鼓舞する。
「ありがとうございます。皆さん」
エドウィンは気持ちが少し楽になった。
「ほらエドウィンさん、モンスターきちゃいましたよ。確か魔法が得意だったんですよね?」
話している内に、いつの間にか大量のモンスターが押し寄せて来ていた。
「ええ」
「じゃあ、まずは景気づけに大きいの、お願いします!」
「ですが……」
エドウィンは昔は名うての魔法使いだった。しかし、先程何度か使ったとは言っても、長らくまともに魔法を使っていなかったので、自分の魔法が皆を勇気づけるに足るものか自信がなかった。
だが衛兵たちは皆、戦闘態勢に入りつつ、エドウィンの号令を待っていた。
「ならば……」
エドウィンは覚悟を決める。
「──────我がエドウィンの名において命じる。雷の精霊よ、今ここに現れ、空を裂き、地を割り、敵を砕く雷刃を起こせ……」
エドウィンの周りを覆うように球体型の魔方陣が展開される。そして、発動待機状態で敵が近づいてくるのを待つ。
「エドウィンさん、魔法使いといっても、召喚魔法の方だったんですね」
近くに居る槍を構えた衛兵が言う。
「普通の魔法も使えますが、こちらの方が得意なんです。……おっと、そろそろですね」
エドウィンは自信を取り戻したのか、不敵に笑って見せた。
「皆さんいきますよ! ────来たれ、サンダーバード!」
羽のひとつひとつが雷でできた数メートルもの巨鳥が現れ、迅雷が如く一瞬にして数十ものモンスターをなぎ倒した。それに呼応し、衛兵たちは雄たけびを上げる。
「「「ぅおー!!!」」」
そして、白雷の民たちによる、家族、仲間、友、恋人たちを守る戦いの火蓋が切られた。
けたたましいサイレンのような音が鳴り響く。地下通路を進むバルバラはそれに驚き、思わず天井を見上げてしまう。
「何故このような音ガ?」
このサイレンのような音は不規則なリズムで、まるで叫びのようにも聞こえ、耳を塞ぎたくなるような音量にも関わらず一か所から流れている。地下からでも判る程の爆音は漏れなく白雷の街全体に鳴り渡る。
「このようなサイレンは設置していないはずデス。悪い予感がシマスネ。急ぎマショウ」
バルバラは走る足を急がせて地下通路を進んだ。
バルバラは人形故に取得する音量の調節ができるが、地上の、それも生身のモノはそうもいかないはずだ。それに、この音を出したのが怪物に関わるモノなら、まず良い事は起きないだろう。
魔王であるゼティフォールと、雷を統べる王の雷御が共に戦っている。だから生半可な相手なら心配は無いはずだが、昨日の大規模爆発の原因であり、魔王をあそこまで追い込んだプルプルの正体もまだわかっていない現状、どうしても不安になってしまう。
魔王や雷の王が万が一危機に陥った場合、そんな相手をバルバラがどうこうできるはずもないが、少なくとも街の長として住民の避難だけでも成し遂げなければならない。
「次が最後の場所デスネ」
病院、学校、工場、大きな避難施設などのエネルギーを大量に必要とする主要施設の地下には、電気を流す魔機と大きな魔石が設置されている。
バルバラはそれを巡り、最後の一か所を残すだけになっていた。先程までローランも一緒だったが、怪物との戦いで負傷。今は避難施設で治療を行っているはずだ。
「マダ、いましたカ……」
通路の陰で魔機のある部屋を覗くと、何やら蠢く姿があった。
『crrrrr......』
それは丸太のように太く、大蛇の如く長い体を持った魚の様な姿の怪物で、緑の光を明滅させつつ宙を泳いでいた。
「蜘蛛は見当たりませんネ……。地上に出てしまったのでショウカ?」
バルバラは腕から機械を出して、魔力の糸を通して鞭にする。
悠々と泳ぐ怪物はこちらにまだ気付いておらず、魔石からエネルギーを吸い取っている。
「雷光鞭!」
怪物の不意を突いて、バルバラは雷を纏った鞭を叩きつけた。
「……効いてナイ?」
その怪物は雷をものともしなかった。それに加えて、バルバラに警戒を示したらしく緑だった光が黄色に変わる。
バルバラの腕の機械はまたもオーバーヒートを起こし、暫くは使い物にならない。
「しかたありマセン」
装着していた機械をパージして、別の機械を取り出す。
『Kyrrr!』
魚型の怪物が尻尾をバルバラ目掛けて叩きつけた。素早い攻撃だったが、バルバラはぎりぎりのところで躱す。
「危なかったデス」
バルバラの代わりに叩きつけを喰らった床は砕け、その場所は電気を帯びていた。
「通りで効かないのデスネ……」
魚は魚でも、この怪物は電気ウナギをモデルにしていたのだ。
バルバラは取り出した装置を素早く片腕に装着して糸を通す。これも鞭の形だが、今回は電気が通っていない。
「決め手に欠けマスガ、仕方ありマセン。……金鞭!」
怪物も金鞭に尻尾で対抗する。
「ぐッ!」
怪物の攻撃は予想以上に重く、何度か打ち合った後、耐え切れずバルバラは鞭ごと吹き飛ばされる。バルバラはすぐに気を取り直して、魔力の糸を壁や天井等に張り付けつつ網のようにして、壁に直撃する寸前で体を支えた。
その間も怪物は待ってくれず、追撃として噛み付いてきた。
バルバラは天井に張り付けた糸を使って咄嗟に上に回避。そして、ガラ空きになった背中に鞭を振り下ろした。
『Crrrr?!』
怪物は地面に打ち落とされた。しかし、ダメージは通っていないようで、すぐに宙に浮く。
「……そうダ!」
バルバラは閃く。
「追撃しマス!」
怪物がこちらに向き直り、防御姿勢に入ろうとするがもう遅い。
先の戦いで蛸型の怪物から手に入れた刃を懐から取り出して、鞭の通っていないほうの腕に装填、ボウガンのように発射した。
『Cyrrry!』
一撃加えた後も手を休めず、連続で刃を撃ち込んでいく。怪物が怯んでいる内に、バルバラは刃を鞭にも装着する。
「これならどうデスカ!」
刃の付いた鞭を魚型の怪物に打ち付ける。
『Grrrrahh!』
怪物は血や肉が飛ぶ事無く、石でも砕いたかのように体が裂け、動かなくなった。
「……ゴーレムでショウカ? イヤ、少し変デス。エネルギーに魔力が一切感じられませんデシタシ、研究する必要がありマスネ」
動かない事を確認して、バルバラは怪物に近づき、体の組織の一部を採取した。
『Gyrraahh!!』
その時、体から切り離されたはずの尻尾が、バルバラを背後から襲った。
「ナッ?!」
バルバラは咄嗟に魔力の糸の盾で防御を試みる。が、怪物の尻尾には高圧の電気が通っており、咄嗟の盾など難なく貫通してしまった。
「ぐァー!?」
感電したバルバラは盾も維持できなくなり、攻撃の衝撃のもと地面に叩きつけられ、倒されてしまった。
怪物はその隙を見逃さず、核を外に出して光を放つ。瞬く間に元の姿を取り戻してしまった。
バルバラは電気によって思うように身動きがとれず、まともに立ち上がることすらできない。
怪物は動けないバルバラに興味を失い、再度魔石に貯められているエネルギーを吸収する。そして、十分エネルギーを吸収した怪物は地上に続く道を進み始めた。
「ニ、逃がしマセン……」
バルバラは感電しつつも怪物に糸を括り付けた。
「助けを、呼ばないト……」
そして懐からパルトネルを取り出して、救難信号を放ち、バルバラは気を失った。
「────────ッハ!?」
「目が覚めたかい、バルバラ?」
エドウィンがバルバラに治癒魔法をかけつつ声をかける。
「エドウィン? ボクは気を失っていたのデスカ?」
バルバラが目を覚ますと、そこは怪物の襲撃によってボロボロになった市街地だった。
「ええ」
「アッ! 怪物、怪物を倒さないト!」
バルバラは意識がはっきりしてきた所で、怪物と戦っていたのを思い出した。
「それには及ばないよ。ほら、あそこを見てごらん」
エドウィンが手を向けて、ある方向を見るように促す。
「みのサン!」
そこには、魚型の怪物と一歩も引かずに戦っているみのたうろすの姿があった。
「バルバラ、君の救難信号と位置情報のおかげで駆け付ける事ができたんだよ。……本当に良かった」
「すみマセン……。心配かけマシタ」
「いえ。目が覚めたみたいだし、ここから離れるとしようか」
「待っテ! みのさんはどうするんデスカ。あの怪物は強いデスシ、他の怪物が来ないとも限りマセン。ひとりにするわけにハ……」
「大丈夫。私のできる最高位の補助魔法をかけておいたし、あの方は私達が思うよりもお強い。むしろここに居た方が邪魔になりかねない。それに、今は他の怪物の心配はなさそうだよ」
「どういう事デスカ?」
「先程、塔のあたりからサイレンのような音が鳴っていけど、バルバラも聞こえたかい?」
「ハイ」
「それから怪物の殆どが塔に向かってね。残っていた怪物も皆で力をあわせて殆ど倒しきったんだよ。だから今街にいるのは、みのたうろす様が戦っているあの怪物で最後というわけさ」
「そうでしたカ」
「ええ。みの様も、塔も気になるかもしれないが、わたし達にもやらなければならない事があるんだよ」
「何デスカ?」
「結界が弱くなっていて、今にも破れそうなんだよ。そうなればモンスターが街に入って来る」
「魔王軍の応援まで間に合いマセンカ?」
「無理だろうね。だから、応援が来るまで避難所を守り切らなければならない」
魚の怪物はみのたうろすに突進するが、みのたうろすは押されつつもそれを受け止める。
「バルバラ、おきたか!」
みのたうろすが、バルバラが目を覚ましたのに気づき声をかける。
「ハイ!」
みのたうろすは怪物を掴んだまま回転し、遠くに放り投げる。
「おれのカラダ、あったまった! あとはまかせろ、バルバラ!」
そう言うと、みのたうろすは高らかに雄たけびを上げた。
「バルバラ、行こう」
「……わかりマシタ」
バルバラは起き上がり、みのたうろすを一瞥した後、エドウィンと共に走り出した。
「ぶむむ……!」
みのたうろすはふたりが去ったのを確認すると、
「ぶもう!!」
全身と大斧に魔力を巡らせた。みのたうろすのただならぬ様子に、怪物も身構える。
『Cryrrrga!』
怪物は猛スピードで迫り、勢いを尻尾に乗せて叩きつけてきた。
「ぐむぉ!」
みのたうろすは大斧を持っていない左腕で防御するのを見て、怪物は電気を流す。先程バルバラを倒したものと同じ位か、それ以上の威力だ。
「……ぐぅ」
怪物の攻撃は重く、防御するみのたうろすは、どんどん地面にめり込んでいき、その間も休むことなく電気が流れ続けている。腕は次第に下がり、このままいけば体に直撃してしまう。
いくら強いモンスターであるミノタウロスであっても、電気は無効ではなく、感電して思うように力がでないでいた。
「……たしかに、」
しかし、みのたうろすは、下を向いていた顔を上げる。
「おまえ、つよい」
そして、左腕に力を込め直す。
「おれも、よわくなった」
少しずつ、左腕と尻尾の位置が上がる。
「だけど……」
目が光り、毛が逆立ち、ラビュリスを持つ腕に血管が走る。
「おれのほうが……」
ラビュリスに込められた魔力が、叫びのような音をたてて吹き出す。
「つよい!!」
怪物を勢いよく押し返し、大斧を両手で掴む。
『Gyarrr!』
怪物はもう一度攻撃しようと迫るが、
「ぐぅ、もっー!」
みのたうろすは渾身の力で大斧ラビュリスを振り下ろし、怪物を真っ二つにたたっ斬った。
『Crrgha……』
怪物は先程と同じように尻尾を忍ばせようとする。
だが、みのたうろうには意味のない、無駄な悪あがきだった。何故なら────
「かけらものこさん。いけ、ラビュリス!!」
その掛け声に応じ、ラビュリスは込められた全ての魔力を、爆発という方法で解放したからである。
その爆発は地面をえぐり、周囲の建物を砕き、怪物を破壊し、黒い炎で跡形も無く焼き尽くした。
「や、やりすぎた……。またおれの きゅうりょうがへらされる……」
周囲にあったはずのいくつもの建物は消え、更地になってしまったこの場所を見て、みのたうろすは途方に暮れてしまった。魔王軍は基本給は少ない代わりに、活躍次第では給料が天井無しと言われている。
そう、住民に被害は無かったとは言え、建物を消し去ってしまったとあれば減給待ったなしなのだ。
「だめだ。よけいにハラへってきたぞ……」
食いしん坊のみのたうろすにとっては死活問題。憂鬱になったみのたうろすはその場で倒れこんでしまった。
バルバラとエドウィンがそろそろ近くの避難所に着こうとした頃。
またも大音量のサイレンのような音が街に響き渡る。
そして、鳴り止むが早いか、周囲が、いや、見渡す限り全体が明るくなった。
「こ、これは……?!」
「何デスカ?! 急に明るく……」
「朝に? いや、しかしまだそんな時間では!」
「ソレニ、よく見れバ、明るいと言うヨリ……」
「ええ。まるで影が、闇が消えたような……」
異常な事態に、バルバラとエドウィンは狼狽えてしまう。
近くにいた衛兵も、この事態に不安な顔をして周りを見回していた。
「見てくだサイ!」
バルバラがある方向に指を差す。
「あれは!」
白雷の塔の頂上。闇を失った街とは裏腹に、そこにだけ、そう、その一点にだけ闇が存在していた。
「まるで、一帯の闇をあそこに集めたみたいだ……」
衛兵のひとりが溢す。その一言で衛兵たちはざわめき、異常事態に不安を感じた避難民たちも外に出てきてしまった。
「これは、ど、どういう事なんですか!?」
「俺たちはどうなってしまうんだ!」
ひとり、またひとりと住民が外に出て来てしまう。
「ああ!」
その時、街を覆っていた結界が割れ、消えて無くなってしまった。
「いけません。このままでは……! 皆さん、落ち着いて避難所に戻ってください!」
エドウィンが呼びかけるも、大勢のヒトがパニックになってしまって、声が届かない。
バルバラも、パルトネルで全ての避難所に一斉放送をし、避難所に留まるよう注意をするが、他の避難所でも同じようにパニックになっている可能性は高い。その状態でモンスターが街に入ってきてしまえば、大勢の被害者を生んでしまうことになりかねない。
「バルバラ、仕方ありません!」
エドウィンが大きな魔石の付いたヘッドセットのような魔機をバルバラに渡す。
「分かりマシタ」
バルバラは装着し、起動する。
「緊急事態だけど、あまり無理はしないようにね、バルバラ」
「……ハイ。デハ、いきマス。千里眼!」
魔機はバルバラに周辺を含め、白雷の街全体の情報を流し込む。
「クッ!」
思わずバルバラが膝をついてしまい、心配したエドウィンがかけよる。
「大丈夫か?!」
「大丈夫デス。少しふらついただけデスカラ」
バルバラは少し笑って見せ、すぐに立ち上がる。
「わかった……」
言葉を汲み取り、エドウィンは一歩引く。
「山河社稷図!」
するとバルバラの体から無数の魔力の糸が溢れ出し、瞬く間に白雷の街に広がる。
そして糸は、パニックを起こしていない衛兵とエドウィン、術者であるバルバラを残して、その他の住民全員に平和な街の幻を見せ、精神を落ち着けつつ避難所に移動させた。残った糸は重なりあい、編み込まれ、強固な結界になって全ての避難所を覆った。
「──────ッウ……」
魔石があったとはいえ、莫大な魔力を消費してしまったバルバラは倒れてしまう。
「バルバラ!」
エドウィンが駆け寄ってバルバラを支え、魔機を取り外す。
「よく頑張ったね。私達に任せて、もう休みなさい」
「すみマセン……。ア、衛兵のヒトに……」
「分かっているよ、説明はしておくから」
「ありがとうゴザイ、マス……」
そう言ってバルバラは目を閉じた。
バルバラを避難所に寝かせた後、エドウィンはパルトネルで離れた位置の衛兵と、今いる避難所の衛兵に今の状況を伝えた。
今、白雷の街の殆どヒトが“山河社稷図”というバルバラの使った魔法によって、パニックを起こさせないために、避難所から無闇に出させないために幻を見せられている事、同じくこの魔法で結界が張られた事と、強力とは言っても強いモンスターや今晩出てきた怪物の攻撃がどれ程耐えられるか分からない事。現在魔王軍が兵を招集しこちらに向かっていて、その応援が到着するまで街とヒトビトを守らなければならない事を伝えた。
「もし、この結界が突破されたらどうなるんですか?」
ひとりの衛兵が聞いた。
「住民は自分自身で逃げるように魔法をかけてはいますが、逃げる速さは個々の能力次第です。ですから、子どもやまともに逃げられない方達を優先してください。しかしそうなれば、被害は避けられないでしょうから、全力で阻止してください。私も戦いますので」
「わかりました」
「この魔法はいつ解けるんですか?」
「基本的には使用者しかこの魔法は解けませんので、バルバラの安全を優先してください。ですが……、万が一バルバラにもしもの事があっても、魔王軍にはこの魔法が解けるヒトがいると聞いた事がありますので、もしもの時はそちらに頼みましょう」
「はい……」
「この、光っているのは、暗い所が塔のあの場所だけなのはどういう事ですか?あと、あの怪物たちも……」
「率直に言いますと、現状では不明です。別の国でも噂になっている怪物ではないかと思います。ですが、まだ何とも言えません」
エドウィンは十分な情報も伝えられず、街やヒトを守るためとはいえ、得体の知れない怪物と衛兵たちに戦わせると考えると、やるせない気持ちになり渋い顔をしてしまう。
「少しの間くらい、わたし達だけでも大丈夫ですよ、エドウィンさん! 魔王軍の方達が来るなら、問題ありません」
『そうだそうだ』と衛兵たちが鼓舞する。
「ありがとうございます。皆さん」
エドウィンは気持ちが少し楽になった。
「ほらエドウィンさん、モンスターきちゃいましたよ。確か魔法が得意だったんですよね?」
話している内に、いつの間にか大量のモンスターが押し寄せて来ていた。
「ええ」
「じゃあ、まずは景気づけに大きいの、お願いします!」
「ですが……」
エドウィンは昔は名うての魔法使いだった。しかし、先程何度か使ったとは言っても、長らくまともに魔法を使っていなかったので、自分の魔法が皆を勇気づけるに足るものか自信がなかった。
だが衛兵たちは皆、戦闘態勢に入りつつ、エドウィンの号令を待っていた。
「ならば……」
エドウィンは覚悟を決める。
「──────我がエドウィンの名において命じる。雷の精霊よ、今ここに現れ、空を裂き、地を割り、敵を砕く雷刃を起こせ……」
エドウィンの周りを覆うように球体型の魔方陣が展開される。そして、発動待機状態で敵が近づいてくるのを待つ。
「エドウィンさん、魔法使いといっても、召喚魔法の方だったんですね」
近くに居る槍を構えた衛兵が言う。
「普通の魔法も使えますが、こちらの方が得意なんです。……おっと、そろそろですね」
エドウィンは自信を取り戻したのか、不敵に笑って見せた。
「皆さんいきますよ! ────来たれ、サンダーバード!」
羽のひとつひとつが雷でできた数メートルもの巨鳥が現れ、迅雷が如く一瞬にして数十ものモンスターをなぎ倒した。それに呼応し、衛兵たちは雄たけびを上げる。
「「「ぅおー!!!」」」
そして、白雷の民たちによる、家族、仲間、友、恋人たちを守る戦いの火蓋が切られた。
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