123 / 153
瘴気
しおりを挟む
意識が朦朧とするシャロンお母さんに右手をかざす。ごめん、意志を確認する時間は無さそうだ。
「浄化……っ!?」
バチバチバチッ!
僕の右手の内側を何かが貫いた。
「ぐっ」
それに歯を食いしばって耐えていると、
「アアアアアッ!」
浄化をかけた瞬間、お母さんの身体が跳ね上がり、海老反りになって絶叫する。
「アAアア亜アガ餓アァァッ!!」
痙攣し白目を剥く声が人間のそれではない。ベッドが壊れそうな程に激しく揺れ、シャフナさんが落ちそうになる。
「お母さんっ!」
「こ、こらシャロン! そっちは危険だ!」
お母さんの無惨な変貌に耐えられなくなったのか、シャロンちゃんが飛び出す。
バリッ!
「きゃっ!」
シャロンちゃんが見えない壁に阻まれ、弾き出される。ブラガさんが素早く近付いて彼女を連れ戻した。
『ォォォ……』
シャフナさんの身体から黒い影が暗雲のように立ち上る。それは人の形にも見えたし、全く別の物にも見えた。
(……なんだこれ、歯車?)
「これは……まさかアセンブラの因子……!? ケイ! 離れて!」
ベステルタが慌てて、僕を影から引き離そうとしたが、
「いっ!」
影が僕の腕を掴む方が早かった。
「ぐっ、ああっ!」
影は絶えず姿を変える不定形。
掴まれた腕がじわじわ変色していく。鮮血と深淵のような黒赤の筋が、雷紋のように僕の右腕を侵食する。痛みよりも恐怖。何かが自分を食い荒らしているような、侵食されていく怖気。
それはどう考えても僕の頭を目指している。
アセンブラの因子? 冗談じゃないよ。これの侵食を許したら、絶対やばいことになる。
「ケイから離れろ!」
ベステルタが不定形の影の腕を掴んで引き離そうとする。
ジュッ、シュウウウゥゥ!
「く……ううぅぅ!」
肉の焼ける嫌な音と共に、彼女の手から白煙が立ち上った。
「だめだ! ベステルタ、手を放せ!」
「放すわけ、ないでしょ……ッ!」
ギリギリ、と歯を食いしばるベステルタ。奥歯を噛み砕いたのか、口から血が流れている。
(このままじゃベステルタが……ッ!)
まさか、こんなことになるなんて。
くそっ、自分の判断の甘さを嘆いている暇は無い。とにかく浄化しなければ。幸い、ベステルタの強引な対処のおかげで、影の侵食は遅くなっている。
「浄化! 浄化! 浄化ぁ!」
叫ぶ。
とにかく叫ぶ。
異世界に来て一番叫んだ。
『ォ……ォォ……』
部屋の中が渦巻いている。黒い瘴気はシャフナさんからとめどなく溢れ、空気を重く澱ませる。
呼吸が苦しい。浄化が届かない。
影は僕をあざ笑うように、接近してくる。
「離れろ……! ケイから離れろ……っ!」
影の腕を握りしめるベステルタの掌から血が落ちる。ぽたり、ぽたり、と床が赤く濡れる。
「浄化! 浄化! 浄化されろよ!」
『ぁぁ……ぁ……ア……』
浄化が影に当たる度にシャリーン、シャリィン……と弾かれ光に消える。
(くそっ、なんで浄化が効かないんだ!)
今までこんなことは無かった。
浄化は必ずうまくいったし、皆感謝してくれた。
以前の僕とは違う。僕は何でもできる。ここなら何でもできる。きっとできるはずなんだ。無能で無気力で、受け身で怠惰な僕とは違う。僕は影じゃない。光だ。光でいいはずなんだ。
「浄化……浄化……頼むよ……!」
影の浸食が肘を超える。アセンブラの因子が嘲笑う。ベステルタがさっきから言葉を発していない。心配だ。でも、僕も余裕が無い。いよいよ恐怖よりも痛みが大きくなってきた。腕が作り替えられる。無理やり皮膚を剥がされて、肉を裏返されて、血を根こそぎ吸い出され、熱湯を注がれる。そんな途方もない痛み。
「ああああああああ浄化ああああああああああ!!!」
言葉を発しているのかもわからない。僕は今とにかく叫んだ。この痛みを上書きする何かが無いと意識がバラバラに砕け散りそうだった。
『オオォ……オォ……』
ベステルタの手がずるりと抜け落ちたのを目の端で捉えた。べっとりと、彼女の血が腕に付着している。くそが。くそくそ。それだけは絶対だめだ。駄目だ駄目だ。
シャリン、シャリン……。
その間も僕の浄化は弾かれ続ける。輝きはすぐに闇に呑まれ消える。
浸食はとうとう肩にまで侵食してきた。心臓の鼓動に合わせ、何かの足音が近づいてくる。
(どうすればいい、どうすれば……!)
影。影に光が届かない。影を晴らすにはどうすればいい。影から逃れるには……。
その時、脳の奥深く。仄暗く、枷に繋がれた女。顔が半分爛れたあいつが囁く。
『人は低きに流れるが、同様に深きに潜ることができる……。
練り上げ、喚び覚ませ、貴様の反攻を』
爛れた容貌は、瞳を煌めかせ、再び消える。
声が僕を導く。その一瞬の間に、僕は悟った。
「練喚攻!」
痛めつけられた身体を奮い立たせ、喚ぶ。僕の反攻を。
『深層!』
イメージを練り上げる。僕は深くに潜る。影から逃れ、自分の内へ。その深層へ。
ベステルタの魔力を体の隅々にまで行き渡らせる。身体の奥深く。内臓一つ一つに。
脳内に別の声が響き渡る。
<『深ナル者』に至りました。『浄化』を『浄火』に拡張しますか?>
腹が立つくらいに冷静なアナウンス。この際、誰かは問わない。
「なんでもいいから早くしてくれ!!」
<肯定を確認。深ナル者よ、清浄なる汝の火炎で影を払い給え>
祈りのようなアナウンスが終わると同時に、浄化とは違う力が漲るのを感じた。
深淵に潜む燃えたぎる欲望。僕の反攻の火炎が現出する。ベステルタの血が発光する。
いける。
これならいける。
「浄火!」
ブワァァァッ!
黒灼した右腕が紫炎に包まれる。指先から背中にかけて、すべてを焦がす情動を感じるのに、全く熱くない。
それはやがて形を成し、顕現する。
『ガァァァァァァッ!』
紫炎の獣。
そいつが目を爛々に輝かせ、憎しみのアギトを煌めかせる。
何もかも分からないけど、やることは一つだけ。
「燃え去れ!」
浄化の紫煙が意志に沿って影を払う。意志を持った火炎は、獣のように駆け抜け、僕たちを嘲笑う影を撃った。
『……! ォォォ……ォオオオ……!』
さっきとはまるで違う。影が苦しんでいる。
浄火が影に喰らいつき、離さない。焔の牙は弾かれず、その黒い身体を噛み砕く。炎の爪が、その身を引き裂く。紫炎の獣は影の内側に潜り、食い荒らす。
『……ぉぉ……ぉ』
影は身体を捩り、逃れようとするが、紫炎はそれを許さない。牙爪が火の粉を散らす度、黒い粒子が溢れ落ち消えていく。
『ぁ……ェ……ァ……』
最後の一片まで喰らい尽くされたアセンブラの因子は、遠い残響のような断末魔の声の後、残った僅か身体を紫炎の獣に踏み潰され、完全に消滅した。
唐突に沈黙が訪れる。
ちゅんちゅん、と鳥の鳴き声が聞こえる。
「終わった……のか?」
ブラガさんが恐る恐る口を開いた。
「そうみたいだね……」
ものすごく疲れた。やばい、気を抜いたら寝ちゃいそう。でも、ぐっとこらえて部屋を見渡す。ぴくりともしないシャフナさん。でも顔色がよくなっている気がする。今は人として認識できる。
そして……膝を突くベステルタ。良かった……意識はあるみたいだ。本当によかったよ……。
「……」
でも元気がない。俯いて、影を掴んだ手をじっと見つめている。どこか痛いのかな。血が出ていたし、心配だ。
「お、お母さん!」
はっ、と我に返ったシャロンちゃんがシャフナさんに駆け寄る。そうだな、まずはできるところからやろう。
「ブラガさん、シャフナさんを見てあげて。僕はベステルタを」
「お、おう。わかった」
ブラガさんはシャロンちゃんと共にシャフナさんの状態を確認し始めた。思ったよりずっと冷静に行動できているな、僕。まあ、あまりのことに現実感が無いだけなんだけどさ。
「ベステルタ、大丈夫?」
「……ええ。問題ないわ。一瞬意識が飛んだだけ」
それって途轍もないことだよね? 世の中に亜人の意識を飛ばせる存在がいるなんて思いもしなかった。
「手は問題ないの?」
影を握った彼女の手。煙が出て血が滴っていたからとても心配だ。
「暫く痛かったんだけど、あの影が消えたら治まったわ。今は、ほら」
笑ってぷらぷら手を振るベステルタ。でも、その笑顔が辛そうだ。
「無理しないでね」
「しないわよ。ただ……悔しいだけ」
はぁー、と深く溜め息を吐いた。珍しい。
「ケイこそ、腕は大丈夫? かなり侵食されていたけど」
「ん? ああ、大丈夫だよ。ほら……あれ?」
ベステルタみたいに手をぷらぷらさせると、黒灼の腕が一緒に揺れた。指先から真っ黒に染まり、血管に沿って紅い筋が幾重にも連なっている。
まるで夜空に迸る朱い熱雷だ。
こ、これは……。
「めちゃくちゃかっこいい……」
絶対めちゃつよなパンチ撃てる。
「な、なによそれ……ずるいわ……」
ベステルタが羨ましそうに見てくる。
衝撃のタネズブリット撃っちゃおうかな。
少しの間、何も考えずにかっこいいポーズをしまくった。仕方ない。これからのことを考えると気が重かったからね。現実逃避だ。
「浄化……っ!?」
バチバチバチッ!
僕の右手の内側を何かが貫いた。
「ぐっ」
それに歯を食いしばって耐えていると、
「アアアアアッ!」
浄化をかけた瞬間、お母さんの身体が跳ね上がり、海老反りになって絶叫する。
「アAアア亜アガ餓アァァッ!!」
痙攣し白目を剥く声が人間のそれではない。ベッドが壊れそうな程に激しく揺れ、シャフナさんが落ちそうになる。
「お母さんっ!」
「こ、こらシャロン! そっちは危険だ!」
お母さんの無惨な変貌に耐えられなくなったのか、シャロンちゃんが飛び出す。
バリッ!
「きゃっ!」
シャロンちゃんが見えない壁に阻まれ、弾き出される。ブラガさんが素早く近付いて彼女を連れ戻した。
『ォォォ……』
シャフナさんの身体から黒い影が暗雲のように立ち上る。それは人の形にも見えたし、全く別の物にも見えた。
(……なんだこれ、歯車?)
「これは……まさかアセンブラの因子……!? ケイ! 離れて!」
ベステルタが慌てて、僕を影から引き離そうとしたが、
「いっ!」
影が僕の腕を掴む方が早かった。
「ぐっ、ああっ!」
影は絶えず姿を変える不定形。
掴まれた腕がじわじわ変色していく。鮮血と深淵のような黒赤の筋が、雷紋のように僕の右腕を侵食する。痛みよりも恐怖。何かが自分を食い荒らしているような、侵食されていく怖気。
それはどう考えても僕の頭を目指している。
アセンブラの因子? 冗談じゃないよ。これの侵食を許したら、絶対やばいことになる。
「ケイから離れろ!」
ベステルタが不定形の影の腕を掴んで引き離そうとする。
ジュッ、シュウウウゥゥ!
「く……ううぅぅ!」
肉の焼ける嫌な音と共に、彼女の手から白煙が立ち上った。
「だめだ! ベステルタ、手を放せ!」
「放すわけ、ないでしょ……ッ!」
ギリギリ、と歯を食いしばるベステルタ。奥歯を噛み砕いたのか、口から血が流れている。
(このままじゃベステルタが……ッ!)
まさか、こんなことになるなんて。
くそっ、自分の判断の甘さを嘆いている暇は無い。とにかく浄化しなければ。幸い、ベステルタの強引な対処のおかげで、影の侵食は遅くなっている。
「浄化! 浄化! 浄化ぁ!」
叫ぶ。
とにかく叫ぶ。
異世界に来て一番叫んだ。
『ォ……ォォ……』
部屋の中が渦巻いている。黒い瘴気はシャフナさんからとめどなく溢れ、空気を重く澱ませる。
呼吸が苦しい。浄化が届かない。
影は僕をあざ笑うように、接近してくる。
「離れろ……! ケイから離れろ……っ!」
影の腕を握りしめるベステルタの掌から血が落ちる。ぽたり、ぽたり、と床が赤く濡れる。
「浄化! 浄化! 浄化されろよ!」
『ぁぁ……ぁ……ア……』
浄化が影に当たる度にシャリーン、シャリィン……と弾かれ光に消える。
(くそっ、なんで浄化が効かないんだ!)
今までこんなことは無かった。
浄化は必ずうまくいったし、皆感謝してくれた。
以前の僕とは違う。僕は何でもできる。ここなら何でもできる。きっとできるはずなんだ。無能で無気力で、受け身で怠惰な僕とは違う。僕は影じゃない。光だ。光でいいはずなんだ。
「浄化……浄化……頼むよ……!」
影の浸食が肘を超える。アセンブラの因子が嘲笑う。ベステルタがさっきから言葉を発していない。心配だ。でも、僕も余裕が無い。いよいよ恐怖よりも痛みが大きくなってきた。腕が作り替えられる。無理やり皮膚を剥がされて、肉を裏返されて、血を根こそぎ吸い出され、熱湯を注がれる。そんな途方もない痛み。
「ああああああああ浄化ああああああああああ!!!」
言葉を発しているのかもわからない。僕は今とにかく叫んだ。この痛みを上書きする何かが無いと意識がバラバラに砕け散りそうだった。
『オオォ……オォ……』
ベステルタの手がずるりと抜け落ちたのを目の端で捉えた。べっとりと、彼女の血が腕に付着している。くそが。くそくそ。それだけは絶対だめだ。駄目だ駄目だ。
シャリン、シャリン……。
その間も僕の浄化は弾かれ続ける。輝きはすぐに闇に呑まれ消える。
浸食はとうとう肩にまで侵食してきた。心臓の鼓動に合わせ、何かの足音が近づいてくる。
(どうすればいい、どうすれば……!)
影。影に光が届かない。影を晴らすにはどうすればいい。影から逃れるには……。
その時、脳の奥深く。仄暗く、枷に繋がれた女。顔が半分爛れたあいつが囁く。
『人は低きに流れるが、同様に深きに潜ることができる……。
練り上げ、喚び覚ませ、貴様の反攻を』
爛れた容貌は、瞳を煌めかせ、再び消える。
声が僕を導く。その一瞬の間に、僕は悟った。
「練喚攻!」
痛めつけられた身体を奮い立たせ、喚ぶ。僕の反攻を。
『深層!』
イメージを練り上げる。僕は深くに潜る。影から逃れ、自分の内へ。その深層へ。
ベステルタの魔力を体の隅々にまで行き渡らせる。身体の奥深く。内臓一つ一つに。
脳内に別の声が響き渡る。
<『深ナル者』に至りました。『浄化』を『浄火』に拡張しますか?>
腹が立つくらいに冷静なアナウンス。この際、誰かは問わない。
「なんでもいいから早くしてくれ!!」
<肯定を確認。深ナル者よ、清浄なる汝の火炎で影を払い給え>
祈りのようなアナウンスが終わると同時に、浄化とは違う力が漲るのを感じた。
深淵に潜む燃えたぎる欲望。僕の反攻の火炎が現出する。ベステルタの血が発光する。
いける。
これならいける。
「浄火!」
ブワァァァッ!
黒灼した右腕が紫炎に包まれる。指先から背中にかけて、すべてを焦がす情動を感じるのに、全く熱くない。
それはやがて形を成し、顕現する。
『ガァァァァァァッ!』
紫炎の獣。
そいつが目を爛々に輝かせ、憎しみのアギトを煌めかせる。
何もかも分からないけど、やることは一つだけ。
「燃え去れ!」
浄化の紫煙が意志に沿って影を払う。意志を持った火炎は、獣のように駆け抜け、僕たちを嘲笑う影を撃った。
『……! ォォォ……ォオオオ……!』
さっきとはまるで違う。影が苦しんでいる。
浄火が影に喰らいつき、離さない。焔の牙は弾かれず、その黒い身体を噛み砕く。炎の爪が、その身を引き裂く。紫炎の獣は影の内側に潜り、食い荒らす。
『……ぉぉ……ぉ』
影は身体を捩り、逃れようとするが、紫炎はそれを許さない。牙爪が火の粉を散らす度、黒い粒子が溢れ落ち消えていく。
『ぁ……ェ……ァ……』
最後の一片まで喰らい尽くされたアセンブラの因子は、遠い残響のような断末魔の声の後、残った僅か身体を紫炎の獣に踏み潰され、完全に消滅した。
唐突に沈黙が訪れる。
ちゅんちゅん、と鳥の鳴き声が聞こえる。
「終わった……のか?」
ブラガさんが恐る恐る口を開いた。
「そうみたいだね……」
ものすごく疲れた。やばい、気を抜いたら寝ちゃいそう。でも、ぐっとこらえて部屋を見渡す。ぴくりともしないシャフナさん。でも顔色がよくなっている気がする。今は人として認識できる。
そして……膝を突くベステルタ。良かった……意識はあるみたいだ。本当によかったよ……。
「……」
でも元気がない。俯いて、影を掴んだ手をじっと見つめている。どこか痛いのかな。血が出ていたし、心配だ。
「お、お母さん!」
はっ、と我に返ったシャロンちゃんがシャフナさんに駆け寄る。そうだな、まずはできるところからやろう。
「ブラガさん、シャフナさんを見てあげて。僕はベステルタを」
「お、おう。わかった」
ブラガさんはシャロンちゃんと共にシャフナさんの状態を確認し始めた。思ったよりずっと冷静に行動できているな、僕。まあ、あまりのことに現実感が無いだけなんだけどさ。
「ベステルタ、大丈夫?」
「……ええ。問題ないわ。一瞬意識が飛んだだけ」
それって途轍もないことだよね? 世の中に亜人の意識を飛ばせる存在がいるなんて思いもしなかった。
「手は問題ないの?」
影を握った彼女の手。煙が出て血が滴っていたからとても心配だ。
「暫く痛かったんだけど、あの影が消えたら治まったわ。今は、ほら」
笑ってぷらぷら手を振るベステルタ。でも、その笑顔が辛そうだ。
「無理しないでね」
「しないわよ。ただ……悔しいだけ」
はぁー、と深く溜め息を吐いた。珍しい。
「ケイこそ、腕は大丈夫? かなり侵食されていたけど」
「ん? ああ、大丈夫だよ。ほら……あれ?」
ベステルタみたいに手をぷらぷらさせると、黒灼の腕が一緒に揺れた。指先から真っ黒に染まり、血管に沿って紅い筋が幾重にも連なっている。
まるで夜空に迸る朱い熱雷だ。
こ、これは……。
「めちゃくちゃかっこいい……」
絶対めちゃつよなパンチ撃てる。
「な、なによそれ……ずるいわ……」
ベステルタが羨ましそうに見てくる。
衝撃のタネズブリット撃っちゃおうかな。
少しの間、何も考えずにかっこいいポーズをしまくった。仕方ない。これからのことを考えると気が重かったからね。現実逃避だ。
1
お気に入りに追加
1,413
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています
もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。
使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる