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僕は屑
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その後、僕たちは超特急で迷宮から地上に戻った。
面倒くさくなったベステルタが、とうとう戦車にジョブチェンジしたんだよ。僕を担いで、全速力で駆け抜けただけなんだけどね。雑魚魔獣は無視して飛び越えたり、どうしても邪魔なやつは岩を蹴り砕いてその破片で吹き飛ばしたりしていた。時折冒険者と出くわしたけど、そこは彼女のベステル・センサーで事前に察知。適当にやり過ごした。こんな勢いで迷宮攻略していたらさすがに目立つからね。と言う感じで、あっという間に一層まで戻ってきた。潜った時の半分以下の時間じゃないかな。これ、彼女一人の攻略ならもっと速くなりそうだ……。
迷宮から出ると、すっかり日が落ちていた。ほとんど夜だな。もうそんな時間か。カリンたち、僕を待たずにご飯食べていて欲しいな。今日は疲れたろうし、ゆっくり休んで欲しい。さっさとやることやって帰ろう。
「おや……貴方はラーズさんの教え子さんでは?」
衛兵の人に話しかけられた。えーっと、この人は誰だっけな。
「セルヒムさん……ですよね?」
「おお、覚えていて下さいましたか。その通りです。私が休んでいる間に、てっきり戻ったのかと思っていました」
「いえいえ、そのまま五層を攻略してきたんですよ」
「ははは、なるほど。それは血気盛んですな……攻略?」
「ケイ、早く帰りましょ。身体を拭きたいわ」
「そうだね。セルヒムさん、それでは失礼します」
混乱するセルヒムさんを背に僕たちは冒険者ギルドに向かう。早くシャールちゃんに会いたい。それで身体を拭いてご飯食べてスロー繁りじゅんじゅわ搾乳してたっぷり寝たい。ていうかデイライトは居心地良いんだけど、唯一、温泉に入れないのがつらい。どうにかならないかな。
「あ、ケイさん。戻られたんですね」
ちょうどシャールちゃんが受付にいた。うーん、相変わらずちょっときょどっているのが可愛い。エンジェル。天使。
「シャールちゃん……」
「え……」
あ、やっべ。思わず心の声が出てしまった。
「ごごごごめんね。何かちゃん付けで呼びたくなってささささ」
「いいっ、いえいえいえ、気にしないで、くっ、くださいっ」
めっちゃどもってしまった。駄目だ。カリンとかシルビアはほとんど身内みたいなもんだから気にならないけど、シャールちゃんはまだそういうんじゃない。めっちゃどもっちゃう。彼女もめっちゃきょどってる。絶対キモがられたよ。だめだ、心が。収拾がつかない。
「ケイ、何やってるのよ。認定証? とか提出するんでしょ?」
そうだった。呆れ顔のベステルタに促され、我を取り戻す。
「ご、ごほん。えっと五層突破したんだ。はい、これが認定証ね」
「え? 突破ですか? 今日初めて潜ったんですよね?」
目をぱちくりさせて驚く。今気付いたけどまつ毛長いな。
「そうそう。まあ運が良かったよ。それに僕はベステルタの後を付いていくだけだったしね」
「は、はぁ。認定証お預かりしますね……はい確かに。認定官、カーク・サメットのサインを確認しました……本当に突破されたんですね」
あ、シャールちゃんの視線が心なしか熱い気がする。ぐふふ、やった。やったぜ。もっと見てくれ。
「本当に突破したよ。あと、これカークさんからの預かり物で、持ち主不在の認定証ね。たぶん意味は分かると思うんだけど」
「持ち主不在……そういうことですか。理解しました。丁重にお預かりします。ギルドに属するものとしてお礼申し上げます。ありがとうございます」
神妙な顔でぺこり、とかわいいお辞儀をするシャールちゃん。シャールちゃんって真面目でいい子だよな。嫌な先輩に怒鳴られたり、仕事うまくいかなくても、出来る範囲で対応してくれるし。彼女もカークさんみたいに誇りをもって仕事しているのかな、やっぱり。きっとシャールちゃんには、カークさんみたいに優しいけど熱心な上司が合っていると思うんだよな。あー、健気。デート誘いたい。でも誘い方なんか分からん。繁殖術もデートの誘い方では効果発揮しないからな。
「仕事増えちゃうかな。ごめんね」
「いえいえ。手分けしてやればすぐですし、持ち主不在の認定証はなかなか迷宮から届かないので。遺族にとっては大事な品です」
彼女は丁重に不在認定証を机の下にしまった。
カークさんといい、シャールちゃんといい、すごいよな。不遇な職場環境なのに誇りと誠実さを持って仕事している。僕には……きっと無理だ。こうやってちゃんと働いている人や、仕事に誇りを持っている人、仕事が出来なくても頑張っている人は、本当にすごい。僕にはできなかった。僕はまぁ、無能社畜だったからな。
ていうか、そんな頑張っている子とデートしたいなんて、浅ましい考えだよ。はぁ、屑野郎だな僕は。
「ではギルドカードをIランクに書き換えますね。カードを出して頂けますか?」
「うん。はい、どうぞ」
「お預かりしますね。こちらでお待ちください。あ、あとラーズさんから言伝です。できれば明日の朝か夜に顔を出してほしいそうです」
「明日か。了解。ありがとう」
何の用だろう?
シャールちゃんはとてとて、と小走りで奥に引っ込む。小振りなお尻だ。むぎゅってしたい。どんな下着なんだろう。僕は屑だ。
少し気持ちが落ち込みながら待っていると、再びとてとてシャールちゃんが戻ってきた。
「こちらがIランクのギルドカードになります。こ、この前登録したのにもうIランクだなんて、流石ですね。尊敬します」
きゅん。
シャールちゃんが誉めてくれた。途端に僕の心で天使がラッパを吹き鳴らし、ファンファーレが響き渡る。
「シャールちゃんが手伝ってくれたおかげだよ」
「私なんて……。だめだめです。ケイさんがすごいんですよ」
「そ、そんなことないよ」
シャールちゃんが落ち込んでいる。こんな時どうすればいい。助けてくれ、フレイムベア先輩。
「ケイ、この受付嬢にランラビット渡すんじゃないの?」
まごついている僕を見かねてベステルタが助け船を出す。そ、そうだった。
「しゃ、シャールちゃん。五層攻略中にランラビットの肉が取れたんだ。良ければ貰ってくれないかな」
魔法の鞄からランラビットの生肉を取り出す。
「えっ、わ、わたしにですか?」
「う、うんランラビットって美味しいんだって癖がなくて柔らかくてでもなかなか獲れないみたいだから普段お世話になってるシャールちゃんにどうかなってぷふぉ」
早口きょどり口調。うん、キモい。これはキモい。はぁー。
「ご、ごめんなさい。お気持ちは嬉しいんですが生肉は衛生的にちょっと……」
「そ、そうだよね僕は何いってるんだろうねおかしいねあはは」
断られた。
頭をハンマーで殴られそのままミンチなって地面に溶け落ちる感覚。しのう。神は死んだ。
「あ、あの、も、もしよろしければ私がよく行くお店で食べませんか? 持ち込み食材料理してくれるところなので」
もじもじ、小さな声のシャールちゃん。
……はっ? 神?
「え? いいの?」
「は、はい。もし嫌でなければですが」
そんなやついたら僕がぶっとばす。
「うんうんうん、お願い、是非お願いします。嫌じゃないですむしろ好きです」
「えっ……」
ぐふぅ。
僕は何言ってるんだ。童貞かよ。あわわわわ、だめだ。うまく話せない。顔が熱い。
「あの、私」
「いやいやいやいやいや、と、とにかくまた誘うよ。また来るよ。大丈夫な日ってある?」
彼女が何か言おうとしたけどこれ以上話せない。心臓が爆発する。
「え? あ、はい。夜、仕事が終わってからなら大丈夫です」
「わわわかった! 肉は保存しておくよ! 楽しみだなぁ! またね!」
「は、はい。ではまた」
ああああああ、どきどきして変なお別れしてしまった。どうしよう、絶対変な風に思われたよ。
で、でも。一緒にご飯食べよって、言われたってことだよね? それって、ちょっとは、ちょっとだけは「いいかも」って思ってくれているってことだよね? そうであってくれ。
(なんかケイの表情がどんどん変わっていくわね)
面倒くさくなったベステルタが、とうとう戦車にジョブチェンジしたんだよ。僕を担いで、全速力で駆け抜けただけなんだけどね。雑魚魔獣は無視して飛び越えたり、どうしても邪魔なやつは岩を蹴り砕いてその破片で吹き飛ばしたりしていた。時折冒険者と出くわしたけど、そこは彼女のベステル・センサーで事前に察知。適当にやり過ごした。こんな勢いで迷宮攻略していたらさすがに目立つからね。と言う感じで、あっという間に一層まで戻ってきた。潜った時の半分以下の時間じゃないかな。これ、彼女一人の攻略ならもっと速くなりそうだ……。
迷宮から出ると、すっかり日が落ちていた。ほとんど夜だな。もうそんな時間か。カリンたち、僕を待たずにご飯食べていて欲しいな。今日は疲れたろうし、ゆっくり休んで欲しい。さっさとやることやって帰ろう。
「おや……貴方はラーズさんの教え子さんでは?」
衛兵の人に話しかけられた。えーっと、この人は誰だっけな。
「セルヒムさん……ですよね?」
「おお、覚えていて下さいましたか。その通りです。私が休んでいる間に、てっきり戻ったのかと思っていました」
「いえいえ、そのまま五層を攻略してきたんですよ」
「ははは、なるほど。それは血気盛んですな……攻略?」
「ケイ、早く帰りましょ。身体を拭きたいわ」
「そうだね。セルヒムさん、それでは失礼します」
混乱するセルヒムさんを背に僕たちは冒険者ギルドに向かう。早くシャールちゃんに会いたい。それで身体を拭いてご飯食べてスロー繁りじゅんじゅわ搾乳してたっぷり寝たい。ていうかデイライトは居心地良いんだけど、唯一、温泉に入れないのがつらい。どうにかならないかな。
「あ、ケイさん。戻られたんですね」
ちょうどシャールちゃんが受付にいた。うーん、相変わらずちょっときょどっているのが可愛い。エンジェル。天使。
「シャールちゃん……」
「え……」
あ、やっべ。思わず心の声が出てしまった。
「ごごごごめんね。何かちゃん付けで呼びたくなってささささ」
「いいっ、いえいえいえ、気にしないで、くっ、くださいっ」
めっちゃどもってしまった。駄目だ。カリンとかシルビアはほとんど身内みたいなもんだから気にならないけど、シャールちゃんはまだそういうんじゃない。めっちゃどもっちゃう。彼女もめっちゃきょどってる。絶対キモがられたよ。だめだ、心が。収拾がつかない。
「ケイ、何やってるのよ。認定証? とか提出するんでしょ?」
そうだった。呆れ顔のベステルタに促され、我を取り戻す。
「ご、ごほん。えっと五層突破したんだ。はい、これが認定証ね」
「え? 突破ですか? 今日初めて潜ったんですよね?」
目をぱちくりさせて驚く。今気付いたけどまつ毛長いな。
「そうそう。まあ運が良かったよ。それに僕はベステルタの後を付いていくだけだったしね」
「は、はぁ。認定証お預かりしますね……はい確かに。認定官、カーク・サメットのサインを確認しました……本当に突破されたんですね」
あ、シャールちゃんの視線が心なしか熱い気がする。ぐふふ、やった。やったぜ。もっと見てくれ。
「本当に突破したよ。あと、これカークさんからの預かり物で、持ち主不在の認定証ね。たぶん意味は分かると思うんだけど」
「持ち主不在……そういうことですか。理解しました。丁重にお預かりします。ギルドに属するものとしてお礼申し上げます。ありがとうございます」
神妙な顔でぺこり、とかわいいお辞儀をするシャールちゃん。シャールちゃんって真面目でいい子だよな。嫌な先輩に怒鳴られたり、仕事うまくいかなくても、出来る範囲で対応してくれるし。彼女もカークさんみたいに誇りをもって仕事しているのかな、やっぱり。きっとシャールちゃんには、カークさんみたいに優しいけど熱心な上司が合っていると思うんだよな。あー、健気。デート誘いたい。でも誘い方なんか分からん。繁殖術もデートの誘い方では効果発揮しないからな。
「仕事増えちゃうかな。ごめんね」
「いえいえ。手分けしてやればすぐですし、持ち主不在の認定証はなかなか迷宮から届かないので。遺族にとっては大事な品です」
彼女は丁重に不在認定証を机の下にしまった。
カークさんといい、シャールちゃんといい、すごいよな。不遇な職場環境なのに誇りと誠実さを持って仕事している。僕には……きっと無理だ。こうやってちゃんと働いている人や、仕事に誇りを持っている人、仕事が出来なくても頑張っている人は、本当にすごい。僕にはできなかった。僕はまぁ、無能社畜だったからな。
ていうか、そんな頑張っている子とデートしたいなんて、浅ましい考えだよ。はぁ、屑野郎だな僕は。
「ではギルドカードをIランクに書き換えますね。カードを出して頂けますか?」
「うん。はい、どうぞ」
「お預かりしますね。こちらでお待ちください。あ、あとラーズさんから言伝です。できれば明日の朝か夜に顔を出してほしいそうです」
「明日か。了解。ありがとう」
何の用だろう?
シャールちゃんはとてとて、と小走りで奥に引っ込む。小振りなお尻だ。むぎゅってしたい。どんな下着なんだろう。僕は屑だ。
少し気持ちが落ち込みながら待っていると、再びとてとてシャールちゃんが戻ってきた。
「こちらがIランクのギルドカードになります。こ、この前登録したのにもうIランクだなんて、流石ですね。尊敬します」
きゅん。
シャールちゃんが誉めてくれた。途端に僕の心で天使がラッパを吹き鳴らし、ファンファーレが響き渡る。
「シャールちゃんが手伝ってくれたおかげだよ」
「私なんて……。だめだめです。ケイさんがすごいんですよ」
「そ、そんなことないよ」
シャールちゃんが落ち込んでいる。こんな時どうすればいい。助けてくれ、フレイムベア先輩。
「ケイ、この受付嬢にランラビット渡すんじゃないの?」
まごついている僕を見かねてベステルタが助け船を出す。そ、そうだった。
「しゃ、シャールちゃん。五層攻略中にランラビットの肉が取れたんだ。良ければ貰ってくれないかな」
魔法の鞄からランラビットの生肉を取り出す。
「えっ、わ、わたしにですか?」
「う、うんランラビットって美味しいんだって癖がなくて柔らかくてでもなかなか獲れないみたいだから普段お世話になってるシャールちゃんにどうかなってぷふぉ」
早口きょどり口調。うん、キモい。これはキモい。はぁー。
「ご、ごめんなさい。お気持ちは嬉しいんですが生肉は衛生的にちょっと……」
「そ、そうだよね僕は何いってるんだろうねおかしいねあはは」
断られた。
頭をハンマーで殴られそのままミンチなって地面に溶け落ちる感覚。しのう。神は死んだ。
「あ、あの、も、もしよろしければ私がよく行くお店で食べませんか? 持ち込み食材料理してくれるところなので」
もじもじ、小さな声のシャールちゃん。
……はっ? 神?
「え? いいの?」
「は、はい。もし嫌でなければですが」
そんなやついたら僕がぶっとばす。
「うんうんうん、お願い、是非お願いします。嫌じゃないですむしろ好きです」
「えっ……」
ぐふぅ。
僕は何言ってるんだ。童貞かよ。あわわわわ、だめだ。うまく話せない。顔が熱い。
「あの、私」
「いやいやいやいやいや、と、とにかくまた誘うよ。また来るよ。大丈夫な日ってある?」
彼女が何か言おうとしたけどこれ以上話せない。心臓が爆発する。
「え? あ、はい。夜、仕事が終わってからなら大丈夫です」
「わわわかった! 肉は保存しておくよ! 楽しみだなぁ! またね!」
「は、はい。ではまた」
ああああああ、どきどきして変なお別れしてしまった。どうしよう、絶対変な風に思われたよ。
で、でも。一緒にご飯食べよって、言われたってことだよね? それって、ちょっとは、ちょっとだけは「いいかも」って思ってくれているってことだよね? そうであってくれ。
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