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ロリコン野郎って思われたかも
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精神的に疲れた昨日の夜は、カリンとシルビアに料理を作ってもらって幸せだった。カレー味のフレイムラグーはとっても家庭的で、あったかいんだから。そのまま夜は亜人と繁って、途中からカリンも混ざって、シルビアに繁り音を聞かれたよ。気まずいんだから。
それで二日目の朝。
『ケイ、悪いやつを捕まえたぞ』
寝耳にプテュエラ。なんだって?
うーん、まだ早朝だ。雀がちゅんちゅんしてる。森にタネズ城建てる趣味悪い夢見てたんだけど? 欲望が足りん。ターネズ・マハール、種源郷、 にゃんにゃん、うふふ、しげしげり。眠い寝よう。
『カリンと子供をさらおうとしていたが、逃がしていいのか?』
「良くない!」
良くない。
今ので目がバッチリ醒めた。ていうか今の夢はなんなんだ。
慌てて外に出るとプテュエラが、
「おお、ケイ! 見てくれ。捕まえたぞ!」
得意気に巨大な爪で、気絶した二人の男を踏みつけていた。がっつり透明化解除してるし。おいおい、見られてないだろうな。
そして獲物をふみふみして誇示している。猫かよ。鳥だけど。翼もばっさばっさしている。やめてあげて。爪ぶっ刺さっているよ。
ってこいつら、この前来たヒャッハー系借金取りじゃん。久しぶり。元気そうで何より。ということは、もう一人リーダーいなかったっけ?
「卑怯者。女子供を狙うなんて生かしておく必要ないわね」
あ、いた。ヒャッハー男だ。
プテュエラに背を向けるような形で、ベステルタが片手で男の首を掴んで持ち上げている。あれ、めちゃくちゃ首痛いし気道締まるんだよね。
「お、おい! あんた、この大女を止めてくれ! 話が通じねえんだ! 殺されちまう!」
ヒャッハーリーダーが悲痛な声を出す。僕を覚えていないのか? まあ、あの時は一瞬だったしな。
「僕はこの孤児院の関係者ですよ。素直に話してください」
すると憐れっぽく叫んでいた男が豹変した。
「なんだとっ! くそが、てめえらこんなことしてただじゃすまねえぞ! この街で『オボロ』を敵に回したら終わりだぜ!」
オボロ? 和風っぽい名前だな。それはさておき、オボロっていうのは裏社会グループと言うことだろうか。ふーむ。
考え込んでいる僕を見て男はまくし立てる。
「フェイの旦那はスラムじゃ情け容赦の無い人で有名だ、楯突いたと知ったら必ず報復するぞ! だからさっさと解放しやがれぐえぇ」
「うるさいわね。静かにしなさい卑怯者」
ぎゃあぎゃあわめく男を強制的に黙らせるベステルタ。
報復に来るのかー、怖いなー。どうしよう。
「こいつらの親玉が報復に来るかもしれないけどどうしよっか」
「そんなもの踏み砕けばいいじゃない」
「同感だな。ジオス教徒が害されそうになったんだ、遠慮する必要は無い」
二人ともやる気まんまんだ。いや、殺る気か? スラムが更地になってしまう。
「でも女子供をさらうのは不味いんじゃない?」
「うるせえ! 大体借金返さないのが悪いんだろうがっ!」
うーん、まあ確かにそれもそうだな。めんどくさい。なら返しに行こう。
「利子含めていくら?」
「……金貨二百枚だぞ? 払えるのか?」
意外そうな表情。
ん? 何か心配してくれてる?
ていうか結構あるな。でも返せないことはない。
「カリン、ごめんね。これからお金返しに行くから契約書持ってきてくれる?」
「し、しかし「あーいいからいいから。契約書持ってきて」は、はい」
こんなものさっさと終わらすに限る。カリンも僕に申し訳ないのかもしれないけど、お金はたくさんあるから気にしないで欲しい。
「おい、本当に返せるのか? それならこの拘束を解いてくれ。首がイカれちまう」
「ベステルタ放してあげて」
「いいの? 別に遠慮せずにポキッてしてもいいわよ?」
「それでもいいんだけど。一応お金借りているんだから返さないのは良くないよ。道案内して欲しいし」
「後のやつらはどうする?」
プテュエラが哀れなヒャッハー男×2を顎でしゃくる。
「気絶したまま飛んで運べる?」
「透明化しないなら問題ない」
「じゃあそれでいこう」
「うむ」
そう言うとびゅーん、と飛んでいってしまった。
ただベステルタは顔をしかめている。
「うーん、納得行かないわ。子供を襲う奴らは生かしておく必要ないと思うの」
「か、は、ひゃ、ひゃめへ……」
ギリギリと首を持ち、もう片方の手で腕を持ってゆっくり引っ張っていく。やばいやばい、そのままじゃスプラッタだ。
「ベステルタ、何でも力で解決するの? もう少し理性的になってくれ」
「でも……」
「ひゃ、ひゃめへえええ!」
男がいよいよ耐えられなくなって叫ぶ。自分の体がゆっくり引き延ばされるなんて発狂もんだよ。少し同情する。
ミチミチと嫌な音がしてくる。ベステルタが結構頑なだ。もっと素直かと思っていたけど、譲れないところなのかな。
「それじゃ亜人はずっと恐れられたままだよ。次の子供たちもその先もずっとだ」
そう言うとぴくり、と動きが止まった。
「……そうね。そうかもしれない。
子供たちに迷惑をかけてはいけないわ……」
「がはっ、ゲホゲホッ」
やっと手放した。ヒャッハーリーダー、ストレートネックになってそう。
「そのオボロに案内してくれる? 借金返すからさ」
「は、はい!」
すっかり怯えてしまった。あそこまでするつもりは無かったんだ。
「僕は理性的に行くつもりだけど、あそこのおっかない獣人が何するか分からないから変な真似しないようにね」
「しませんしません!」
獣人というブラフも入れておく。これから彼女は人目につくことになるだろうからね。
『おっかない?』
『彼らにとってはね。僕にとっては違うよ』
『どう違うのか夜に訊くことにするわ』
おっかない、というところでジト目されたがチャンネルでフォローは入れておいた。搾られることが確定したが。
「あ、あのう。手下たちはどこに行ったんでしょう……」
びくびくしながら訊いてくるヒャッハーリーダー。たぶん、空の上だな。
「ま、まあ気にしなくていいよ。そのうち会えるからね」
そう言うと、殺さないで下さいと泣いて懇願してきた。そういう意味じゃないよ。
「じゃあ行くよ。シルビア、留守番お願いね」
「う、うん……」
あ、目を逸らされた。昨日繁り音聞かれたんだった。うーむ、ちょっと気まずい。
「ケイ、プテュエラとわたしを連れていくなら誰か召喚した方がいいわ」
おっと、確かにそうだ。ここが手薄になってまた襲撃されたら面倒だ。
「誰がいいかな?」
「シュレアは難しいから、ラミアルカかサンドリアでしょうけどサンドリアの方がいいわね。ラミアルカの能力だと、見付からずに敵を無力化するのが難しいわ」
あー、確かに派手だもんね。地毒魔法。
「じゃあサンドリア呼んでくるから見張っておいてくれる?」
「いいわよ」
「お、おい何処に行くんだ。た、頼む。殺さないでくれ」
「ちょっと外すだけだよ」
ヒャッハーが自分が用済みなんじゃないか、と勘違いして命乞いを始める。めんどいな。
ささっと孤児院に戻ってサンドリアにチャンネルで状況を説明して召喚する。子供たちに新しい亜人が来るよ、と言ったらとっても嬉しそうにしてくれた。
『サンドリア、これから召喚するけど信じてるからね』
『な、なにが?』
ダークアクションは止めてくれよ。マジで頼むからな。
「召喚!」
すると薄い霧が院内に立ち込める……。
するとしゃりん、しゃりん、とどこからともなく牙を打ち鳴らす音が聞こえ、中から人影が現れる。
「あ、あたしはサンドリアです。よろしく」
ぺこりとお辞儀する気弱ヤンキー。この子は本当にいい子よ……。
そして「よし、言えた」と小声。萌えた。
「「「「よろしくお願いいたします!!!」」」
子供たちがわーっと群がって自己紹介していく。サンドリアは少し戸惑っていたけど嬉しそうに応えていく。
子供たちにとっては背丈が近いから親近感あるのかもな。サンドリアにとっては初めての年下だから新鮮なのかも。ほっこりする。
「見ての通りサンドリアはいい子だから気軽に話してあげてね」
「……ええ」
あれ、シルビアの目が厳しい。あっ、もしかしてサンドリアの見た目が幼いからか? でも君と僕より年上なんだが。やばい、ロリコンゴブリン野郎って思われたかも。昨日の繁りの件もあるし……。つらい。カリンフォローしておいてくれないかな。
「行ってくるよ……」
冷たい目線に送られる。うう、返事が無く気が重い。
それで二日目の朝。
『ケイ、悪いやつを捕まえたぞ』
寝耳にプテュエラ。なんだって?
うーん、まだ早朝だ。雀がちゅんちゅんしてる。森にタネズ城建てる趣味悪い夢見てたんだけど? 欲望が足りん。ターネズ・マハール、種源郷、 にゃんにゃん、うふふ、しげしげり。眠い寝よう。
『カリンと子供をさらおうとしていたが、逃がしていいのか?』
「良くない!」
良くない。
今ので目がバッチリ醒めた。ていうか今の夢はなんなんだ。
慌てて外に出るとプテュエラが、
「おお、ケイ! 見てくれ。捕まえたぞ!」
得意気に巨大な爪で、気絶した二人の男を踏みつけていた。がっつり透明化解除してるし。おいおい、見られてないだろうな。
そして獲物をふみふみして誇示している。猫かよ。鳥だけど。翼もばっさばっさしている。やめてあげて。爪ぶっ刺さっているよ。
ってこいつら、この前来たヒャッハー系借金取りじゃん。久しぶり。元気そうで何より。ということは、もう一人リーダーいなかったっけ?
「卑怯者。女子供を狙うなんて生かしておく必要ないわね」
あ、いた。ヒャッハー男だ。
プテュエラに背を向けるような形で、ベステルタが片手で男の首を掴んで持ち上げている。あれ、めちゃくちゃ首痛いし気道締まるんだよね。
「お、おい! あんた、この大女を止めてくれ! 話が通じねえんだ! 殺されちまう!」
ヒャッハーリーダーが悲痛な声を出す。僕を覚えていないのか? まあ、あの時は一瞬だったしな。
「僕はこの孤児院の関係者ですよ。素直に話してください」
すると憐れっぽく叫んでいた男が豹変した。
「なんだとっ! くそが、てめえらこんなことしてただじゃすまねえぞ! この街で『オボロ』を敵に回したら終わりだぜ!」
オボロ? 和風っぽい名前だな。それはさておき、オボロっていうのは裏社会グループと言うことだろうか。ふーむ。
考え込んでいる僕を見て男はまくし立てる。
「フェイの旦那はスラムじゃ情け容赦の無い人で有名だ、楯突いたと知ったら必ず報復するぞ! だからさっさと解放しやがれぐえぇ」
「うるさいわね。静かにしなさい卑怯者」
ぎゃあぎゃあわめく男を強制的に黙らせるベステルタ。
報復に来るのかー、怖いなー。どうしよう。
「こいつらの親玉が報復に来るかもしれないけどどうしよっか」
「そんなもの踏み砕けばいいじゃない」
「同感だな。ジオス教徒が害されそうになったんだ、遠慮する必要は無い」
二人ともやる気まんまんだ。いや、殺る気か? スラムが更地になってしまう。
「でも女子供をさらうのは不味いんじゃない?」
「うるせえ! 大体借金返さないのが悪いんだろうがっ!」
うーん、まあ確かにそれもそうだな。めんどくさい。なら返しに行こう。
「利子含めていくら?」
「……金貨二百枚だぞ? 払えるのか?」
意外そうな表情。
ん? 何か心配してくれてる?
ていうか結構あるな。でも返せないことはない。
「カリン、ごめんね。これからお金返しに行くから契約書持ってきてくれる?」
「し、しかし「あーいいからいいから。契約書持ってきて」は、はい」
こんなものさっさと終わらすに限る。カリンも僕に申し訳ないのかもしれないけど、お金はたくさんあるから気にしないで欲しい。
「おい、本当に返せるのか? それならこの拘束を解いてくれ。首がイカれちまう」
「ベステルタ放してあげて」
「いいの? 別に遠慮せずにポキッてしてもいいわよ?」
「それでもいいんだけど。一応お金借りているんだから返さないのは良くないよ。道案内して欲しいし」
「後のやつらはどうする?」
プテュエラが哀れなヒャッハー男×2を顎でしゃくる。
「気絶したまま飛んで運べる?」
「透明化しないなら問題ない」
「じゃあそれでいこう」
「うむ」
そう言うとびゅーん、と飛んでいってしまった。
ただベステルタは顔をしかめている。
「うーん、納得行かないわ。子供を襲う奴らは生かしておく必要ないと思うの」
「か、は、ひゃ、ひゃめへ……」
ギリギリと首を持ち、もう片方の手で腕を持ってゆっくり引っ張っていく。やばいやばい、そのままじゃスプラッタだ。
「ベステルタ、何でも力で解決するの? もう少し理性的になってくれ」
「でも……」
「ひゃ、ひゃめへえええ!」
男がいよいよ耐えられなくなって叫ぶ。自分の体がゆっくり引き延ばされるなんて発狂もんだよ。少し同情する。
ミチミチと嫌な音がしてくる。ベステルタが結構頑なだ。もっと素直かと思っていたけど、譲れないところなのかな。
「それじゃ亜人はずっと恐れられたままだよ。次の子供たちもその先もずっとだ」
そう言うとぴくり、と動きが止まった。
「……そうね。そうかもしれない。
子供たちに迷惑をかけてはいけないわ……」
「がはっ、ゲホゲホッ」
やっと手放した。ヒャッハーリーダー、ストレートネックになってそう。
「そのオボロに案内してくれる? 借金返すからさ」
「は、はい!」
すっかり怯えてしまった。あそこまでするつもりは無かったんだ。
「僕は理性的に行くつもりだけど、あそこのおっかない獣人が何するか分からないから変な真似しないようにね」
「しませんしません!」
獣人というブラフも入れておく。これから彼女は人目につくことになるだろうからね。
『おっかない?』
『彼らにとってはね。僕にとっては違うよ』
『どう違うのか夜に訊くことにするわ』
おっかない、というところでジト目されたがチャンネルでフォローは入れておいた。搾られることが確定したが。
「あ、あのう。手下たちはどこに行ったんでしょう……」
びくびくしながら訊いてくるヒャッハーリーダー。たぶん、空の上だな。
「ま、まあ気にしなくていいよ。そのうち会えるからね」
そう言うと、殺さないで下さいと泣いて懇願してきた。そういう意味じゃないよ。
「じゃあ行くよ。シルビア、留守番お願いね」
「う、うん……」
あ、目を逸らされた。昨日繁り音聞かれたんだった。うーむ、ちょっと気まずい。
「ケイ、プテュエラとわたしを連れていくなら誰か召喚した方がいいわ」
おっと、確かにそうだ。ここが手薄になってまた襲撃されたら面倒だ。
「誰がいいかな?」
「シュレアは難しいから、ラミアルカかサンドリアでしょうけどサンドリアの方がいいわね。ラミアルカの能力だと、見付からずに敵を無力化するのが難しいわ」
あー、確かに派手だもんね。地毒魔法。
「じゃあサンドリア呼んでくるから見張っておいてくれる?」
「いいわよ」
「お、おい何処に行くんだ。た、頼む。殺さないでくれ」
「ちょっと外すだけだよ」
ヒャッハーが自分が用済みなんじゃないか、と勘違いして命乞いを始める。めんどいな。
ささっと孤児院に戻ってサンドリアにチャンネルで状況を説明して召喚する。子供たちに新しい亜人が来るよ、と言ったらとっても嬉しそうにしてくれた。
『サンドリア、これから召喚するけど信じてるからね』
『な、なにが?』
ダークアクションは止めてくれよ。マジで頼むからな。
「召喚!」
すると薄い霧が院内に立ち込める……。
するとしゃりん、しゃりん、とどこからともなく牙を打ち鳴らす音が聞こえ、中から人影が現れる。
「あ、あたしはサンドリアです。よろしく」
ぺこりとお辞儀する気弱ヤンキー。この子は本当にいい子よ……。
そして「よし、言えた」と小声。萌えた。
「「「「よろしくお願いいたします!!!」」」
子供たちがわーっと群がって自己紹介していく。サンドリアは少し戸惑っていたけど嬉しそうに応えていく。
子供たちにとっては背丈が近いから親近感あるのかもな。サンドリアにとっては初めての年下だから新鮮なのかも。ほっこりする。
「見ての通りサンドリアはいい子だから気軽に話してあげてね」
「……ええ」
あれ、シルビアの目が厳しい。あっ、もしかしてサンドリアの見た目が幼いからか? でも君と僕より年上なんだが。やばい、ロリコンゴブリン野郎って思われたかも。昨日の繁りの件もあるし……。つらい。カリンフォローしておいてくれないかな。
「行ってくるよ……」
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