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冒険者ギルド再び

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 さーて、シルビアを早く連れてこないとな。
 
 そう考えていると、いくつか欲しいものを思い付いたので冒険者ギルドに向かうことにする。デイライトはダンジョン都市だし、きっと魔法のアイテムもあるはずだ。もし手に入ったら暮らしがよくなるはず。シャールちゃんにも会いたいし。

「こんにちはー」

「あっ、ケイさん……。こんにちは」

 いたいた、シャールちゃんだ。相変わらず誰も並んでいない。どんより顔だ。ここの冒険者は見る目ないよなあ。

「今日はお願いがあって来たんだけどいいかな?」

「はい……、どういったご用件でしょう?」

 やっぱりおどおどしているな。あのケバい受付嬢に色々言われているんだろうか。かわいそうに。

「魔法の道具を探してほしいんだけど、分かるかな?」

 暮らしを豊かにするにも欲しいし、事業のためにも必要だ。できれば欲しい。

「魔道具ですね。道具自体が欲しいということですか? それだとご希望には沿えないかもしれないですが……」

 役に立てず申し訳ありません、ってどんよりオーラ。

 冒険者ギルドはだめだな。組織の看板の職員にこんな顔させるなんて。

 商業ギルドはギルマスが有能で、ある程度自浄作用あったからよかったけど冒険者ギルドは期待できないかもしれない。まだトップに会ったことないけどさぁ。

「気にしなくていいよ。今から言うような魔道具が、過去にダンジョンで見付かったか調べて欲しいんだ」

「あっ、それなら対応可能です。ドロップ品の資料がありますので」

 ぱっと化粧っ気の無い顔が明るくなる。やれることがあるって分かると、気持ち的にも違うよね。なんかシャールちゃんにすごく親近感覚えるなー。

「欲しい魔道具は……、知らない言語を理解できる物。遠くの人と話せる道具。食べ物を長期保存できる氷室。後、建物を覆えるような結界を発生させる道具。あ、分からなかったらまた言うから焦らなくていいよ」

「はい、ありがとうございます」

 シャールちゃんは一生懸命メモしていく。いやあ、かわいいな。頑張っている。シャールちゃんは焦らせずに、自分のペースで仕事させたら良いと思う。

「他にも、過去に似たような魔道具があったら見繕っておいてくれるかな?」

「はい。えっと、何か傾向とかありますか? こういう方向性の魔道具が欲しいという」

 すみませんすみません、と言うシャールちゃん。気にしないで欲しい。自分から言ってくれるのは嬉しい。

「そうだな……。生活を便利にできる魔道具がほしいかな。二週間後くらいまでにお願いできますか?」

「便利に……。なるほど。分かりました。ではそれくらいまでに調べておきます」

 シャールちゃんのどんより顔がいくぶん晴れやかになった。

「今日街を出る予定なんだけど、次来た時は僕もダンジョンに潜るから、そしたらシャールちゃんにいろいろ頼む事になります。よろしくね」

「ま、街を出られるんですね。そうですか。わ、私なんかで良ければ……。はい、精一杯サポートさせて頂きます」

 ぎこちない笑顔を向けてくれるシャールちゃん。うう、なんか辛い。ごはんいっぱい食べさせてあげたい。一日中ほめまくりたい。プラトニックなデートしたい。

 その後、いくつかシャールちゃんと世間話して冒険者ギルドを出た。
 
 よし、今度こそシルビアのところに……。ああ、そうだ。ベッドとプレゼント買わないとな。もっと早くやっておけばよかった。いつも後手に回ってしまうんだよなあ。計画性が無いというか。

 この前商業ギルドでロイさんに教えてもらった家具屋さんを訪れた。あそこのソファ最高だったからね。

「こんにちは。ベッドが欲しいんですがありますか?」

「いらっしゃい! もちろんあるよ。うちのベッドの寝心地は最高だよー」

 家具屋さんは元気なおばちゃんが営んでいた。これは良いお店の予感がするぞ。

「一番大きなベッドってどのくらいですか?」

「そうだねえ、五人暴れまわってもびくともしない大きさと頑丈さだよ。その分値段も張るがね」

 それはいい!
 僕含めて四人だけど、亜人は何かと屈強だから普通のベッドだと壊れそうだし。

「二つ! そいつは剛毅だね。お兄さん宿屋でも始めるのかい?」

「いえ、プライベート用です」

「ますます剛毅だね……」

 おばちゃんも呆れ顔。うるせえやい。

 と言う訳で高級ベッドを二つ買った。代金は500万ソルンだ。金貨で支払う。ていうか最近ほとんど金貨しか使っていない。これがセレブか。

 何はともあれ、これを二つ繋げれば思う存分繁れるぞ。ベステルタ洞窟ハウスもまだ空きあるし。オーダーメイドも受け付けているようなので、さらに必要になったら注文してもいいかもしれない。

 あれ、なんか忘れている気がする……。うーん、思い出せない。気のせいか。

 よし……、次はプレゼントだ。
 日頃亜人たちにはお世話になっているから色々買わなくては。

『ケイ、そろそろお腹空いたのだが』

『ごめんね、もうちょっと待ってね』

 しばらく静かにしていたプテュエラが控えめに主張してくる。見えないからってバサバサ翼で叩かないで下さい。


【市場にて】

 買えた、買えた。割りかしスムーズだったな。買うものはほぼ決まっていたからね。シルビア探しに来た時に何となく当たりもつけていたし。

 買ったプレゼントがこれだ。

・全員
服、くし、鏡

・ベステルタ
イヤリング、ペンダント

・プテュエラ
帽子、羽ブラシ

・シュレア
煙草、マグカップ

 初めてこんなにプレゼント買ったな。正直、センスには自信無い。贈り物って難しい。相手の事を想っているようで、自分の気持ちを押し付けていないか不安だ。

『ケイ、私はその気持ち、嬉しいぞ。幸せな気分だ』

 見えないふわもふが僕の頬をすりすりしてくる。僕もすりすりし返す。もちろんプレゼントは秘密にしてもらった。明日にでも渡したいな。

 その後、プテュエラとお昼ごはんを買食いして、美味しそうなのは買い溜めておく。その後シルビアのところへ向かった。

「シルビア、こんにちは」

「あっ、こんにちは、ケイ」

 露店でガンガンお仕事中のシルビア。眩しい笑顔を向けてくれる。よかった。フランクに接してくれている。これでよそよそしかったら心折れていたよ。

「これから大丈夫かな? 例のジオス教徒のシスターに会ってほしいんだけど」

「ええ、大丈夫ですよ。今日はケイが来たら閉めようも思っていたので。あ、後これ、頼まれていた紙とペンです。どうぞ」

 そう言うと、高価そうな箱に入ったペンと紙を渡してくれた。

 やった! これで記録ができるようになるぞ。ただ、ペンは商業ギルドマスターからもらったし、シュレアに贈ろう。

「言語教本も仕入れられたのでお渡ししますね……。
 その、もしよろしければ私が教えましょうか? 空いた時間でよければですが」

 言語教本をおずおずと渡してくれるシルビア。その提案はめちゃくちゃ有り難い。

「本当? ありがとう。助かるよ。今度戻った時にでもお願いします」

「ええ」

 そしてシルビアと話しながらリッカリンデン孤児院へ向かう。ここに来て色んなことに目処がついて嬉しいな。

 うーん、でも、何か忘れている気がするんだよな……。
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