44 / 146
弟子
しおりを挟む
さて、今日も色々あったな。リッカリンデン孤児院に寄って子供達と遊んで疲れを癒やそう。その前に遠吠え亭に寄らなきゃな。
遠吠え亭に寄り、今日は孤児院に泊まることを伝える。
ブラガさんが例の料理の作り方についてあれこれ訊いてきた。僕も分かる範囲でレシピを伝える。匂いが出るかもしれないから慎重にとも伝えた。あの匂いがいいんだけどね。
シャロンさんはあくせくと働いていた。今更だけど彼女って成人してないよね。この世界では労基法とか無さそうだしな。家族も働いているのだろうか。大変だ。
リッカリンデン孤児院に着いた。なんか落ち着くな。何でだろう。ジオス神のお膝元だからか? ちょっと気に食わないけど。それにしても布教のフの字も意識してないんだけど大丈夫なのかな。うーん、ジオス神の狙いが分からん。僕はやりたいようにやるけどさ。
「使徒様、お帰りなさいませ」
うわ、カリンが跪いて頭を垂れてきた。油断してたよ。僕使徒だった。彼女の全身から迸る信者オーラはどうにかならないのだろうか。
「あーしとさまだー!」
「おかりなさいませ」
「ませー、ひん」
「ふふ、みんな。ケイも疲れているから飛びついちゃだめよ。ケイ、おかえり」
ベステルタが元気いっぱいの子供達をぶら下げたり引っつけたりしながら、出迎えてくれた。すっかり保母さんみたいになっている。ありだな……。
「あ、お姉様あああ」
背中に特徴的な小さい羽を生やした子供がプテュエラに突撃する。この子、初対面の時から随分プテュエラに懐いていたよな。
「わぷ、な、なんだ」
「その子はバルデよ。何か妙にプテュエラに会いたがっていたのよね」
「ば、バルデは、プテュエラ様をお慕いしておりますぅぅぅ!」
ふがふがとプテュエラの身体に顔を埋めて恍惚そうな顔を浮かべるバルデちゃん。
「こ、こら。バルデ、お止めなさい! 失礼でしょう!」
慌てるカリンと状況が分からないプテュエラ。通訳してバルデのことを伝える。
「あ、いや、別にいいんだ。ジオス教徒の子供に懐かれるのは嬉しい。ただ、何で私をこう慕うのか分からなくてな」
バルデが慕っていることを伝えると何となく理解したようだった。でも自分よりずっと小さな子供にモフられ困惑している。こんな感じのプテュエラは珍しいな。新鮮だ。
「バルデは蝙蝠族だから、プテュエラ様みたいにかっこよく飛べるのが羨ましいんだよ!」
とりわけ元気いっぱいの子が答える。あー、確かリーノウちゃんだっけな。
「バルデちゃんはまだうまく飛べないから……ひん」
この男の子はザルドくんだな。もじもじしているが美少年だ。これはお姉さんキラーになりそう。気をつけねば。
よく見ると二人とも身体に特徴があるな。種族は何だろう。
「二人は何族なの?」
「リーノウは誇り高き犀人族だ!」
「ひん、ザルドは気高き蜥蜴人族」
蝙蝠族、犀人族、蜥蜴人族。よりみどりだな。確かにリーノウちゃんの頭にはちっちゃな角が生えているし、ザルドくんの肌には鱗がある。なるほど、バルデちゃんの羽は蝙蝠か。
「お姉様! バルデに飛び方を教えて下さい! お姉様みたいに飛びたいので! かっこよくなりたいので!」
バルデちゃんが必死に頼み込んでいる。この子最初は結構大人しいように見えたんだけどな。
「はは。もちろんだ。飛び方を教えるのは初めてだが、楽しそうだ。よろしく、バルデ、と伝えてくれるか?」
いちいち僕の通訳挟むのはめんどいけど仕方ない。バルデに内容を伝える。
「やったぁ! お姉様好きぃ!」
もふもふもふ、と顔を埋めるバルデ。まるで僕がいないかのように振る舞い。うーん、そろそろ中に入りたい。
「バルデちゃん、モフるのはそれくらいにして、そろそろ部屋の中に入ってもいいかい?」
「え……? あ、はい。どうぞ使徒様」
うおっ、首だけぐるっとこっちを向いた。無表情だ。しかも声のトーンも変わっている。この落差。何もしてないのに凹むんだが。
「申し訳ございません、使徒様。後で言って聞かせますので」
カリンが申し訳なさそうに謝ってくる。
「ううん、気にしてないよ。それよりも子供達が僕やベステルタたちと話したいらしいね。あ、もしかしてカリンも?」
「す、すみません」
恥ずかしそうに顔を伏せる。くっ、可愛い。線が細くて気弱な薄幸シスター。しかしその実、超がつく狂信者だからね。
質素な礼拝堂を通り過ぎ、孤児院の一角、たぶん普段みんなが過ごしている部屋、というか教室に案内される。小さな机が行儀よく並べられ、カリンが使っているであろう教壇がある。ここで勉強を教えているんだろうね。
「みんなのために使徒様が来て下さいました。ちゃんとお礼を言いましょう」
「「「しとさま、ありがとうございます」」」
子供達の元気な声。はー、癒やされる。使徒とか関係無ければもっとよかったんだけど。
「では使徒様。恐れながら子供達の質問に答えて頂いても宜しいでしょうか? もちろん、答えられる範囲で構いません」
「はーい」
教壇に立って椅子に座って目を光らせる子供達を見渡す。好奇心旺盛だ。いいことだね。
「しとさま、亜人様好きですか!」
リーノウちゃんだ。
「好きだよ」
当たり前だ。愚問やで。
『ふふ』
『はは』
二人とも笑ってる。別にいいでしょ。
「得意な武器は何ですか?」
冷静そうな男の子。うーん。
「ベステルタの爪だよ」
「爪?」
分からなそうだったから、実際に爪を見せてひゅんひゅん振ると「ふぉぉぉぉ」とちびっ子たちが大興奮してくれた。カリンもそれに混じって興奮……。
「なるほど! 状況に応じて何でも使えるようになれ、ということですね。勉強になりました」
何だか納得してくれたようだ。まあそれしかないから使ってた、というのは合ってる。今はフランチェスカもあるんだけど、ここで出したら驚かれちゃいそうだからやめておこう。
「今まで一番強かった敵はなんですかー?」
ぽわぽした女の子。何か戦闘系の質問多いな。意外だ。
「面倒くさかったのは群れたマスキュラス、厄介だったのは徒党を組んだダークエイプ、強いっていうか目標はフレイムベアだね」
「フレイムベアなんて倒せるのか!? でんせつの魔獣だろ!?」
生意気そうな男の子。立ち上がって目が爛々だ。伝説なのかあれは。
「僕はまだ無理だけど、亜人たちなら冗談抜きに一瞬だよ」
誇張無しなんだよなあ。
「すっげえええ! やっべえええ!」
大喜びだ。やっぱ男の子はこういうの好きだよなー。女の子たちも楽しそうにしているのがよく分からないけど。騎士でも目指しているのかな?
「お姉様とはどこまで?」
バルデちゃんが際どい質問を投げかける。うわ、教室が静まり返ってしまった。
「どうした?」
「何かあったの?」
(しとさまと亜人様、なんて言っているんだろうね)
僕がうまく言えないでいると、二人が訊いてくる。
(分からないね)
(きっとお姉様に命令しているのよ)
(ひん、そんなことないと思うよお)
何だかひそひそ声が聴こえてくるが。
「いや、プテュエラとはどこまでいったのかって……何て答えればいいか分からなくて。はは」
こういう繊細な質問、子供になんて答えればいいかなんて分からないよ。
二人は少し思案して、プテュエラが言った。
「ふむ、ならばこれでどうだ」
不意に顔が近づけられる。
ズギューーーン!
う、奪われた。公衆の面前で。
「うおおおおおおおお」
「ひいいいいいいいん」
「きいいいいいいいい!」
ざわめく子供達を見てニヤリ。
「これ以上だ」
キメ顔。
「やべえええええええ」
「大人すげえええええ」
「お、おねっ、おねえさまあああ!」
子供たちけっこうマセてるな。ガン見してくるじゃん。そしてバルデが血を吐くような叫び声を上げる。うっ、僕を見る視線に殺意が込もっている。子供がそんな目したら駄目だよ……。
「なら私も」
ベステルタが、あっ。
ズギュゥゥウウン!
ま、またしても。
「ふぁぁぁぁぁぁぁ」
ぱちぱちぱち。
手を叩いて興奮するカリン。完全に立場を忘れている。あーあ、これしばらく続きそうだ。
やっと落ち着いて質問タイムが再開した。今度は僕からだ。
「みんなは何歳?」
「「「11さ14い145525さい3421242さ82451さいさいさい!!!」」」
だめだ訊き方が悪かった。一人一人に訊かないと。
「リーノウは?」
「11歳だ!」
その割には大きいな。犀人だし種族的なものかな?
「バルデは?」
「12歳ですが?」
何か? と冷たい眼差し。これ完全によく思われていないなあ。
「ザルドは?」
「14ひん歳です」
ええ、どう考えても低学年にしか見えないのだが。ここら辺のバラツキはなんだろう。
「使徒様、獣人は種族によって心と身体の成長スピードが異なります。さらに人族よりもレベルに依存した成長をするので、違和感を感じるのかと」
カリン、ナイスフォロー。
はー、なるほどな。じゃあみんな見た目通りでないし、逆に見た目通りの年齢ってことか。ゴドーさんやブラガさんも実は結構若いってことかな。でも二人は獣の特徴が強く出ているし。うーん、よく分かんなくなってきた。見た目は低学年のザルドもレベル上げればぐんぐん成長するってことだよね?
「あ、そうだ。みんな僕のことはケイとかお兄さんって読んでね。カリンもね」
そうそう。正直、使徒って呼ばれていると課長、部長って言われているようで嫌だし。名前で読んで欲しいんだよね。
「そ、そんな。恐れ多いです……」
「いいからいいから」
「う、け、ケイ様……」
恐縮するカリンを何とか説得して、名前で呼ばせることには成功した。
「アニキ!」
「ケイ……さん」
「師匠!」
リーノウは素直で良い子供だね。バルデはなんで一瞬躊躇ったのかな。そして、ザルド。師匠ってどういうこと?
「ひ、ひん。ザルドは師匠の弟子になりたいです。お願いします」
ぺこり、と頭を下げる美少年。どういうことだ?
「話が見えないよ。どういうことかな?」
「ひ、ひん。ザルドはリザードマンです。雌とたくさん番って繁殖することが使命であり、男の証です。師匠はものすごく強い亜人様を三人も契約しています。亜人様と繁殖できる人は少ないのに、師匠はさらに三人も相手取っています。だ、だから、師匠に繁殖術を教えて欲しいです、ひん」
世のお姉さん方がきゅんってしそうなショタフェイスでとんでもない事を口走るザルド。あと、君結構喋るのね。
ていうか、繁殖術って……。
遠吠え亭に寄り、今日は孤児院に泊まることを伝える。
ブラガさんが例の料理の作り方についてあれこれ訊いてきた。僕も分かる範囲でレシピを伝える。匂いが出るかもしれないから慎重にとも伝えた。あの匂いがいいんだけどね。
シャロンさんはあくせくと働いていた。今更だけど彼女って成人してないよね。この世界では労基法とか無さそうだしな。家族も働いているのだろうか。大変だ。
リッカリンデン孤児院に着いた。なんか落ち着くな。何でだろう。ジオス神のお膝元だからか? ちょっと気に食わないけど。それにしても布教のフの字も意識してないんだけど大丈夫なのかな。うーん、ジオス神の狙いが分からん。僕はやりたいようにやるけどさ。
「使徒様、お帰りなさいませ」
うわ、カリンが跪いて頭を垂れてきた。油断してたよ。僕使徒だった。彼女の全身から迸る信者オーラはどうにかならないのだろうか。
「あーしとさまだー!」
「おかりなさいませ」
「ませー、ひん」
「ふふ、みんな。ケイも疲れているから飛びついちゃだめよ。ケイ、おかえり」
ベステルタが元気いっぱいの子供達をぶら下げたり引っつけたりしながら、出迎えてくれた。すっかり保母さんみたいになっている。ありだな……。
「あ、お姉様あああ」
背中に特徴的な小さい羽を生やした子供がプテュエラに突撃する。この子、初対面の時から随分プテュエラに懐いていたよな。
「わぷ、な、なんだ」
「その子はバルデよ。何か妙にプテュエラに会いたがっていたのよね」
「ば、バルデは、プテュエラ様をお慕いしておりますぅぅぅ!」
ふがふがとプテュエラの身体に顔を埋めて恍惚そうな顔を浮かべるバルデちゃん。
「こ、こら。バルデ、お止めなさい! 失礼でしょう!」
慌てるカリンと状況が分からないプテュエラ。通訳してバルデのことを伝える。
「あ、いや、別にいいんだ。ジオス教徒の子供に懐かれるのは嬉しい。ただ、何で私をこう慕うのか分からなくてな」
バルデが慕っていることを伝えると何となく理解したようだった。でも自分よりずっと小さな子供にモフられ困惑している。こんな感じのプテュエラは珍しいな。新鮮だ。
「バルデは蝙蝠族だから、プテュエラ様みたいにかっこよく飛べるのが羨ましいんだよ!」
とりわけ元気いっぱいの子が答える。あー、確かリーノウちゃんだっけな。
「バルデちゃんはまだうまく飛べないから……ひん」
この男の子はザルドくんだな。もじもじしているが美少年だ。これはお姉さんキラーになりそう。気をつけねば。
よく見ると二人とも身体に特徴があるな。種族は何だろう。
「二人は何族なの?」
「リーノウは誇り高き犀人族だ!」
「ひん、ザルドは気高き蜥蜴人族」
蝙蝠族、犀人族、蜥蜴人族。よりみどりだな。確かにリーノウちゃんの頭にはちっちゃな角が生えているし、ザルドくんの肌には鱗がある。なるほど、バルデちゃんの羽は蝙蝠か。
「お姉様! バルデに飛び方を教えて下さい! お姉様みたいに飛びたいので! かっこよくなりたいので!」
バルデちゃんが必死に頼み込んでいる。この子最初は結構大人しいように見えたんだけどな。
「はは。もちろんだ。飛び方を教えるのは初めてだが、楽しそうだ。よろしく、バルデ、と伝えてくれるか?」
いちいち僕の通訳挟むのはめんどいけど仕方ない。バルデに内容を伝える。
「やったぁ! お姉様好きぃ!」
もふもふもふ、と顔を埋めるバルデ。まるで僕がいないかのように振る舞い。うーん、そろそろ中に入りたい。
「バルデちゃん、モフるのはそれくらいにして、そろそろ部屋の中に入ってもいいかい?」
「え……? あ、はい。どうぞ使徒様」
うおっ、首だけぐるっとこっちを向いた。無表情だ。しかも声のトーンも変わっている。この落差。何もしてないのに凹むんだが。
「申し訳ございません、使徒様。後で言って聞かせますので」
カリンが申し訳なさそうに謝ってくる。
「ううん、気にしてないよ。それよりも子供達が僕やベステルタたちと話したいらしいね。あ、もしかしてカリンも?」
「す、すみません」
恥ずかしそうに顔を伏せる。くっ、可愛い。線が細くて気弱な薄幸シスター。しかしその実、超がつく狂信者だからね。
質素な礼拝堂を通り過ぎ、孤児院の一角、たぶん普段みんなが過ごしている部屋、というか教室に案内される。小さな机が行儀よく並べられ、カリンが使っているであろう教壇がある。ここで勉強を教えているんだろうね。
「みんなのために使徒様が来て下さいました。ちゃんとお礼を言いましょう」
「「「しとさま、ありがとうございます」」」
子供達の元気な声。はー、癒やされる。使徒とか関係無ければもっとよかったんだけど。
「では使徒様。恐れながら子供達の質問に答えて頂いても宜しいでしょうか? もちろん、答えられる範囲で構いません」
「はーい」
教壇に立って椅子に座って目を光らせる子供達を見渡す。好奇心旺盛だ。いいことだね。
「しとさま、亜人様好きですか!」
リーノウちゃんだ。
「好きだよ」
当たり前だ。愚問やで。
『ふふ』
『はは』
二人とも笑ってる。別にいいでしょ。
「得意な武器は何ですか?」
冷静そうな男の子。うーん。
「ベステルタの爪だよ」
「爪?」
分からなそうだったから、実際に爪を見せてひゅんひゅん振ると「ふぉぉぉぉ」とちびっ子たちが大興奮してくれた。カリンもそれに混じって興奮……。
「なるほど! 状況に応じて何でも使えるようになれ、ということですね。勉強になりました」
何だか納得してくれたようだ。まあそれしかないから使ってた、というのは合ってる。今はフランチェスカもあるんだけど、ここで出したら驚かれちゃいそうだからやめておこう。
「今まで一番強かった敵はなんですかー?」
ぽわぽした女の子。何か戦闘系の質問多いな。意外だ。
「面倒くさかったのは群れたマスキュラス、厄介だったのは徒党を組んだダークエイプ、強いっていうか目標はフレイムベアだね」
「フレイムベアなんて倒せるのか!? でんせつの魔獣だろ!?」
生意気そうな男の子。立ち上がって目が爛々だ。伝説なのかあれは。
「僕はまだ無理だけど、亜人たちなら冗談抜きに一瞬だよ」
誇張無しなんだよなあ。
「すっげえええ! やっべえええ!」
大喜びだ。やっぱ男の子はこういうの好きだよなー。女の子たちも楽しそうにしているのがよく分からないけど。騎士でも目指しているのかな?
「お姉様とはどこまで?」
バルデちゃんが際どい質問を投げかける。うわ、教室が静まり返ってしまった。
「どうした?」
「何かあったの?」
(しとさまと亜人様、なんて言っているんだろうね)
僕がうまく言えないでいると、二人が訊いてくる。
(分からないね)
(きっとお姉様に命令しているのよ)
(ひん、そんなことないと思うよお)
何だかひそひそ声が聴こえてくるが。
「いや、プテュエラとはどこまでいったのかって……何て答えればいいか分からなくて。はは」
こういう繊細な質問、子供になんて答えればいいかなんて分からないよ。
二人は少し思案して、プテュエラが言った。
「ふむ、ならばこれでどうだ」
不意に顔が近づけられる。
ズギューーーン!
う、奪われた。公衆の面前で。
「うおおおおおおおお」
「ひいいいいいいいん」
「きいいいいいいいい!」
ざわめく子供達を見てニヤリ。
「これ以上だ」
キメ顔。
「やべえええええええ」
「大人すげえええええ」
「お、おねっ、おねえさまあああ!」
子供たちけっこうマセてるな。ガン見してくるじゃん。そしてバルデが血を吐くような叫び声を上げる。うっ、僕を見る視線に殺意が込もっている。子供がそんな目したら駄目だよ……。
「なら私も」
ベステルタが、あっ。
ズギュゥゥウウン!
ま、またしても。
「ふぁぁぁぁぁぁぁ」
ぱちぱちぱち。
手を叩いて興奮するカリン。完全に立場を忘れている。あーあ、これしばらく続きそうだ。
やっと落ち着いて質問タイムが再開した。今度は僕からだ。
「みんなは何歳?」
「「「11さ14い145525さい3421242さ82451さいさいさい!!!」」」
だめだ訊き方が悪かった。一人一人に訊かないと。
「リーノウは?」
「11歳だ!」
その割には大きいな。犀人だし種族的なものかな?
「バルデは?」
「12歳ですが?」
何か? と冷たい眼差し。これ完全によく思われていないなあ。
「ザルドは?」
「14ひん歳です」
ええ、どう考えても低学年にしか見えないのだが。ここら辺のバラツキはなんだろう。
「使徒様、獣人は種族によって心と身体の成長スピードが異なります。さらに人族よりもレベルに依存した成長をするので、違和感を感じるのかと」
カリン、ナイスフォロー。
はー、なるほどな。じゃあみんな見た目通りでないし、逆に見た目通りの年齢ってことか。ゴドーさんやブラガさんも実は結構若いってことかな。でも二人は獣の特徴が強く出ているし。うーん、よく分かんなくなってきた。見た目は低学年のザルドもレベル上げればぐんぐん成長するってことだよね?
「あ、そうだ。みんな僕のことはケイとかお兄さんって読んでね。カリンもね」
そうそう。正直、使徒って呼ばれていると課長、部長って言われているようで嫌だし。名前で読んで欲しいんだよね。
「そ、そんな。恐れ多いです……」
「いいからいいから」
「う、け、ケイ様……」
恐縮するカリンを何とか説得して、名前で呼ばせることには成功した。
「アニキ!」
「ケイ……さん」
「師匠!」
リーノウは素直で良い子供だね。バルデはなんで一瞬躊躇ったのかな。そして、ザルド。師匠ってどういうこと?
「ひ、ひん。ザルドは師匠の弟子になりたいです。お願いします」
ぺこり、と頭を下げる美少年。どういうことだ?
「話が見えないよ。どういうことかな?」
「ひ、ひん。ザルドはリザードマンです。雌とたくさん番って繁殖することが使命であり、男の証です。師匠はものすごく強い亜人様を三人も契約しています。亜人様と繁殖できる人は少ないのに、師匠はさらに三人も相手取っています。だ、だから、師匠に繁殖術を教えて欲しいです、ひん」
世のお姉さん方がきゅんってしそうなショタフェイスでとんでもない事を口走るザルド。あと、君結構喋るのね。
ていうか、繁殖術って……。
0
お気に入りに追加
1,409
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる