絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

文字の大きさ
上 下
30 / 153

決めたこと

しおりを挟む
 そんなこんなで日々は過ぎていった。

 シュレアの野菜栽培を手伝ったり、プテュエラの狩ってきた肉を試食したり、リンカに水をあげて話せないか試したり。ベステルタは二人の手伝いをしながら、自分のやりたいことを探しているようだった。

 戦闘訓練も自分の中のセオリーとか、必勝パターンなんかも開発できている。つまりコンボだね。少しは自信も出てきた。

 僕は戦闘訓練をしつつ、家の周りの開拓を少しずつ進めた。と言っても樹魔法で「ごめんね? あそこに移ってくれる?」とお願いするだけだ。お願いすると、樹木たちは根っこをよっこらせっと地面から引っこ抜き、のしのしと移動して、指定の場所に穴を掘ってずっぽり植わる。植わるって表現初めてしたけど、そうとしか言えないんだよな……。
 
 その代わりに僕の魔力を分け与えてたり、移動先の土を浄化して棲みやすくした。けっこう喜んでくれて嬉しかった。

 ふと久しぶりにステータスを見てみた。

「ステータス」

氏名 種巣 啓
レベル  30
体力 120
魔力 150
腕力 100
精神 50
知力 90
器用 80

スキル
生活魔法
料理術(Lv1)
房中術(Lv8)

固有スキル

練喚攻・一層(発動中)
賢樹魔法
殲風魔法
言語理解
頑健(Lv2)
浄化(Lv2)
 
 う、うーん? 突っ込みどころが多くてよくわからない。

 レベルが上がっていたのは分かる。
 訓練やら夜の訓練やらしていたからね。体力、魔力、腕力は何気に使う場面多いから上がりやすかったのだろう。精神が相変わらず弱いのはショックだけど。

 地味に料理スキルが付いていたのは嬉しい。ただ、房中術って。あれだよね、男女のそういうやつだよね? これだけレベルが図抜けて高いんだけど……。
 しかもこれらもレベル表記が新しく生まれている。スキルって育つものだったのか。

 まあいい、問題は固有スキルだ。
 てっきり亜人の力はスキルだと思っていたが、固有に割り振られるのね。もう亜人魔法と呼んだ方がいい気がする。

 そして、樹魔法と風魔法がそれぞれ名前が違っていた。なんだよ賢樹魔法と殲風魔法って。めちゃくちゃやばそうじゃないか。あと練喚攻・一層って何? 一層ってことは、何層かあるってこと? しかも発動中ってパッシブってこと? 


 あと、浄化と頑健にもレベル表記がされていた。使いまくっていたからかな? 
 
 だめだ、分からない。謎しかない。

 ベステルタたちに訊いてみるか。皆を呼び集めてた。

「という訳で、僕のスキルがおかしなことになっているんだけど理由分かる?」

「分からないわ」

「分からんな」

「分かりかねます」

 三人仲良く答えた。むう、手詰まりだな。そうだ、みんなのステータスを見せてもらおう。何か分かるかもしれない。今まで見たことなかったし。

「そういえばみんなのステータス見たことなかったんだけど、見せてくれる? 何か分かるかもしれないし」

「ああ、それね。亜人は何故かステータスが無いのよ」

 えっ? そうなの?

「うむ。人族がステータスを発動できるのは知っているが、亜人は適用されないらしい」

「業腹ですが、魔獣等もステータスが無いことから、亜人も同じ区分なのかもしれません」

 シュレアが不機嫌そうに言った。

 マジか。亜人って魔獣に近かったのか。言われてみればそうかもしれない。こう、良くあるエルフとかドワーフとか獣人なんかとは少し違うからね。

 それで今さら態度が変わったりしないけどさ。

「それにしてもわたしたちの力ってこんな風にステータスには写るのね。面白いわ」

「ああ、ただの風魔法じゃなかったんだな。殲風魔法か。いいじゃないか」

「賢樹魔法は言い得て妙です。気に入りました」

 何だか嬉しそうな三人。君たちが嬉しそうだと僕も嬉しいよ。何一つとして解決していないけど。

「ベステルタ、この一層っていうの何だか分かる?」

 そう、他の亜人魔法と比べた時に、練喚攻だけレベルのようなものを匂わせる表記がある。これはなんだろう。

「うーん……完全に推測なんだけど。練喚攻を教えた時に、『できるだけ身体を細分化して纏わせる』って言ったじゃない?」

 言ったね。やり過ぎて僕が爆発四散しかけたやつだ。

「あれを指しているんじゃないかしら? 例えば身体全体を大雑把に覆うなら一層。上半身と下半身なら二層とか」

 わっ、ベステルタすごいな。さすが元祖練喚攻。

 たぶん、それ正解な気がする。

「ちょっと試してみるね」

「気を付けてね」

 ベステルタが心配そうに言った。もうあそこまでやったりしないよ。とりあえず身体の外側だけを覆ってみることにする。

 ベステルタの力を上半身と下半身に纏わせる……。これでどうだ?

「ステータス」

氏名 種巣 啓
レベル  30
体力 120
魔力 150
腕力 100
精神 50
知力 90
器用 80

スキル

生活魔法
料理術(Lv1)
房中術(Lv8)

固有スキル

練喚攻・二層(発動中)
賢樹魔法
殲風魔法
言語理解
頑健(Lv2)
浄化(Lv2)

 うおっ、二層になってる。ベステルタ理論が実証された。

「ケイ、どう?」

「すごいよベステルタ。言う通りだった」

 ということは、細分化していけば何層にも深まっていくってことか。へー、すごいな。

 ただ、ステータスに加算される訳ではないんだね。そこは体感で図る必要があるか。

 もしかして他の亜人魔法にもそういうのあるのかな。今度探してみよう。

「おお、すごいな、ベス。練喚攻はまだまだ強くなるぞ!」

「おめでとうございます」

「ふふ、ありがとう」

 あれ、なんかベステルタを褒め称えるムードになっている。いや、いいんだけど。

「練喚攻については分かったね。でも、浄化や頑健のレベルについては分からないか」

 自分のスキルだし、きちんと把握しておきたいんだよね。実は使う度に微少なダメージを受ける、とかあったら嫌だし。

「それならデイライトに行ってはいかがですか? そこで人に訊いたり資料で調べるのも手かと」

 シュレアが具体的な提案をしてくれた。流石、研究者だね。

「そうね、そもそもデイライトで家を買うためにいろいろしていた訳だし」

「最近やることあって後回しにしていたからな。ケイも強くなったし、そろそろだろう」

 お、マジか。とうとう噂の迷宮都市デイライトに行けるんだね。

 確かに随分戦えるようになった気がする。
 
 ダイオークやマスキュラスには楽々勝てるし、ダークエイプで包囲されても潜り抜ける訓練も積んだ。自分の身は守れそうだ。
 
「それならそうしようか。じゃあ「ケイ、ちょっといいかしら?」準備に、うん?」

 ベステルタが話を遮ってきた。どうしたんだろう。少し真剣な表情だ。プテュエラやシュレアも不思議そうにしている。

「実はわたしもあれから考えて、自分のやりたいことを見つけたの」

 おお、そうなんだ! それはよかった。ちょっと悩んでたみたいだしね。でも、何で今?

「ケイ、わたし、冒険がしたいわ。だから連れていって欲しいの」

 え。

「ベス、お前忘れたのか? 私達は亜人だぞ? 人に姿を見せるのが禁止されているわけではないが、街に入れるわけ無いじゃないか」

「プテュエラの言う通りです。ベステルタ、貴方らしくもありません。どうしたのですか?」

 二人が驚いたようにベステルタを見る。

「わたし、あれから考えたの。自分が何をしたいかって。
 わたし、知らないものを知りたいの。知らないことを体験したいの。昔、商人を助けた時から、たぶんずっと心の奥底で意識していたのね。外の世界を知りたいって」

 滔々と話すベステルタ。

「絶死の森はわたしの故郷よ。どんなに死が満ちていようと、魔素に犯されていようとそれは変わらない。でも、ここだけで終わりたくないの。もっと、そう、色んな世界を知りたいのよ」

 ベステルタの切実な言葉は僕に突き刺さった。

 僕も前の世界で、同じようなことを思っていた。

 やりたいことなんてなかった。漠然と不安を覚えていた。周りが何かに打ち込んでいることに嫉妬して、そんな自分が惨めだった。

 ただ仕事して。多くもない給料で疲れて帰ると、何もやる気が起きない。興味はスマホの中で完結して、すぐにまた明日になってその繰り返し。
 
 僕は一体何をしているんだろう。
 世界は広いはずなのに、こんな狭いところで、狭いルールに縛られて、一生を終えるのだろうか。

 そんな疑問を抱きながらも何もできなかった。

 分かる。すごく分かるよ。

 ベステルタは違う。彼女は自分で動こうとしている。友達から批判されても、従来の慣習にそぐわなくても、とりあえずやろうとしている。

 ベステルタの瞳が僕をぐっと見据えている。金色の、綺麗な目だ。

 身体が暖かい。
 パスを通して彼女の魔力に反応しているのだろう。

 その彼女の進む力が、僕にも備わっている気がして嬉しかった。

「いいね、ベステルタ。冒険部か。楽しそうだ。一緒に行こう。きっと楽しいよ」

「ケイ、ありがとう!」

 ベステルタが僕を抱き締める。ふんわり良い匂い。いつもの香り。折れる折れる。

「私もシュレアも、ベステルタが楽しそうなのは嬉しい。だが実際どうするんだ? 亜人が街に入ったら絶対に攻撃されるぞ」

「ベステルタが傷付いたらあの街の命を吸い付くしてしまうかもしれません。何か考えがありますか?」

 真剣な顔で忠告をしてくれるプテュエラたち。友達っていいよね。シュレアは物騒だけど。

「あるよ。簡単だ。変装すればいい」

 全身を覆う鎧とか、ローブなんかでさ。シンプルが一番いいんだ。まあ駄目ならまた考えればいいさ。とにかく今は行動しよう。

「うーむ、それで大丈夫だろうか」

「心配です」

「ケイが大丈夫って言うんだから大丈夫よ、ね?」

 にっこり微笑む人外筋肉お姉さん。かわいい。

「まあ、とりあえず行ってみて考えよう。鎧やローブの変装道具が手に入れるまでは近くで待機して欲しいんだけど大丈夫?」

「もちろん、問題ないわ。ありがとう」

 にっこり頷く。

 この笑顔をもっと笑顔にしたいな。もちろん、他の二人もね。

 さて、これから準備だね。忙しくなるぞ。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています

もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。 使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。

処理中です...