【異世界大量転生2】囲われモブは静かに引きこもりたい

閑話:ヒロイン1

極秘に侵攻を仕掛けたセルビア軍3万を《サヴァレーゼの聖者》が撃破。生存者無し。


そう聞くと、私の体は震えた。

ああ、ああ……ああ！やっぱり！やっぱりそうなのね？！

私はその場で跪き、神に祈る。



やっぱり、ここは。この世界は《隠しルート》の世界なんだ！



おかしいと思っていた。

16歳になっていないのに聖女候補に選ばれたり。《悪役令嬢》が王太子の婚約者になっていないばかりか、デビューもせず、学園にも通わないなんて。

きっと、ルートを何周もしてスチルを回収し、やっと出てくるルートか、有料ダウンロードなのだろう。

もう、王太子も第二王子も、宰相の息子も神官も他国の皇子も……他の攻略者はどうだっていい。

オズワルド様。

ああ、オズワルド様は、私だけの聖者様なんだ。

未熟な聖女を導き、共に世界を見守る。そんなストーリー！

悪役令嬢みたいにギラギラした色合いじゃない、あの甘い蜂蜜のような髪の色。吸い込まれそうな深い緑の瞳。私だけに向けられる美しい微笑み。

早くあの悪魔から。ヴァッサロ将軍から彼を救い出さなきゃ…。

そう、私が救うの。

権力にものを言わせ、自分は呪いに侵され短命だと、オズワルド様の哀れみを利用して。美しいオズワルド様を囲い込んだあの悪魔。

あの悪魔には、《悪役令嬢》がついている。

《悪役令嬢ルクレツィア》は転生者だ。そうでなければ説明できない出来事の連続だ。

尽くヒロインである私の邪魔をしてくる《悪役令嬢》。ルート回収はうまくいかないし、レベリングも最悪。あいつがいるからストーリー通りに《先読み》しても、まったく当たってくれない。オズワルド様にも近寄れない。

挙句に、神竜を殺したとかの罪をでっち上げられて閉じ込められた。

冗談じゃないわ！ここは私の世界よ！好きにさせないわ！


だから、あの悪魔たちには早々に退場して貰わなくちゃね？







「聖女よ、なにが見えた？」

攻略済みの皇子が私の頬を撫でる。

この皇子も1番の推しだったけど、もういらない。オズワルド様が手に入ればいい。











「ふふ…サヴァレーゼの滅亡ですわ」