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モブと裁き
しおりを挟む《ぼうや、いいえ、カムイ。良い餌係に巡り合えたようですね》
カリーナは笑った。
竜ってなんでどいつもこいつも俺を餌係認定なのかとか、なんで自分たちの食事のことを餌っていうのかとか、めっちゃ訊きたいけど訊けない。きっとこのシーンはシリアスだ。元日本人、空気読む。
《そこな餌係。えー……》
「オズワルドと申します」
《ふむ、オズワルド、か。よかろう、己が罪に対する裁きを言い渡そう》
「……謹んで、お受けいたします」
あー…今すぐ死ねっていうのは困るなぁ。まだ隣国の侵攻止めてないし。
俺は臣下の礼を取りながら片膝を付く。
《お主は運命を捻じ曲げ、わたくしを殺したのだな?では ーーー その捻じ曲げた運命、最後まで貫いてみせよ》
「…………は…?」
はい?
《わたくしがお主如き《界を渡りし者》に、ただただ翻弄されたとあっては不愉快じゃ》
ギクリとする。
竜語……わかる人間がこの場にいないといいなあ。
……って、そうじゃなくて!
《わたくしの命を無駄にするでない。貫いてみせよ。抗ってみせよ。そしてわたくしの息子を幸せにしてみせよ。輪廻の輪から見張っておるぞ?》
「………………はい」
涙が溢れる。
ああ……なんて優しい竜だろう。
昨日から泣いてばかりだ。
『さて、そこな愚かな人間どもよ』
カリーナはサヴァレーゼ語に言い換え、横たわったままの王太子たちを睨め付ける。
『神竜が一柱を害した罪、決して軽くはないぞ?しかも……わたくしの、大事な、旦那様まで……!!』
ざわりと白い髪が蛇のように蠢く。カムイがクンクン言いながら鼻先でカリーナを突くと少し収まったが。
『お前たちは今から死人よ。北の地にて、わたくしの祠を奉り、祀って ーーー 死ね。生涯、北の地から出ることも、誰かと番うことも赦さぬ。幸せを感じることも、許しを乞うことも赦さぬ。我が民を、旦那様を、わたくしを殺めたことを悔い、絶望の中で逝ね』
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