【異世界大量転生2】囲われモブは静かに引きこもりたい

モブとイメージ

ちょっと脅したら、陛下はすぐに真実を告知すると約束してくれた。

約束破ったら、もっと凄い呪いヤツ来ますからね？と笑いかけると壊れたオモチャのように頷いていた。





王太子と体調を崩した騎士たちを一部屋に集めてもらう。

その中にルミナの姿が無かったのは、さすが主人公だと言わざるを得ない。



まずは王太子を見る。あー…、こりゃ酷い。ぬらぬらグチャっとして骨とか見えてる。生きながら腐るとか、祟りってえぐいなあ…。

部屋中が酷い臭いがするが、腐臭とか全くの想定内。自分の足で汚物だらけの硝石畑に入って、嬉々として硝石採取する変人妻舐めんなよ？

呻き声しかあげられない、祟りの被害者たち。でもね、お前たちが殺した北の民族さんたち、俺が到着した時には呻き声すらあげれない死体だったからね？



「因果応報という言葉がある」



俺は呻き声に負けないくらい大きな声で言った。



「非武装の村人を殺すのは簡単だっただろ？やめてって泣いた子供も居たんじゃないか？楽しかったか？人質を取れば面白いほど言うことを聞いただろ？自分が強くなった気がして、楽しかっただろう？殺して、犯して、遊んだよな？ああ、楽しかったな。笑ってたもんな？」




きっと俺も地獄に落ちる。お前たちは直接手を下したけれど、俺は運命を捻じ曲げた。だから ーーー 








「 ーーー それが、報いだ」









王太子が澱んだ目で俺を見る。はくはくと、言葉にならない何かを口にして、血と膿の混じった涙を流した。




「お前たちは償わなくてはならない。殺さない。生きて、自分の愚かしさを知って、恥じて、苦しみ、償え。逃さない。死なせてなんかやらない。生きろ。生きて、血反吐を吐きながら苦しみ抜け」




王太子の手を取る。油断すると崩れてしまいそうな手だ。

跪き、両手で握った王太子の手を、額にくっ付ける。

目を閉じて、イメージ。そう、要はイメージだ。

腐るというのは細菌の繁殖。細菌から発生する毒素。傷が治らないのは、細胞の再生が正常でないこと。

治癒術と錬金術は根っこは同じ。理論がわかればイメージで……まあ、あとは力技？

細菌を焼き、毒素を取り除くことを思い描くと、臍のあたりがふわっと温かくなる。それを額まで流し、王太子の腐った手に流していく。あくまでイメージ。

理科の動画の、細胞が分裂して増えていく。あのイメージ。壊れて使えない細胞を焼き切る。新しい細胞が下から古い細胞を押し上げる。あくまで、ほんと、あくまでイメージだから。



ふ、と指先に冷たいものが触れる。目を開けて前を見ると………









そこには、血の涙を流す、真っ黒な影があった。