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モブと飴
しおりを挟むカムイの餌は、俺が弄くり回したもの ーーー 要するに魔力を通したものならなんでも食うことが判明した。
だが毎回果物切ってやったりとか面倒すぎる…。
そう思って飴を作ることにした。
幸いなことに、この異世界では砂糖はさほど高価ではない。庶民も口にできる甘味だ。
錬金術スキルで異世界リンゴを丸ごと凍らせ粉砕し、水分を飛ばしていく。
砂糖は熱を加えて溶かし、粉末状になったリンゴと混ぜ合わせる。
空中でフワフワ浮く飴の原料に、カムイは目を輝かせてお座りしている。
さて、形状は……うん、取り敢えず普通のラムネ玉サイズでいいか。
空中で千切り、丸めて冷却。乾燥。瓶に入れて完成だ。皮ごと使ってるから赤い色が不透明な果肉色と混ざってピンクで可愛い。健康にもいいポリフェノールだね。
ひとつ摘んで口に入れると、普通にピーチキャンディだ。
異世界のリンゴがモモ味なんだから、リンゴの味した果物がどこかにあるんだろうか。
キュン!クゥーン…クンクフン!
「ああ…ほら。噛むなよ?ゆっくり舐める菓子だからな?」
大口を開けたカムイに飴を放り込む。
…………!!キュン!
お気に召したようだ。
「………狡いです、狡いです、狡いです、カムイ…!オズ兄様、わたくしも!」
いつのまにかカムイの隣にしゃがんでいたルクレツィアが、カムイの真似をして口を開けてスタンバイ。淑女としては些かはしたないが……。
「はい。噛んじゃダメだよ?」
そっと口の中に入れてやる。
「…………!……………!!あまい…!…おいひい……れす……」
可愛いから許す。うむ、今日も俺の娘は世界一だ。
フニャッと笑うルクレツィアの頭を撫でる。
………(ガリン…コリコリ……)……クゥウン…!
あっ。コイツ噛み砕きやがった。
もうないよ?と言わんばかりにカムイが口を開けて待っている。……くぬう。
「噛むなよ?まあ噛んでも美味いけど…」
クワン!
犬かこいつ。
まあこれで飴玉作戦は有効なのがわかった。量産しよう。
全体的なレベルが上がったから錬金術スキルも、もはやチートレベルになってるしね?
今度は上手に舐めているカムイを撫でていると、二階の執務室で仕事してたはずのテオが歩いてきた。
「楽しそうだな?」
「んんー?うん、テオもいる?」
「貰おう」
瓶の中から飴を取り出してテオの口に………入れようとした手を取られて口付けられる。口の中の飴がテオの舌に絡めとられて持っていかれた…。
そっちの飴かよ!?
「美味い」
「そりゃよかった」
夫の頭の中が日に日にピンクに染まっていってる気がする。
いやまて、思い出せ俺。オズワルドが俺になった日から、いいやそれ以前からテオの思考はピンクだった。目覚めたその日にプロポーズだもんなぁ…。
今更か…と苦笑いして、手にした飴を口の中に放り込んだ。
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