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「これで戻る奴って頭おかしいだろ?」
しおりを挟む「リアム!許してやると言っているだろう!!」
そう言って自分の地団駄を踏む元主人は『元』になった時から…あー、その……うん、はっきり言おう。丸くなった。まんまるだ。俺が強制減量させる前はこんなんだったから違和感はない。ないんだが、まあ半年そこらでどこをどうやったらこんなに肥えるんだ。養豚業者にコツを教えてやれ。
「お前は私がシャーロットを捨てたのが気に入らなかったのか?だからメンドゥサ王国を飛び出し、当て付けのようにそんな男と…!主人にそのような態度を取ったのは許してやる。半年以上職務を放棄したこともだ。許してやるから…」
あっ。やばい碧海の目が据わった。
「……あのなあ、バカ王太子?」
「…っ!?バッ、バカ!?」
「事実を都合の良いように捻じ曲げるなよ。俺たちを捨てたのはメンドゥサ王国だ」
手を放せばそこら一帯焦土になる気がするから碧海の手をニギニギする。ほーら落ち着け。帰ったら好きなだけイチャイチャしような?
「頭の悪いお前にもわかりやすく教えてやる。シャーロットは婚約なぞしてないし、お前の婚約者は俺が仕え始めた時からずっとウリエラ嬢だ。俺は何十回も言ったよな?ウリエラ嬢に贈り物はしたのか夜会のエスコートの予定は伝えたのか茶会には誘ったのか…とな。まるっと無視したのはお前だよバカ王太子。些かうるさく言いすぎたとは思うが、まさか殺されそうになるとは思わなかったよ」
「違…っ」
「なにが違うんだよ。こっちは夜会用の正装でナマクラ剣一本。俺と妹を囲んだ騎士団はガッチガチに武装して盾まで持って抜刀した。うっかり事故を起こせば死んでいた。わかるか?お前がどういうつもりだったかは知らんが、あそこにいた騎士たちは本気で殺すつもりだったんだろうさ」
騎士団長や宰相たちに鬱陶しがられてたのは知ってる。俺が王太子をマトモにしたせいで王家を操り難くなったんだろう。
「しかもテメエ、そこにいる太鼓持ち……じゃなくてクソボンクラと売女と一緒になって魔女様への生贄に細工をしやがった。代わりを寄越せと言った魔女に、メンドゥサ国王はあっさりと俺を魔女に売り飛ばした。死ぬかもしれないのに。死ぬとわかっていて」
「待ってくれ!俺が受けた依頼内容と違うぜ!?」
「そりゃそうだ。『高位貴族の代わりに魔女に平民を売り飛ばした。だが惜しくなったから取り戻してくれ』なんて依頼、勇者パーティーのあんたたちが受けるのかよ?曲がりなりにも『正義の神の御使』が受けるわけねえよな?……まあ実際踊らされてんだけどな。父ちゃんと同じSSSランク冒険者が依頼の裏も取らねぇとか……はぁ…どいつもこいつもバッカじゃねえの?その結果、俺は碧海と恋をして結婚までしたから『結果おーらい』だがな」
「な…なら……」
「結果が良かったとしても、戻るわけねえだろ。裏切られて殺されかかって挙句に売り飛ばされた。それを「許してやる」?これで戻る奴って頭おかしいだろ?」
「……っ、わ、わかった!シャーロットを私の婚約者にしよう!それで解決だ!」
……はあ???
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