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【勇者視点】「なんだよ!?魔王よりヤバくねえコイツ!?」

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魔道士バカが魔王に突進していった。あいつこんなに短絡的だったか!?すかさず聖女が結界と物理反射を張るが ーーー 

弾かれた。


「……っ!!」


まずい。これはまずい。俺が腰を浮かせる前にリアム・ハルフォードが魔道士の喉元に剣を突き付けた。


「俺のもんに近寄るな」


ビリビリとした殺気。災害級のオークキングやドラゴンでもここまでの圧を感じたことがない。感情の欠片もない赤い瞳の男は、もしここで俺たちが指一本でも動かせば……。

なんだよ!?魔王よりヤバくねえコイツ!?

魔王にリアム・ハルフォードは古代種ラナーの血を引く。妹を殺すとでも脅されて、無理矢理に婚姻を強要されているのだろう……というのがメンドゥサ国王の依頼だった。魔道士はリアム・ハルフォードは自分の恋人で、救出を望んでいると言った。それがどうだ。どう見ても俺たちの方が蜂の巣をつつきに行ったようなもんだ。

リアム・ハルフォードが自ら望んで魔王と婚姻を結んだと仮定して。

俺たちは『勇者パーティー』だ。人類に仇なす魔王や魔族を討つべく神に祝福された存在だ。その天敵ともいえる俺たちが、なんの瑕疵もない自分の最愛の者を害そうとしたら?……俺がリアム・ハルフォードなら、こんなにわかりやすい危険は全力で排除しにいくだろう。


「……………」


ゴキュッと唾を飲む音がやけに大きく響いた。誰だ、音出したの。……俺だ。この緊迫した空気にメンドゥサ王国側の王太子一行は倒れたり漏らしたりと大惨事だ。魔力に敏感なうちの聖女も吐いた。


さあどうするか。


そんな中、空気を読まずに魔王が笑い出す。

嬉しい、だと!?おかしいだろ海の魔王!?トロリと蕩けた顔とおっとりした口調に騙されそうになるが、明らかに異常だ。


「ねえリアム、早く帰ろう?僕……君を孕ませたくて堪らない」


あっ。こいつ関わったらダメなやつだ。俺は遠い目をする。見ちゃダメだ。嬉しそうに目を爛々と輝かせる暗殺者と目が合う。コイツとも関わりたくない。





はあ…とリアム・ハルフォードが溜息をいた。








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