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「リアムがお口を塞いでくれたら黙るんだけどなあ?」
しおりを挟むハルフォード男爵邸に久しぶりに里帰りすると、使用人一堂で出迎えてくれた。そして不躾な視線で値踏みが始まった。
「……お嬢様の婚約者って…え?サイラス殿下って、生贄の時はもっとこう丸っこくて…」
「がんめんへんさち高水準のいけめんですわぁ!お嬢様、このお婿様たちがもでるの新刊はいつ出ますか!?」
「クッ…!リアム様…!!結局は顔か!?顔なのかよぉぉ!」
「魔王を引っ掛けて帰っていらっしゃるとは……坊っちゃまもやりますなあ」
さらにじっとりと視線が俺の手のあたりに集中する。……ん?
「あぁん…やだぁ/// 仲良しさんね♡」
「坊っちゃまたちは新婚さんだしね(デュフフ)」
「お…オレはリアム様がお幸せならそれで…ッ(グスグス…)」
「夫婦円満は良い事ですなあ。坊っちゃま、爺は嬉しゅうございます」
「…………???…ふぁっ!?」
そうだ!いつも手を繋いだりしてて忘れてた!!し、し…しかも恋人繋ぎじゃねえか!!
慌てて放そうとするけど、碧海の指ががっちり絡んで放れねえ…!!
「碧海…!手…!!」
「良いじゃない?外でもキスまでは良いってリアムが言ったんだし」
そういう感じじゃねえええええ!!時と!場所を!弁えろバカ旦那!!
ンン!とハルフォードのおっちゃんが咳払いをする。ほら!怒られた!!
「魔王殿、仲が良いことは良いが節度を守って頂きたい」
「ねえリアム?この人リアムをとられて拗ねてるの?リアムは僕のなのに?ねえ?」
「碧海、ちょっと黙ろうな?」
「えー…リアムがお口を塞いでくれたら黙るんだけどなあ?(チラッチラッ)」
「……はぁ…飴でも食べてろ」
碧海の好きな蜂蜜の飴を口の中に放り込む。プーッと膨れて見せるうちの旦那が可愛すぎる。だが騙されるな。これは演技だ。……俺のために演技する碧海が可愛い…。
「メンドゥサの王太子殿下と勇者一行がお待ちだ。お前が里帰りするとどこからか嗅ぎつけて知らぬ存ぜぬで数日待たせているから、今更あと数刻のんびりしても問題はないのだが……はあ。叔母上の口添えさえなければ王太子たちは関所で留め置いたものを……。勇者とか言う眉唾な者どもも、この港町オウルは魔女様の庇護の元に成り立っているというのを知らぬボンクラ集団か……。面倒なことこの上ないな。このまま鍵でもかけて10年くらい忘れていたいが……まあとりあえず行くぞ。面倒事を終わらせてからゆっくりしよう」
「若様、心の声がダダ漏れでございます」
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※爺は先代陛下の子を身籠った男爵家令嬢(現ハルフォード男爵の実母)の護衛としてつけられてハルフォードに来た猛者です。58歳くらい。
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