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「ジュワッとサクッと」
しおりを挟む小麦粉を冷たい水で伸ばした衣に、少量の油を入れる。衣は多少ダマがあってもいい。混ぜすぎる方が上手く揚がらなくなる。
ん?なんの話だって?異世界では『テンプラ』って呼ばれる揚げ物だ。まずは野菜。玉葱と茄子、牛蒡、茸、蓮の根、南瓜、竜髭菜。適当な大きさに切ってしっかり水気を切る。茸は水では洗わずにしっかりとブラシをかけた。
揚がったものから小さな網の上に置いていく。こうすると余分な油は受け皿に溜まっていく。ソースは『テンツユ』とかいう干し昆布や干し鰹の汁にショウユと砂糖を入れたものだ。異世界の料理は奥が深い。
美味しそうに食べてくれる碧海さんの顔に頬が緩む。可愛い。碧海さんが可愛すぎる。
殻を剥いた生シャコとエビも揚げる。新鮮だからサッとでいい。穴シャコなら殻ごとでも美味かったんだろうが、残念ながら殻の硬い普通のシャコだ。
「ンンンンンン!ぅんまああああい!ジュワッとサクッと!酒が進むうー!」
「衣がサクサクで美味しいね。リアムくんのご飯はほんとに美味しいなあ」
妹とティティスは涎をたらしながら涙目でシャコを剥いている。なんだ、もう終わりそうじゃねえか。がんばれがんばれ。お前らの分もすぐ食えるように用意してやる。だがもう覗き見はするな。次はない。
サイラスが「終わったでござるよおおおおお」と叫びながら自分でコメを椀によそって座っ……ってない。何故か俺の横で立ってる。
「魔王殿はともかく、邪神様と同じテーブルに座るとかそれなんの罰ゲー…じゃなくて恐れ多いでござるよ…」
「ああ…」
なんだかちょっと可哀想になったから、生シャコを適当にぶつ切りにしたものと生ウニの『サシミ』をコメに乗せてやった。
「むふうー!!至福でござるうううううう!!」
サイラスが妹とティティス、そして何故か碧海さんに睨まれてた。生きろ…。
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