【7人の魔王2】してもない婚約を破棄された聖女の兄なのだが、なんだかんだで魔王の嫁になっていた。

とうや

文字の大きさ
上 下
45 / 87

【メンドゥサ王国軍官僚視点】「ハルフォード男爵領は独立を宣言した」

しおりを挟む


国境の結界が消滅した。

我がメンドゥサ王国は南東に魔王領である海、西に魔物の棲む魔の森、北は隣国というのも烏滸がましい野蛮な騎馬民族の集合国家がある。先日、聖女であったシャーロット・ハルフォード男爵令嬢が王太子殿下に不敬を働いて国外追放。新しく聖女の地位に就いたエレオノーラ・スタンスフィールド公爵令嬢はで未だ結界装置に魔力を込められずにいた。

結果、建国以来300年続いた王国の結界は消滅した。

現在、我が軍は蛮族オーブルと交戦。西の森はまだ静かだが、モンスタースタンピードの兆候がある。西方地区に冒険者を集め準備を進めているのだが…。


「断る」


元SSSランク冒険者『剛拳』のブライアンはこちらも見ずに拒絶した。


「これは王命であるぞブライアン殿!」

「俺ァ先代陛下から「何もしなくていいからこの国に住んでくれ」って言われたんだよ?それがさあ、ああん?息子と娘を王宮に取り上げて生贄にした挙句に魔王と通じていただのなんだので追放処分だったから良かっただのなんだの……そんで次は俺に「戦え」?ふざけんなよテメエら、何度うちの嫁を泣かすんだよブッ殺すぞ!?」


鼓膜を、全身を震わす怒気が辺りを包む。


「しかも嫁にも《聖女》の力があるかもしれないから寄越せ?お前ら大概にしとけよ!?常日頃から「お前たち平民とは魔力量が違う」って言ってるお貴族様にやらせろよ!?引退した聖女も駆り出せ!出来なきゃそのかっるい頭下げて他国から借りて来い!冒険者ギルドから魔術師掻き集めろ!!どいつもこいつも使えねえな!!」


ブライアンの声に見物人たちが「そうだそうだ!」「何の為に俺らが税金で貴族おめえら養ってると思ってんだ!」「あの子たちを返しておくれ!」と騒ぎ始めた。……チッ、《煽動》スキルか!?

私の合図で兵士たちがブライアンを取り囲む。と陛下からの許可もある。20年以上ブランクのある丸腰の冒険者など、現役兵士の敵にもならん。

抜刀した兵士たちに、見物人たちが悲鳴をあげる。


「やれ」


私の合図で兵士たちが一斉に襲い掛かり……


「どっせい!!」

「………は?」


ブライアンの掛け声とともに数人が宙を舞った。


「鍛え方がなってねえなぁ?うちの息子ならカウンター叩き込んでくるぞ?もっと踏ん張れよオラァ!!」


わ…私は夢でも見ているのか!?殴られただけで人間が吹っ飛んでいくはずないだろう!?嘘だ嘘だ夢だ。そうだ夢なんだ…そんな……

奴の拳がやけにゆっくりと眼前に迫る。


「ヒッ…!!」






「そこまでだ、ブライアン」






ピタリと凶器こぶしが止まった。


「………チッ…!」

「ヒ…ヒィ……!!」


黒衣に身を包み、仮面で顔を隠した男が馬車から降りてきた。ああ…この異様な風体の『貴族』は……


「ハルフォード男爵…!?」

「テメエ何しに帰ってきたよ!?フローラ保護したら屋敷から出るなっつっただろう!?」

マリアフローリアがお前が心配だと泣くのでな?ああ、こんなゴリラの心配なぞ無駄中の無駄だというのに…」

「なにおう!?」

「ああ、そこの君。このゴリラに殺される前に早くこのから立ち去りなさい。です」

「なに、を…!?」


私は軍中尉の子爵だぞ!?男爵如きになぜそのような……………は?ハ…ハルフォード、『国』?

ブライアンがピュゥと口笛を吹いた。






「本日正午を以って我がハルフォード男爵領は独立を宣言した。からく退去しなさい、メンドゥサ国軍第二中隊コーディー・プリッドモア中尉」










しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

婚約破棄されたから伝説の血が騒いでざまぁしてやった令息

ミクリ21 (新)
BL
婚約破棄されたら伝説の血が騒いだ話。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

聖女の兄で、すみません! その後の話

たっぷりチョコ
BL
『聖女の兄で、すみません!』の番外編になります。

処理中です...