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【公爵令嬢視点】「許さないわ、ヒロイン」

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許さないわ、ヒロイン。ああ、名前はなんて言ったかしら。なんて覚えてない。



わたくしはエレオノーラ。筆頭公爵家スタンスフィールドの娘エレオノーラ。わたくしには生まれた時からここではない世界で生きた記憶があった。

わたくしの世話をする乳母やメイドたちの会話から、この国はメンドゥサ王国だと知れた。そしてわたくしは筆頭公爵家スタンスフィールドの娘。名をエレオノーラ。

わたくしは震えた。そして漏らした。泣き喚くわたくしのオムツを乳母が替えてくれる。


わたくしは『悪役令嬢』だ…!!


死ぬ直前までやってたスマホゲーム『海のうたが聞こえる』に出てくる悪役令嬢。どのルートでもことごとく攻略こいじを邪魔してくる極悪女だ。何度エレオノーラのせいで攻略対象の好感度が下がった事か!!

わたくしは泣いた。泣いて泣いて泣き喚き、気付いたのは『エレオノーラの性格が歪む原因は何であろうと誰であろうと排除する』というものだった。異世界で悪役令嬢に生まれた女子が必ず通るルートね。

大丈夫!だってわたくしはこんなに美しくて賢いんだもの!

わたくしは排除した。

仕方ないわ。。早いか遅いかの違いじゃない。意地悪なメイドも、将来わたくしに性的虐待をしてくる家庭教師も排除した。わたくしの周りには『死』が充満した。

仕方ないじゃない。生き延びるためだもの。

わたくしと婚約したくせに、数年後に『ヒロイン』に出会ってわたくしを断罪する第一王子を『儀式』で荒れ狂う海に突き落とした。

助けようとしたヒロインの兄共々荒波に飲まれていく。ヒロインが泣き喚く。そうよ、泣くのは貴女。私じゃないわ。

王子とシークレット攻略対象は何故か助かってしまったけれど。でも良いわ。だってリアルのリアムたんは息を呑むほどの美少年だったから。わたくしの最推しは子供の頃から最高だった。どうにかして彼をわたくしのものにできないかしら?

ゲームの通り、ヒロインとリアムたんは男爵家の養子養女となって王都にやってきた。

けれどおかしいわ。ヒロインとリアムたんは学園の生徒にはならなかった。ヒロインは神殿にこもりきり。リアムたんは王子の護衛だけれど、授業中はどこかに行っているようだった。やだ…これじゃあ好感度が上がらないじゃない。

ゲームをやり込んでいた私は、各攻略対象の攻略方法も知っていた。当然、リアムたんの攻略方法も。ヒロインのサポートキャラのような位置付けのリアムたんの好感度は、何度も何度も用事もないのに話しかける事だ。100回くらいでデレ始める。1000回でいつものセリフ以外に。10000回で駆け落ちする。攻略するのに非常に根気のいるキャラだけど、彼と話すのはスタミナを消費しない。ある意味無課金に優しい攻略対象だった。

なのに話もできない。

王子から王太子になった婚約者や、他の側近候補こうりゃくたいしょうとランチをとる時に話しかけると、何故だかリアムたん以外の全員がムッとする。リアムたんは食事もせずに立っているというのに。訳がわからないわ。

そして婚約破棄のあの日。

わたくしはヒロインをつもりだった。

ヒロインが大人しく修道院に行けば。リアムたんを差し出せば。だって学園にも通わないヒロインは無害だったんですもの。


それなのに……


ああ、それなのに、ヒロインはよりにもよって、リアムたんに守られるように駆け寄ったのだ。






許さないわ。生贄になったって許さない。ああ、無害だろうと早く排除するべきだったわ。





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