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「ジャック君と豆の木みたいだあ!」
しおりを挟む陽はすでに高い。懐中時計の針は正午近くを指していた。
「さあ!じゃあいい感じになってきたからアオイと嫁の仮新居建てちゃおうか~!」
シオンとか呼ばれる魔王が陽気に言った。うっわ、酒臭え!どんだけ飲んだんだよっていうか家…建てるの?嫁って誰!?新居!?
「あっ、いずれ私の家になるんだから可愛く建ててください」
妹オオオオオオ!!やめろ魔王に馴れ馴れしい口をきくな潰されるぞ!?
「設計は君のお兄さんだから頑張ってもらってね~」
ファッ!?
「え?設計…!?えっ???」
紫瞳の魔王はにっこり笑ってポケットから何かを取り出した。それがアオイさんに渡って、俺に手渡される。
「僕のダーリンからのプレゼントだよ~?」
「……豆?」
そう、どう見ても豆だった。瑞々しい緑色なのに石みたいに固い。
「中々に魔力食うんだけど~、今の彼ならいけるいける」
何が!?
「さあ一気!一気!一気!一気!……」
下町の大衆酒場かよ!?
説明がまったく足りない紫瞳魔王。アオイさんが笑って豆ごと俺の手を握る。……あれ?アオイさんスキンシップさっきから多くない?
「リアムくん、それはね、古代種の『家の種』なんだよ」
「家の…たね?」
「うん。それをね、家を建てたい場所に埋めて。あ、でこぼこしてるとか木があるとかあまり考えなくていいよ。勝手に整地されるから」
「あ…はい……」
うーん、家だから砂浜はダメだ。だったらやっぱりアオイさんの家の近くの海から上がったところ。あんまり近すぎてもアレだし……
大体決まったから、そのへんの木の枝で地面を掘る。種を埋めて……
「…ファッ?」
しゃがんだ俺の後ろから、アオイさんが覆い被さるみたいにしてた。ちょ…待って!近い近い近い!!息が!良い匂いがする……って、待って俺昨日一昨日風呂入ってない近寄らないでアオイさん!!
「リアムくん、イメージして」
「ひゃっ…は…はいっ……」
「どんな家に住みたい?大きさは?誰と済むの?部屋はいくつ?間取りは?イメージして、目を閉じて」
「はい…」
えー…と……集中!集中しろ俺。部屋はとりあえず4つくらいで台所と食堂があって、各部屋に湯船を置く場所と……ああ、窓もたくさん欲しいな。王都と違ってここは空気がいい。シャルとロリコン殿下と俺と……アオイさんは?アオイさんは住んでくれるだろうか。たまになら泊まってくれるかもしれない。そうなると嬉し………
パキッ…
「え…?」
メキョメキョバキバキバキギギギギギ……
「はあ!?」
ちょっと間抜けな音と共に、ブワッと体が上昇する。落ち……!!なかった。アオイさんががっちり後ろから支えてくれれた。そうか、このために俺の真後ろで覆い被さるみたいに待機してたのか。
「わあ!『ジャック君と豆の木』みたいだあ!」
妹よ、ジャック君とはどこのどちら様だ!?
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