【7人の魔王2】してもない婚約を破棄された聖女の兄なのだが、なんだかんだで魔王の嫁になっていた。

とうや

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「お前、俺の性別なんだと思って……」

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血抜きして内臓を取ったコカトリスを薄く切り分け、そのへんに生えてたキノコ(鑑定したら食用・美味って書いてた)と一緒にバナナの葉で包んで蔦で縛る。同様に、皮付きのままのバナナも包んで浅く地面に埋める。その上で焚き火をやれば完成だ。


「えっ?これだけ…?」

「そう、これだけ。あ、焚き火はもう一箇所作りましょう。食う時になったらこっちは掘り返しますから」

「晩御飯はデザート付きだ~!やったね☆」

「君たち逞しすぎるよ…」


アオイさん、俺たちが困るだろうと思ってなんとかしなきゃと焦ってたみたい。うーん、なんか申し訳ない。オウル港の住民はガキの頃から、自然災害や大規模火災があっても大体生きていけるように仕込まれる。まあ主食の穀物は欲しいけど。

サイラスがシオシオになって帰ってきた頃には、コカトリスは良い感じに蒸し焼きになってた。


「んはぁ!良い匂い!!」


ヨダレ拭け妹。大人しく待ってるアオイさんを見習いなさい。


「仔ウサギぃ、塩を持ってきたわぁ。本当にもっと美味しくなるんでしょぉねぇ?」


ソワソワすんなティティス。


「アアアアアアアアアアアアアアアアアア」


うるせえロリコン。


塩だけの味付けだが、程よく脂の乗ったコカトリスは絶品だった。脂が甘い。蒸し焼きにしたバナナもトロッとして甘みが強くなって美味い。妹はいつも通りだが、ロリコンもティティスもガツガツ食ってた。アオイさんはゆっくり食べてたけど、美味しいねって言う顔がすげえ可愛くて心臓がバクバクする。

はい、深呼吸。アオイさんは男、アオイさんは男、アオイさんは男……よし!


「ティティス……ううん、海の魔女ティティス様」


フォークを置いて妹が居住まいを正す。あー、あれ。『セイザ』ってやつか。よくああいうふうに座れるもんだ。


「なぁに?聖女ぉ?」

「私を弟子にして下さい!」


妹は砂の上に手を突いて頭を擦り付けた。そうか、これが『ドゲザ』ってやつか。


「ちょ…ひ、ひなこちゃん!?」

「あぁら?だってぇ、のよぉ?そこの仔ウサギかサイラスにでも養って貰ったらいいんじゃなぁい?」

「だってお兄ちゃんいつお嫁に行くかわからないんだもん!」


ボフォオ!


…噴いた。俺じゃなくて何故かアオイさんが。


……………は?


「さっきだってすっごい仲良さそうに森から出てきたし!!」


待て。妹、待て。なんの話をしている。


「私、自立したい!手に職付けたい!将来お兄ちゃんが産んだ子供に「おばさんはなんでここに住んでるの?」とか言われたくない!!」


産まねえよ!?どこから出てくるんだよ!?相手誰だよ!?


「ちょ…待て、シャル。お前、俺の性別なんだと思って……」

「だってお兄ちゃん、《古代種・真祖プリモジェニターラナー》の因子持ってるもん。進化次第では産めるよ?」

「……………………………は?」








え?なに、それ???









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