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「私のお兄ちゃんが、お兄ちゃんで良かった…」
しおりを挟むその辺で拾ってきた枝やら落ち葉で火を起こす。倒れてた木を適当にぶった斬って薪にする。そしてその辺で取ってきた木で串を作ってティティスに分けてもらった生魚のぶつ切りを炙る。
「お兄ちゃん……普通の受けはただの支給の剣で大木切らないから!串なんか削らないから!サバイバルに順応しすぎでしょ!?なんでお兄ちゃんはハーレム作る主人公タイプなの!?」
受けってなんだ。『はぁれむ』ってなんだ、妹よ。
「あんまりグチャグチャ言うと食わせねえぞ?」
「ああん!お兄様、シャルはお兄様の焼いたお魚が食べたいですぅ!」
いい歳した女がキラキラ聖女顔で可愛子ぶるな。似合うから恐ろしい。そしてそこで悶えてんじゃねえロリコン。
「あ、アオイさん、そっちの方焼けてるからどうぞ?ロリコン殿下も食え。んでヨダレ拭け」
クソ妹は勝手に食ってる。このやろう。
「……んー!美味しい!塩が欲しいとこだけど素材がいいからシンプルイズベストだよね!(モグモグモグモグモグモグ)」
「……っ!はぐっ……んむっ……!(モグモグモグモグ)」
「……うん…美味しいね、ウサギくん……(モグモグ)」
新鮮で美味い。毛布やら皿やら持ってきたティティスがジーッと見てるから渡した。あ、でも共食い?
「失礼な!わたくしたちと魚を同種だなんてぇ!(モグモグモグモグ)」
食ってる食ってる。不味くはなさそうだ。
食った後に強烈な眠気が襲ってきた。ああそうか、色々あって徹夜したんだっけ。見れば、妹も食いながらこっくりこっくり船を漕いでいた。
「……悪い、ちょっと寝てくる…。ほら、シャル。んなトコで寝るな」
「んんん~…お兄ちゃん……だっこ…」
「…ったくしょーがねえなぁ…ほら、来い」
「ではわたくしはサイラスを絞って参りますわぁ」
「(´;ω;`)ウッ…」
「……うん、おやすみウサギくんひなこちゃん…」
『どなどな』されていくロリコン殿下と、何か言いたげなアオイさんが見えたが限界だ。
妹を抱えて天幕に入って毛布を探し当てる。妹の両足ががっちり俺の腰のとこを捕まえて離さない。このやろう。
ベッドも何もないから、仕方なく座ったまま天幕の柱に背を預けた。
「……ねえ、お兄ちゃん…」
「ん?」
まだ起きてたか、クソ妹。
「私ねぇ…《聖女》じゃなくなっちゃった……」
「…………」
ああ…あれか。神の加護を引き千切ったってやつ。
「さっきね…焚き火にはしゃいだサイラス殿下が火傷したでしょ?あれ…私、治せなかった。《世界記録》も見れなくなってるし、ス…ステータスも……、ス、スキル……結界スキルとか…ごっそりなくなってて……」
「まあ、うーん…仕方ねえんじゃないか?お前が捨てたんだろう?」
「うん……」
カタカタと妹の体が震えていた。馬鹿だなあ、こいつ。こうなることわかってたんだろ?ホンット馬鹿。
「わ…わたし……どうなっちゃうのかな?さすがに死んじゃうとかないと思うけど……どうしよう…どうしよう、お兄ちゃん……今まで見えてたものが何にも見えないよ……!」
「お前……ホンット馬鹿なんだな」
震える体を抱きしめる。馬鹿でどうしようもないクソ妹。何でもかんでも俺に頼りゃあ解決すると思ってやがる。
「聖女じゃなくったってお前は俺の妹だし、父さんと母さんの娘だろ?ウリエラ嬢だって、お前が夜会のあの時、俺の方走って来たの見てすっごいショック受けてたぞ?ああ~…うん、ほら。結婚相手とかもお前に気持ち悪いくらい惚れてるロリコン殿下がいるじゃないか?アレで良かったら兄ちゃんが『いけめん』に仕立ててやるから……」
「うん…(ズビビッ)」
「嫁にも行けなかったら俺と暮らせばいいじゃねえか。……ん?それっていつも通りじゃねえか」
「うん……ふふっ…」
お。やっと笑ったな。
「もう寝ろ。寝不足の頭だからおかしい方向に考えちまうんだ。起きたらまた美味い飯作ってやる」
「うん……お兄ちゃん…」
「うん?」
「私のお兄ちゃんが、お兄ちゃんで良かった…」
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