【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

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偽神編

閑話・「     」

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(ティグレ視点)


「ねえ?悪い取引じゃないでしょう?」


ねっとりと。張り付くような甘い声で化け物がリオに囁く。


「…………」


リオは否、と言わない。言ってくれない。……まさか。まさか、まさか………駄目だ、リオ。腕、なんて……駄目だ!リ……


「いいじゃない?ねえ?ねえ?ねえ!?ねえ!!返事しなさいよッ!!!」

「……ぐっ、ぁあ!ごふっ…」


化け物が俺を摘む指の力を強くする。堪らず吐いた胃液は赤い色をしていた。内臓のどこかを傷付けたのかもしれない。


「わかった。だから、ティグレを放せ」

「だ…だめ、だ…!!リオ…!」

「あぁら?物分かりの良いこと。じゃあ……」

「ティグレが先だ。放せ。それから『誓約』をしてもらおう」

「………ふうん?馬鹿じゃあないのね?残念」


化け物が唇の端を吊り上げる。


「『誓約』しろ。誓え。最初にして最後の天津神たる天道てんどうと、国津神の頂点たる灯依ひよりに誓え。偽神おまえの祖に誓え」

「……………良いわよ?誓うわ。ワタシ、【愛と復讐の戯曲】は【リオ・プレンダーガスト】の【腕】を【一本貰い受ける】。【代償】として【この『餌』の解放】、その後【二度とこの世界には干渉しない】」

「【喰ったら3つ数える間に出ていけ】」

「……(チッ)、仕方ないわね…誓うわ」

「駄目…だ、リオ……。だって、こ…この、化け物は ーーー 笑っている。…化け物、との………約束なんて…」

「黙りなさいッ」

「あぐっ…!」

「ティグレ!」


ゴキリ、と音が胸からした。胃から迫り上がった血で窒息しないように下を向いて吐き出す。


意識が朦朧とする中、突然に腹と背中を潰す圧迫が消えて投げ出される。


「リ……オ…」


駄目だ。駄目だ、リオ…!言っていたじゃない。覚えてるんだ、俺。「偽神に齧られたら魂魄ごと喰われるから再生しない」って……治癒魔法でも治らないって、言ってたじゃないか!そんなの駄目だ。


「ちっと待ってろティグレ。……オラ、さっさとやれよクソビッチ」

「虫ケラの癖に生意気ね!うんっと痛くしてあげるんだから」


化け物がリオの肩口に齧り付く。ごりっと嫌な音がしてリオが微かに眉を顰めた。




ゴキ…ゴキボキ!ゴリッ……









ブチン!









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