【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

文字の大きさ
上 下
150 / 160
偽神編

閑話・なにやってんだろ… 1

しおりを挟む


(ティグレ視点)


何が起こったかわからなかった。

突然に始まったアンティエーヌ様と第一王子殿下の諍いと、出生の暴露。あまりのことに側近候補たちはドン引きして、恋人だったノーフォーク男爵令嬢も静かに逃げて行こうとしていた。

その時だった。

しんと静まり返ったダンスホールで「残念だ」という女性の声が静かに響いて天井が抜けた。瓦礫やシャンデリアの下敷きになった者も多く、辺りは騒然となった。アンティエーヌ様は頭から血を流して倒れ、動ける者は出口へと殺到したがどうやら扉が開かないらしい。

血の臭いが充満する部屋の中。白い女が

恍惚と微笑んでいて、青い瞳と青い唇がやけに恐ろしかった。アンティエーヌ様の傷口をハンカチで押さえて抱きかかえ、ゆっくり後退する。怖い。どうしたらいい?どこに逃げればいい?カチカチと歯の根が合わない。

そして耳を劈く叫び声と ーーー リオの、声。

怖い。怖いよ、リオ…!リオの声を聞いただけで泣きそうになる。

大丈夫、リオならきっと。

そう思うのと同時に、俺はリオが必死で戦っているのに何をしているんだという焦りもあった。避難……そうだ、このダンスホールの人たちを避難させて…。リオの役に立たなくちゃ。俺は何もできない。リオやプレンダーガストの騎士たちのように戦うこともできない。アンティエーヌ様のように怪我人を癒したりもできない。せめて。せめてリオが戦いやすいように環境を整えなくては。

アンティエーヌ様の傷は幸い浅いものだったようで、すぐに意識を取り戻した。自身を癒したアンティエーヌ様は


「わたくしは大丈夫です」


と頷いてくださった。


「動ける方は動きにくい服装の方をサポートしながらできるだけ端に寄ってください!怪我をした方はアンティエーヌ様の近くに!力がある男性は下敷きになった方を……」


………エルマー!?


ぼんやりと。エルマーは宙を仰いでいた。自分より身分の低い者たちを虐げて、今は逆に虐げられている青年。リオに迷惑かけて、騒ぎを起こして、全然反省してない最悪な奴。

そのエルマーを、真っ赤な爪をした青白い巨大な手が、摘み上げた。



「エルマー!!」







しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?

まりぃべる
ファンタジー
「お前とは家の為に仕方なく結婚するが、俺にとったら不本意だ。俺には好きな人がいる。」と結婚式で言われた。そして公の場以外では好きにしていいと言われたはずなのだけれど、いつの間にか、大切にされるお話。 ☆現実でも似たような名前、言葉、単語、意味合いなどがありますが、作者の世界観ですので全く関係ありません。 ☆緩い世界観です。そのように見ていただけると幸いです。 ☆まだなかなか上手く表現が出来ず、成長出来なくて稚拙な文章ではあるとは思いますが、広い心で読んでいただけると幸いです。 ☆ざまぁ(?)は無いです。作者の世界観です。暇つぶしにでも読んでもらえると嬉しいです。 ☆全23話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 ☆感想ありがとうございます。ゆっくりですが、返信させていただきます。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

処理中です...