【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

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偽神編

閑話・思い返すと…

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(ウォーレン視点)


「……父上…ッ!!」

「ウォーレン…っ!た、たす、け………!!」


絶叫が響き渡る。父だった。確かに、俺の父親だった。助けを求めて伸ばされた指を、手を。全身を偽神と呼ばれる化け物が噛み砕いていく。

父とは良い思い出はない。それどころか最悪の印象しかない。けれど、こんなふうに死んでくれとまでは……!


クソでクズの父親だった。

小さな酒場の歌姫だった母を脅すように手籠めにし、妊娠しても出産しても支援はなかったそうだ。母は幼い俺を抱えて歌うたいの仕事を続けられるはずもなく娼婦になった。母に客を斡旋してくれた酒場の女将ができた人間で、暴力を振るったりしない、金払いのいい客ばかりを相手にしていたようだ。どうりで子供の頃は殴る蹴るされたこともなく、から高級菓子や洋服をもらっていた。

俺が10歳になった頃だったか。貴族の間で流行り病が蔓延して、父親が当主のヘイウッド侯爵家の次男三男が死んだ。がいなくなったヘイウッド家は仕方なく庶子の俺を引き取った。母と共に離れとは名ばかりの物置小屋に押し込められ、食事は1日1回、黒いパンが投げ入れられた。父は母を愛人ではなく娼婦として扱い、母を犯した次の日だけは、母にだけまともな食事を与えた。母はそれを俺に食べさせて、自分は黒パンと水で腹を満たし、半年経たずに儚くなった。

俺の領主補佐としての教育が始まってからが更なる地獄だった。侯爵夫人や嫡男から殴る蹴るの暴力は当たり前、家庭教師からは「こんなことも知らないのか」と怒鳴られ、使用人たちには陰湿に虐められてまともな食事が出てきたためしがない。嫡男の婚約者からは「血が繋がっているならお前の子供でも問題ないわ」などと襲われそうになった。

正直狂っている。

16歳。兵士募集のチラシを見て、何もかも捨てて転がり込んだ。このままでは死ぬまで飼い殺される。生かさぬように、死なさぬように、踏み躙られながら。軍属になれば侯爵家といえど勝手に手出しはできなくなる。兵士は国の、国王陛下の所有物なのだから。そうして下士官まで昇進し、王兄殿下直属の騎士にまで上り詰め。捨て駒としてつかわれ………今はリオ様の専属騎士としてここに居る。そういえばあの男、俺が『龍殺しドラゴンスレイヤー』になったら手のひら返しまくって「お前はヘイウッド家の誇りだ、帰ってきて長男を護衛しろ」とか手紙を何度も送って来やがったか。


…………ああ、まともな思い出なんかなかったな。殺したいほど恨んではいないけれど、死んでくれて嬉しいと思ってしまった。くたばれクソ親父。偽神、グッジョブ。

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