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偽神編
閑話・第一王子の3つの間違い 3
しおりを挟む(名も無き護衛騎士視点)
「殿下は馬鹿なのですね?」
落ち着いた、まさに慈愛の聖女と言うべき優しげな声が響いた。声の主はアンティエーヌ・プリッドモア公爵令嬢。半年前まで大聖女だったお方だ。第一王子の側近候補たちが驚きのあまり「なっ…!?」とか「不敬だぞ!」などと騒ぎ始めたが、俺を含めこの光景を見ている者たちは同意しかない。
「アンティエーヌ!貴様、殿下に向かって……!」
「お黙りなさい、シャーロック。お前はいつからこのプリッドモア公爵家の娘であるわたくしより偉くなったのかしら?わたくしと殿下との話に割って入るなど……教育はどうなっていらっしゃるの?グローヴス?王の御前で許可なく剣を抜けば罰します。躾のなってない犬だこと」
……ヒェッ…!?
優しげな声で辛辣な言葉。脳が混乱する…!これは……本当にあのお優しいアンティエーヌ様なのか!?公爵家の娘としては正しい。いや、むしろ優しいだろう。だが大聖女アンティエーヌ様といえば慈愛の塊。そして優しすぎるが故に甘い判断を下すお方だった。それが………
「は…発言の、許可を……」
「許可致しません。駄犬は黙って伏せていなさい」
「………っ!?」
微笑む顔とは裏腹に、アンティエーヌ様のその青い瞳は冷め切っている。側近候補のハクサム令息の言葉をにべもなく切って捨て、笑顔のまま第一王子をひたと見据えた。
「第一王子殿下」
「…っな、なんだっ!」
「殿下は3つの間違いを犯しております」
「ま、ちがい……だと…!?」
「ええ、間違えていらっしゃいます。まず第一に、わたくしはすでに殿下の婚約者ではありません」
「………………………は……?」
「えっ」
「えっ?」
「えっ…?」
「え???」
え…?
えええええ!?
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