【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

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偽神編

タイミング悪ッ

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ティグレにキスされた。

多分、キスだと思う。だって偶然当たったにしてはしっかりホールドされてたし、はむはむされて舌で舌とか歯とか舐められた。

昨日に引き続き茫然自失で帰宅した俺を見て、リサはジュール・リュエール・デ・ゼトワールが滞在している屋敷に殴り込みに行こうとしたらしい。そこにティグレもいるからな。結局は直後にラドに呼び出され、どこぞの領地のダンジョンがとかで強制徴兵された。

タイミング悪ッ

学園に行けりゃあティグレにキスの意味を聞けるのに。……いやいや、聞けるのか、俺?無理じゃね!?だってキスだぞ!?子供の頃にやってたおでこにチュッとか、そういうんじゃなくって、ガッツリディープなベロチューだぞ!?なんだってあんな……あんな…………

口元を押さえる。頬が熱い。

待て。待て待て、俺?リオくん的にはファーストキスだが、前世ではまあそれなりにあっただろ?お付き合いした彼女とか(1ヶ月でこっ酷く振られた)、西ノ宮とか(お互いに泥酔していて後から聞いた)、顔も覚えてない同僚とか(飲み会で王様ゲームでやった時)。……ろくな思い出ねえな、俺。

ラドに「サポートとしてプリッドモア嬢を呼ぼうか」とか言われたが、それは丁重にお断りした。ラドは少し笑って「残念」とか言って引き下がってくれたけど。だってアンティエーヌはもう聖女じゃない。還俗した、高位貴族のお嬢様だ。それに討伐とはいえ、婚約もしてない男女が一緒に旅とか。

ティグレの顔が浮かぶ。

うん、無理だ。配慮が足りなかった。まだまだ前世の感覚を引き摺ってたんだな、俺は。友達だって本人たちは言っても、周囲がどう見るのか。全く考えていなかった。『勇者』と『聖女』という肩書きがあれば辛うじて問題がない距離だった。けれどアンティエーヌは還俗した。それなりの身分の男が『公爵家の姫』のエスコートをして、共にいる事を許すというのは『婚姻内定です』と言っているようなもんだろう。嵌められかけたんだ。ラドに。プリッドモア公爵に。糞が!!

あー!!もう!俺の馬鹿!!!

苛立ちを、溢れ出しスタンピードの魔物の群れにぶつける。地元の兵たちはドン引きだ。ついでに神殿から派遣された男性回復術師も「ひぇえ…」とかっさけねぇ声を出していた。

ラドの目的は俺をモンサロ王国に繋ぎ止める事。プリッドモア公爵は可愛い娘の希望を叶える事。オトナ、キタナイ!!……ま、俺の中身ももう四十越えだけどさ?


斬って。撃って。斬って。斬って撃って蹴り潰す。殺して殺して殺したけれど。答えはまだ見つからない。

溢れ出しスタンピードが収束して。とりあえず一度帰るか、といったところでまた救援要請がかかる。そして、その繰り返し。




結局俺は冬が終わるまでの3ヶ月間、地方を飛び回って王都に帰れなかった。………ウッソだろォ!?





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