【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

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偽神編

厄介ごとは忘れた頃にやってくる

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!もうやめてください!!」


疫病学科の授業中、いきなり厄介ごとが走り込んできた。要するに、一度目の厄介ごと襲来の時と同じ状況だ。キンバリー講師涙目。同じ状況なのだが違うのは、ここにアンティエーヌがいることと、ティグレがにいること。んー…んんんー?ティグレ、痩せた?心なしか顔色も悪いし。


「アンティエーヌ、貴様!を虐めたそうだな!!」

「「…………は?」」


続く第一王子の怒声に、思わずアンティエーヌとハモってしまった。誰が?誰を???


「………えっと?どなた?」

「えっ!?……ひ…ひどい!!あたしが男爵令嬢だからって馬鹿にして…!」

「あら、男爵家のお嬢さんなのですね。初めまして。わたくしはアンティエーヌ・プリッドモアと申します。お名前を伺っても?」

「知ってるでしょう!しらを切る気なの!?」

「え……ええと、ごめんなさい。どこかでお会いいたしました?わたくし、最近還俗したばかりで物覚えが悪くて……」

「ひどいわ!!」


うわーん、と明らかに泣き真似を始めるヒロインクソビッチ。周りの男たちは本気で騙されているらしい。しっかし……強ぇなァ、アンティエーヌ。さすが純粋培養の天然聖女。

アンティエーヌは『公爵家』の自分が名乗ったのに『男爵家』のクソビッチが名乗らないのは、もしかして自分が不勉強なのかとオロオロし始めた。


「あ…あの、男爵令嬢さん?ごめんなさい、わたくし、本当に覚えていなくて……でも、わたくしと貴女は…のかしら?」

「なっ…!?」


うん、実はそれ、俺も思った。クソビッチの立場で言うと、アンティエーヌを呼ぶのは『プリッドモア公爵令嬢』が妥当だろう。多分だが、第一王子が『アンティエーヌ』と呼ぶのでそれに倣ったのだろうが、それならばせめて『アンティエーヌ様』とかさあ?


「それにその……虐め?ましたの?わたくし?いつのまに?!」

「ひどい!!さっきあたしのブローチを引き千切って「平民には似合わない」と踏んで壊しましたよね!!」

「えっ……え?ええ?いつですの、それは?」

「さっきです!!」

「え……え、と?わ、わたくしが、2人いるのでしょうか?」


ブフォ!と堪え切れずに噴き出しちまった。天然最強すぎんだろ!


「リオ!これは器物破損だ!笑い事ではないんだぞ!!」


第一王子が恫喝する。爆笑したかったがティグレの冷たい視線を見てなんとかクールダウン。よ…よーし、落ち着け、俺。


「何刻前だ、それ?」

「え……だ、だから、さっき…」

「アンティエーヌはずっと俺と一緒にいたが?」

「なっ…!?」

「なんて破廉恥な!!」

「リオ!アンティエーヌは私の婚約者だぞ!?」


第一王子とハーレム要員たちが口々に罵る。痛くも痒くもねえ……が、ティグレの目がさらに冷え切ったのがちょっと…いや、かなり辛い。


「はー?婚約者、ねえ?自分は女侍らせといて?あとそこの側近候補どもともやってんだろ?性欲処理係エルマーもいるし。……あ、あと余談だが俺を『リオ』とファーストネームで呼ばないでください。許可してませんし、控えめに虫唾が走ります」

「なっ…!」

「ひどぉい!ぁ!!なんでそんなこと言うのぉ!?」


脳みそ入ってんのかぁ、このクソビッチ!?



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