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偽神編
閑話・ならば戦争だ
しおりを挟む(ジュール・リュエール・デ・ゼトワール視点)
少々やり過ぎたような気がした。勇者であり、モンサロ王国の侯爵であるリオ・プレンダーガストは、妹にそっくりの顔でキリキリと目を吊り上げ私を睨めつけた。
なんて愛らしい。
緩む頬を必死で引き締める。ああ、なんて愛らしい。リオは妹によく似ている。揶揄い甲斐があって、虐め甲斐がある。ああ、でも早めに事情を話さないと恨まれてしまいそうだ。
ヘスティアが神の御許に旅立って30年余り。
あの時、私は、私たちはヘスティアの死を知らなかった。
ヘスティアの存在すら薄れていた。忘れていたんじゃない。意図的に意識を向けないようにされていた。
そのことに気付いたのは3年前。そう、100年振りにモンサロ王国に勇者として選ばれた者がいる。リオ・プレンダーガストという少年が勇者になったという知らせだった。
プレンダーガスト。
あの憎っくき男。妹の心を奪い、攫っていった男。そして、件の勇者のその容姿はヘスティアによく似ているという。
ああ……ああ、ああ…………私は。私たちは、何故、ヘスティアを。
私は何故ヘスティアを、最愛の妹を忘れていた…?
誰より愛おしい妹。苛烈で。正義感が強くて。天使のように愛らしくて、天女のように美しい妹。それを奪ったのはだれか。
一度目はあのプレンダーガストの小倅が。
二度目は流行り病が。
そして三度目。記憶を、存在を奪われた。
創神の末裔であるリュエール・デ・ゼトワール。その我らを謀ったのは誰か。悪魔か、魔王か、それとも………
外なる神か。
激しい怒りに目眩に似た感覚を覚える。
ああ、そうか。その存在は、私たちに、リュエール・デ・ゼトワールに喧嘩を売った。取るに足らないと侮った。
良いだろう。ならば戦争だ。
殲滅してやる。神をも恐れぬ痴れ者めが。知らずに口の端を吊り上げた。
我らを操り、謀り、侮った痴れ者め。灰さえ残さず滅してくれよう。
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